おぼえがき　：　減数分裂

　減数分裂は、ふたつの側面を持ち合わせる現象だ。
　ひとつは、生殖細胞のDNAを修復する現象である。もうひとつは、健常で配偶子を多様な組み合わせをもたせて生み出すことで、進化に貢献している現象でもある。

減数分裂は進化に貢献する現象である。

　では、どのようにして進化に貢献しているのだろうか。それは、減数分裂の大トリとも言える現象のひとつ、「組換え, meiotic recombination」である。これは、父方のDNAの一部と母方のDNAの一部を交換する現象で、これによって新たな遺伝子パターンがうまれる。その結果、新たな特徴—たとえば、寒い地域でも生きられるような"寒さ耐性"とかね—が子どもにあらわれる。　

　ああ、なんて素晴らしい現象だろうか、「組換え」よ。あなたのおかげで私たちは絶えず進化しつづけられるのだ。おっと、尊敬があふれた、しまった、本題を逸らしてしまった。そうそう、今知りたいのは、

減数分裂が"生殖細胞のDNAを修復する現象"とはどういうことだろうか。

　振り返って考えてみると、組換えは脳筋みたいな現象だ。なにしろ、新たな遺伝パターンをつくるために父と母のDNAを物理的に交換してしまうのだから。そんなダイナミックな組換えという現象は、父あるいは母どちらか一方の二本鎖DNAが切断されることから始まる。この切断されたDNAを修復する過程で、父と母のDNAの一部が入れ替わるのだ。もう少し具体的にいうと、父方のDNAが切断された場合、切断された領域は母方のDNA鎖をお手本として修復される。すると、切断された領域は母方のDNA、それ以外は父方のDNAになる。あら不思議！DNAを修復する過程で遺伝子が入れ替わってしまったのだ！