夫婦星。#色のある風景。

…どうしたの？
あなたが 眠れないなんて、珍しいね。

ベッドに入ったら、いつの間に瞼まぶたを閉じちゃうから…
私、毎日ちょっとだけ、寂しい想いをしてたんだよ。

ねぇ、まだ寝ないのなら、今日くらいは隣に寝そべって ゆっくり空でも見ない？

北の空の高いところに、柄杓ひしゃくの形をした七つの星が分かる？
あれが、有名な北斗七星。
一晩中、あるいは一年中、地平線に完全に沈むことなく天の北極を回る周極星なの。
このことから、北斗七星は 昔から、季節や時刻を指し示すものとして重用ちょうようされてきたって話よ。

人差し指を出して。
私があなたの手を取って、星を擦なぞりながら空をナビするね。
北斗七星の柄杓の柄えの部分にあたる 三つの星から、弧こを描くように線を延ばしていくと、一際ひときわ明るくオレンジに輝く星が あるでしょ？
うしかい座のアークトゥルスよ。
年齢は約 71 億年と、太陽よりも古くからあって年老いてはいるんだけど…
全天で四番目に明るく、霞かすんだ夜空でも見つけやすい星なの。

そして、その線を さらに延ばしていくと…
ほら、青白くすがすがしい輝きの一等星が見える？
そう、それが、おとめ座のスピカ。
この、春の宵よいの頭上に輝く アルクトゥルスを夫、スピカを妻と見立てた一対いっついの星と見られ、『 春の夫婦星めおとぼし 』とも呼ばれてるんだって。
' 夫婦星 ' って言いながら、随分と離れてるなって思うよね。
でも現在、アークトゥルスが秒速 125 km の猛スピードでスピカの方に移動中だから…
およそ六万年後には、スピカのすぐそば 二度のところにやってきて並び、遠い将来、文字通り仲の良い夫婦星となって並んで輝いて見えることになるらしいわ。

長い年月を｜経て、愛を紡いでいるなんて…
すごくロマンチックだよね…

地球と宇宙の境界線…
 雲平線うんぺいせん の彼方には日が昇り、空が白みを始めると、東雲しののめ色が、青褐あおかち色の空を追いかけてくる。

少し 話し過ぎたね。
そろそろ 夜よが明けるね。

さあ、もう 寝ましょうか。

素敵な表題だったから、素敵な逸話いつわを寄せて…

#色のある風景