2020/6/12

#母親日記


オンライン授業30分前に起きた。
慌ただしくはない。顔出しはないから。

母親も起きてきた。今日の気分は憂鬱だ。

わたしに、「この髪どう思う?」 と聞いてきた。
彼女が自分流で切ったと知りながらも「なんか変」と答えた。だって、なんかかなり変だもん。
なんどか聞いてくるから鬱陶しかった。いくら聞いたって答えは変わらないのに。
母は悩んだ末に髪を洗い始めた。急いでいる風だった。理由を聞いたら髪を切りに行くらしい。地元にある1000円カットだ。

まだ午前10時。何かをするには早すぎる。

バタバタして出て行った中、わたしは気付かないふりしてオンライン授業を受けていた。

母が髪を切って家に帰ってきた。記憶ある限り初めてみる長さだった。

「似合う?」と無邪気そうに笑う母は小学生みたいだった。
「似合う。」素直にそう思った。
そこから嬉しそうに、店内でのことを話してきた。
優しい女の人だったこと。時間内に切り終わらなかったけど延長料金は取られなかったこと。嬉しそうだった。 それを聞きながら反吐が出そうだった。
彼女はもう前日を覚えてない。

妹が起きてきた。授業も終わった。

「お母さんの髪見た?」
『見た』
「どう思った?」
『びっくり、だって昨日ぜったい切らないって言ってたもん。うちが絶対変になるよって言ってもこれでいいから切ってって言ったから切ったのに。本人満足そうだったのに。』
「それみてお父さんはどう思ったの?」
『いつものように、「まあいいんじゃん?」だね』
「ふーん、で、どう思う?」
『こっちのがいいね』
「んね」

その日の記憶はここまで。