REM初学者向けの実践的な基礎知識#021
こんにちは補聴器専門家の大塚祥仁です。
読者の皆さんのご感想を聞くと、ハイレベルなご要望と基礎知識のご要望、両方あるようです。
今後の補聴器マガジンでは、中川さんが最新理論と最先端事例を担当、僕が簡単な基礎知識と基本的な事例を担当という風に書いていきたいと思っています。
(中川さんの話が難しくてついていけない人たち!僕は味方だよ!!)
さて今回から、皆さんお待ちかねのREMについて書かせていただきます。
REMと一言でまとめてしまうのは簡単ですが、REMの中にも色々あります。
そして補聴器店もしくは病院や医院がREM機器を導入したとしても、最初は誰でも初心者です。
弊社でREM機器を導入したのは2015年ですが、最初は僕以外、誰も触ろうとしませんでした。
実際にREMを実践しようと思うと、様々な課題が出てきます。
まずは厳密さ・正確さは少しわきに置いておいて、REMの実践につながるようなトピックをいくつかご紹介させていただきたいと思います。
ベテランがREMを覚えるには”勇気”が必要
REMを覚えようと思うと、どうしても音場閾値の測定とファンクショナルゲインによる調整が無意味・無価値であることを認め、受け入れなければいけません。
おそらく15年以上のキャリアがある方は補聴器テクノロジーの進化をご存知かと思います。
元々、ファンクショナルゲインによる調整は、アナログ補聴器の中でも特に古いリニア補聴器の時代に生み出された技術です。
利得がリニアだから、装用音場閾値を元に60~70dBSPL入力時の利得・出力が推定できるのです。
その後、アナログ補聴器のノンリニア補聴器の中に出力制限機能が開発されました。
ここでも、まだインサートイヤホンで聴力測定しているなら、ファンクショナルゲインを参考に調整しても良かったでしょう。
問題は2000年以降です。
低レベルコンプレッション回路やエキスパンション技術、ソフトノイズマネジメント機能が搭載された器種が次々と生み出されていきました。
こうなると装用音場閾値から話声程度の音圧が入力されたときの出力は推定できません。
ファンクショナルゲインは、補聴器調整の有効な手段では無くなってしまいました。
2021年現在、ファンクショナルゲインで調整していいほどに低機能な補聴器はほとんど流通していません。
で、この話ってベテランの方にとって、結構ツライと思うんですよ。
過去に身に着けた知識と技術(の一部)が無価値になることを受け入れる勇気がいるんです。
しんどいですよ。僕もしんどかったです。
大変なことなんですけど、腹を括って勇気を出して、過去の知識を(一部だけ)捨てる。
ちなみにこういう過去の経験による学びを意識的に捨てることを学習棄却とかアンラーニングなんて言ったりします。
REMが普及しない最大の原因は学習棄却が上手くできないのかなと思います。(若い人は気にしないで下さい)
でも専門家として、お客様のためには、REM機器の取り扱いを覚えて、より良い調整で、もっと安全に、もっとよく聞こえるようにして差し上げるために、勇気を持って前に進んでいるんだという事を自覚して、学習棄却を頑張っていただけいただければと思います。
※学習棄却するのは知識の極一部分です。後半で新人は知らないけどベテランは知ってる昔ながらの補聴器調整とREMの組み合わせ技をご紹介します。
REMって何者?Real Ear ”Measurement”
さてREMというのは日本語に訳すと実耳測定という意味でしかありません。実践するには、あまり意味が無い言葉です。
大切なのは、何を測っているのか?その指標が持つ意味は何なのか?その指標を何に使うべきか?ということだと思います。
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