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尿路結石(1)~真夜中の激痛~

土曜日の夜中、日曜日の未明。
変な夢を見ていた。とても苦しかった。
でもそれが苦しんでいるという頭の中だけのイメージなのか、
本当に苦しいのかよく分からない。でもただただもがいていた。

徐々に眠りから覚めているのか。
頭の中のイメージがリアルな身体感覚へと徐々に徐々に、
右の腰あたりの鈍い痛みに徐々に、徐々に、
やがて耐えられないほどの激痛が暴走しはじめた。

そこではっきり目が覚めた。「うううっ」
気づくと、ベッドの上でうずくまってただただ唸っていた。
「なんだ、この痛みは?」
現状を把握するのに寝起きの頭が追いついてこない。

少しずつ動き始めた頭が記憶をたどっていく。
以前にもあったようなこの痛み。
こんな激痛忘れもしない。
・・・・尿路結石。

激痛とともに暗い闇につつまれていると、
心の中に不安と恐怖が広がっていく。
家内を起こして、救急車を呼んでもらうか・・・
いや、その前になにか打つ手がきっと・・・

医者にかかる前になにかしら策を講じようとじたばたする。
これも薬剤師の本性なのかもしれない。
確か、下の階の救急箱に
ロキソプロフェンが・・・

やっとの思いでよたよたと階段を下りて救急箱へ。
そして台所の流し台でコップに水をくむ。
ロキソプロフェン2錠をあわてて喉の奥に流し込む。
通常量の倍だけど、以前はこれでだいぶ楽になったのだ。

30分程台所の床にしゃがみ込んでうなっていると。
案の定少しは楽になってきた。
よたよたとベッドに戻ったが。
まだまだ痛みで眠れない。

苦しくてじっとしていられない。
痛むのは右側だけど、右を向いても、
左を向いても、仰向けでも結局痛む。
結局何度も何度も寝返りを繰り返す。

でもやがて体の向きによって、
痛みの感じが変わるってことに気づいたりする。
右を向いたとき、左を向いたとき、仰向けのとき、
確かに痛みの感じが違っている。

目を閉じていると痛みの色と形が見えてくる。
右を向いたら緑の痛み。ぬるっとしたアメーバのような。
左を向いたら臙脂の痛み。熟れた柘榴のような。
仰向けになったら灰色の痛み。重い鉛のような。

そんな夢うつつの中、夜が明けて行く。
まだ痛む。かなり痛む。今日は日曜日。安静にしなければ。
明日も痛むならやはり医者に行かねばならないか。
近所の医院の陰鬱な待合室を思い出し憂鬱な気分になる。

起きてきた家内に事情を話し、
今日のすべての予定先に連絡を入れる。
午前中の教会の牧師。午後の聖書研究会の仲間。
夜にコーチングを受ける予定だったコーチにも。

夜が明けてもまだ痛む。
できるだけ尿を出そうと無理矢理水を飲むが、
痛みで冷や汗あぶら汗。全部汗になってしまうようで、
なかなか尿意に変わってくれない。

それでもしばらくすると、ちょろちょろ尿が出始める。
たよりないけど、ちょろちょろ、ちょろちょろ。
それが少しずつ少しずつ太くなって行って、
気がつくと少しずつ少しずつ痛みも薄れていくような。

痛みはあってもさすがに夕べはほとんど寝ていない。
トイレの合間はウトウトしはじめる。
目が覚めてはトイレに行って、ベッドに戻ってまたウトウト。
その繰り返しの中ウトウト、ウトウトと時間が過ぎて行った。

お昼過ぎ。だいぶ流れてきた尿の途中で、
ぷるるんと尿道の震える感触があった。
気がつくと白い陶器の上に、黒っぽい3mmほどの塊り。
ついに出てきた。

夜中に見た、ぬるっとしたアメーバのような緑の痛み、
熟れた柘榴のような臙脂の痛み、
思い鉛のような灰色の痛み。
そのすべての正体がこの小さく地味な黒い粒だったとは。

気がつくと痛みはほとんど消えていた。
助かった。私は生き残った。生還した。
明日医者に行く必要もなくなった。
近所の医院の陰鬱な待合室の風景が遠くへ小さく去っていった。

再びベッドに横になると、窓の外の明るい光に初めて気づく。
窓の外から小鳥のさえずりが聞こえてくる。
iPadのYouTubeアプリを開いて今日のニュースをチェックする。
聞き慣れたYouTuberの声が聴こえてくる。

そうだ、夕べ書きかけていたnoteの記事の続きを書こう。
また、私の日常が流れ始める。

このお話は次回に続きます。
「尿路結石(2)〜再発予防対策〜」
( https://note.com/mimeguminoah/n/na861e38450af )
どうぞご覧ください。

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