職場の人にさよならが言えた日
無職になって約3ヶ月。
ようやく体調が戻り、問題なく外に出られるようになってきたので
職場のお世話になった方たちに会いに行くことができた。
実はわたしは早退したあの日以降、
(※詳しくはこの記事参照)
会社に行くことがないまま、人事との話し合いでとんとん拍子に退職が決まってしまい
お世話になった方への感謝の気持ちも、さよならも伝えられてないまま、
なんならデスクの荷物も席も何もかもを早退したあの日のままにして、退職してしまった。
荷物を郵送で送るよ、って話もあったけれど
わたしは職場の人のことが好きだったので
やっぱり最後に会っておきたかった。
たしかに働くなかで苦しいことはたくさんあったけれど
それ以上に楽しいことや良いことだってたくさんあったのだ。
未経験で右も左もわからずに編集者になったわたしを育ててくれて、喜びも苦しみも一緒に乗り越えてきた職場の人たち。
さよならも言わず、逃げるように退職してしまったらもう二度と会うこともないだろう。
そんな辞め方って、やっぱり悲しすぎる。
この出来事を思い出すたびに、きっと後悔する。
だから荷物は郵送ではなく、自分で取りに行きたいと伝えていた。
「体調が戻り次第、会社に荷物を取りに行きます」
…そう伝えてはいたものの、体調が戻らず
それがいつになるかは自分でも見当がつかない日々。
それに矛盾してるかもしれないけれど、
挨拶をしたい。みんなに会いたい。
という気持ちはありつつも
会社へ行ったり、会社の人と会うことは
少し怖くもあった。
前よりも体調が良くなってきたな。
いまなら荷物を取りに行ける?
…でも、どうしよう。
どんな顔で、何を話したらいいんだろう。
…
そう思っては、まだいいや、まだいいやと
先延ばしになっていた
「会社へ荷物を取りに行く」ということ。
けれど11月に入り、いよいよ体調も良くなってきて年末年始で慌ただしくなる前に、行こうと思った。
…いや、年末年始とか関係ない。
早退したあの日から、ずっとずっと心に引っかかっていたことにそろそろ向き合おうと思ったのだ。
そうしないと、自分自身が前に進めないと思ったから。
「体調戻りました!近々会社へ荷物を取りに伺ってもいいですか?」
えいっ!と勇気を出して上司に連絡する。
そのうちに返信がきて、日程が決まり
いよいよわたしは約3ヶ月ぶりに会社へ行くことになったのだった。
◇
仕事を早退して休んでいるときも、辞めてからも
わたしは何も、ずっと穏やかだったわけではない。
むしろ冷静になればなるほど、わたしの業務量や残業時間など、おかしいよね?って思うことはたくさんあって
「わたしがこうなったのは、職場の人の配慮が足りなかったせいだ。」
と思ったりもしたし、
もう職場の誰とも会いたくない。
と思うことだって、そりゃああった。
だけど時間の経過とともに、そんな気持ちも和らいでいって
季節が変わる頃にはただただ
みんな元気かなあ。とか、そんなことばかり思っていた。
業務忙しいのかな。
みんなに会いたいな。
会えば自然と言葉が出てくると思ったから
もう、どんな顔で、とか、何を話したら、なんてことは思わない。
職場の人が恋しかった。
久しぶりに会って、話しがしたかった。
会社へ行く日が近づくにつれて、わたしは楽しみになっていた。
職場の人がみんな敵だと思った、夏の終わり。
職場の人が恋しくなった、秋の終わり。
きっと、人はなにも変わっていないのに
わたしの心がそう思えるまでに、ひとつの季節が終わるくらいの時間が経っていた。
ああ。わたしはやっと元に戻ったんだな。
明るくなって、やさしい気持ちを取り戻せた自分にうれしくなった。
◇
わたしが職場へつくと、いろんな人が温かく迎えてくれて、駆け寄ってくれた。
「mimiさんだ!」
「体調はもう平気なの?」
「顔が見れてよかった」
「元気そうで安心した」
いろんな人が入れ替わり立ち替わりで来てくれて、
わたしの前に列ができ、握手会みたい!と笑ってしまった。
みんなの顔を見るなり、自然と笑顔がこぼれ、
会話が弾む。
会う人から口々に
「もう会えないかと思った」
と言われた。
「連絡しようかな、と思ったけど自分は会社の人間だから、負担かけてしまうかもしれないと思って」
そう言ってくれた人もいた。
みんな、かける言葉は違えど
それぞれにわたしを想ってくれていて
会いたいとも思ってくれていた。
あんな辞め方をしてしまったのに、わたしに会える日を待っていてくれた。
それが心の底からうれしくて
改めてわたしの居場所はちゃんとここにあったのだなあと知って、胸が温かくなった。
本当に来てよかったなあ。
列が途切れず、それぞれの人とあまりに会話が弾むものだから
荷物を整理するのにはだいぶ時間がかかったが
そのあとは送別会を開いてもらい、美味しい食事をご馳走になった。
話すことは他愛もない話ばかりで、話す内容どうこうよりも、みんなそれぞれにこの時間を楽しんでくれていることがうれしかった。
きっとわたしとは最後になるであろう、この時間を。
…
何度も何度も繰り返し通った道を、お世話になった方たちとみんなで歩いて駅まで向かった。
駅に着いたとき
「ああ、mimiさんもう来ないんだね。
明日からまたいる気がするよ。」
と上司に言われて、これで本当にお別れなんだと思うとやっぱり寂しかった。
わたしがあの職場で働くことは、もうこの先二度とない。
だけどあの職場でたくさん成長できたこと、
こんなにも愛されたことは、間違いなくわたしの人生の財産だ。
これからつらいことがあっても、つまずいても
自分の仕事の姿勢をたくさんの人が認めてくれて
こんな風に愛された、職場での日々を思い出せば
わたしはきっとまた、歩き出せる。
「本当にお世話になりました。
みなさんもお元気で。」
笑顔でそう言い、たくさんの荷物を抱えて電車に乗った。
あんなにつらくて苦しくて仕方なかった仕事。
なのに不思議だね。
いまはありがとうの気持ちでいっぱいだ。
いつか、いまよりも素敵な自分になって
胸を張って、また会えますように。
もう、後ろは振り向かない。
これからは前へ、進んでいこう。
◇
〜後日談〜
家で荷物を整理したときに、出てきた付箋に
胸がぎゅっとなった。
とってもいい職場に恵まれたなあ。
残業時間も業務量も、
本当〜〜につらかったけど!(笑)
笑い話にできるくらい、いまではいい思い出。
またいい職場に出会えるように、
頑張れわたし!!