技能者の存在価値はここにある!その1シェルデザイン!#009

最近、耳あな型補聴器をクライアントに提案していますか?
全クライアントの50%でしょうか。それとも世界市場のように20%ほどでしょうか。

コロナ禍が来て、みんなマスクを使うようになり、メガネとマスクと耳掛け型補聴器を日中ずっと使うなんて、耳が千切れてしまいそう!ということで、耳あな型補聴器の需要が急速に高まっています。

技能者がいない量販店では、今もRIC補聴器ばかりを提案するか、シェルクオリティが不十分な耳あな型補聴器で再作・再再作、もしくは返品などになっているようです。

シェル作りにおいて耳を観察し、耳型を採取し、メーカーに制作指示を行う。この役割を担うのは補聴器相談医でも言語聴覚士でもなく、認定補聴器技能者です。

若い技能者は安全に耳型が取れる技量が身に付いたら、どんどん提案して耳型を取って、先輩やメーカーと相談して、分からないことは教えてもらいながら再作も再再作もやってみて、経験を積んでレベルアップしていけばいいじゃん、と思うのですが最近の若者はそういうわけに行かないようです。

若い技能者によくよく話を聞いてみたら「世界的にもRICばかり売れているし、RICの方が性能が高い」と勘違いしている様子でした。うーん、大きな誤解があるようで、、、もしRICだけで事足りるなら、技能はあまり要らなくなってしまうんですよね。

たしかに高性能な最新式のBTEやRICには、IICやCICには無いいろんなオプションが付いています。ヒアラブル端末としての進化を志向するメーカーも出てきていますし、シングルマイクの小型耳あな型補聴器には指向性機能がありません。

しかしIICサイズの耳あな型なら、耳介集音効果や両耳間音圧差、両耳間時間差などがRICより正確に働きます。これらは聴力や状況によりますがRICのオプション機能を超えるメリットになりえます。

またITCサイズの耳あな型なら、当然のことながら指向性機能はありますし、すでに一部メーカーのITCはRICと同等のオプション機能がありますから、マスクの邪魔にならないというのは、大きなメリットです。

補聴器の形状については、補聴器の機能や市場の影響で10年20年のスパンで流行り廃りがあります。現在はコロナ禍でマスクが当たり前になりました。ケースバイケースとはいえ、今は高度難聴くらいまでなら耳あな型を第一提案にするでしょ!という状況だと僕は思います。

今になってもRICにイヤチップでの試聴ばかり提案しているなら、量販店の販売員と変わりません。

オーダーメイド耳せんの形状は、補聴器本体の形状が耳穴型ならシェル、従来のBTEならイヤモールド、近年登場したRICならカスタムモールドなどと呼ばれています。

耳あな型やRIC、BTE、それぞれのメリット・デメリットは置いておくとしても、中等度以上の難聴にはオーダーメイド耳せんが必要です。オーダーメイドな部分をキッチリ作れる技能者は10年後も確実に必要とされます。

何より、今のコロナ禍で、私たちはクライアントから良い耳あな型補聴器が求められています。

不適切な耳せんを長年使っていたクライアントに、オーダーメイド補聴器を提案し、本当に良いシェルが作れると「今までの補聴器は何だったんだろう?」「まったく別物。本当によく聞こえる」と、やりがいある嬉しい言葉を聞くことが出来ます。

認定補聴器技能者の本分は、技術を駆使してより良い聞こえをクライアントに届けることです。今回はオーダーメイド耳あな型補聴器のシェルについて、基本のキから一緒に学んでいきましょう。

失敗する注文書&耳型の例

さて問題です。シェル作りに失敗した発注書と耳型をご紹介します。注文したのはツインマイクのITC耳あな型補聴器(左耳のみ)です。

これをメーカーに送ると、おそらくメーカーのシェル制作者(シェルデザイナー、もしくはモデリング担当ともいう)は、どうにか形にして送ってくると思いますが、シェルクオリティが高いものにはなりません。

色々と間違っているのですが、さて、いくつ間違いを見つけられますか?

オーダーメイド補聴器発注書【gn resound】-1-3 (1)

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※この事例、気骨導差があり、補聴器販売店協会の禁忌八項目に該当します。病院受診済みで紹介状をいただき、鼓膜より手前に異常なしということでご了解ください。

意味が分かっていないと発注書は書けない

さあ、いくつ見つけられましたか?答え合わせをしていきましょう。

間違っている部分と合わせて、その間違いがどんな失敗シェルにつながるかも解説していきます。

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