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獏(うそ日記)

六月十二日(晴れ 夜半から雨)

夢見が悪い。
とめどなく哀しい夢だったと思いながら、
顔を洗い、歯をみがいていると、
ティッシュケースの影に、なにものかの気配がする。
素知らぬ顔で歯みがきを続けながら、
さっとケースをどかすと、獏がいた。
親指ほどの大きさで、ちんまりと座っている。
僕、獏。
なるほど。
「僕と寝れば、たちまち安眠」
思いがけず高い声で獏に誘われるが、
会社に行かなければならないので、
とりあえず、うがい用のコップをかぶせておいた。

明け方の雨はすっかりあがり、
駅までの道に、水たまりが四つできていた。
四はラッキーナンバーなので、たちまち気分がよくなり、
ぼく ばく ぼく ばく と 鼻唄まじりで会社に行く。

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いつだったか遙か昔。
こんな「うそ日記」を書いていたのでした。
ちょこっと、蔵出し。


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