学歴は『安く買って高く売る』投資から『高く買って安く売る』負債になりつつある
大学費用は急激に割高になっている
若い世代の奨学金破産は自己責任ではない。そんなはずはない。
大学費用がどれだけ割高になっているかを見るには、
大学費用と大卒初任給両方の推移を確認すればいい。
国立大学の一年間学費と初年度納付額(学費含む)と当時の初任給を図にしてみた。
(ソースは文部科学省やヤフーの記事など。各年のそれらを検索して入力しただけだ。記事によって多少前後はするが近似値だろう。)
1970年頃まで国立大学の年間授業料は12,000yenだ。
初任給は34,000yenで授業料はその1/3程度。全て奨学金で賄っても、新入社員が3ヶ月働けば返せるほど、大学費用が低額なのだ。
ところが1999年(氷河期世代が受験する頃)には年間授業料は478,000yen。
初任給は196,600yenで授業料は2.5倍近くまで高騰している。
2016年には、年間授業料は初任給の2.5倍以上に達している。
給料20万で手取り16万、そこから生活費を抜いたあとに数百万に上る奨学金を返していくことは簡単ではない。
氷河期世代は親のお金で大学に行っている
1999年には十分高騰していた大学費用だが、
氷河期世代と呼ばれる40代のほとんどは奨学金を借りてない。
40代初めの私が大学生だった頃、奨学金を借りている同級生はいなかった。当時の利用者は全体の20%程度だったらしい。話題にも上らないはずだ。
上京組は学費+生活費を仕送りしてもらっていたし、バイトは小遣い稼ぎだった。
貧窮している学生もいただろうが少数派だ。その証拠に氷河期世代の有名人たちも奨学金を借りている人がいない。ホリエモンだってひろゆきだって荒野で生きてきた一匹狼に見えるが、親に学費を出してもらっている。
中堅サラリーマンが年収650万程度あり、子供二人を進学させられた時代だ。社会全体が豊かというか世界が認めるNo1金持ち国で、普通のおっさんが金を持っており普通の女の子がブランドものを購入出来た時代だったので、奨学金という音すら発されなかった。と言っていい。
いくら大学費用が高騰しても自腹でなければ本人たちには関係がない。
東大に行くことは驚異的に効率のよい投資だった
私も両親に「良い大学に行け」と散々言われた。「好きなことをする前に、とりあえずいい大学に受かれ」と。
彼ら団塊世代にとって東大や難関大学に合格することは効率の良い投資だった。学費は低額な上に、給与が高騰することが目に見えていたからだ。
安く買って確実に高く売れる株みたいなものだ。
しかし投資するには難関試験に受からなければならない。3年くらいなら浪人しても十分リターンがある。だから浪人生が続出したのだろう。
私の父親は東大を3回も受けているが、それは名誉や勉学のためではなく、投資だったはずだ。本人は認識出来ていないと思う。
大学に行くことが負債になる現代
大学費用は高騰を続けても、世帯収入も初任給は20年間ほとんど上がっていない。日本の給与水準は先進国で最低クラスだ。
大卒資格は、借金までして高く買っても安くしか売れない負債になってしまった。
そして負債であることを、社会も現役世代も認識していない。敢えて目を逸らしているのだろうかと思う時さえある。
私は数年前に一回り年下の大学生たちと知り合う機会があり、あまりに多くが奨学金を借りているので本当に驚いた。そしてなぜこんなに周知されていないのかも疑問に感じた。
奨学金問題も子供の貧困もそうだが、社会全体が貧しくなっているのを反映しているに過ぎない。社会が貧しくなっていることを認めたくない勢力や個人が多いのだと思う。
今大学生の人たちはどうしたらよいのか
私が当事者だったらどうするか考えるのは難しい。借りている金額や状況にもよる。
まずは『自己責任』と批判してくる人を相手にしてはいけない。それに言ってくるのはほとんどが親の金で大学に行った奴だろう。
次に内実を知ること、それを親御さんと共有することも重要だ。『奨学金が日本を滅ぼす(朝日新書)』は非常に分かりやすかった。親御さんと一緒に一読してみたらどうか。
疑問や不安を感じたら専門機関に相談したらいい。上記の本の巻末に相談先もいくつか掲載している。若いうちに大きな問題に直面するのは勇気がいるが、後々の人生にとても役に立つ。親身に考えてくれる人も沢山いるはずだ。
あと就職先として日本の一般企業は給与が安過ぎると思っていた方がいい。今は海外就職という手もある。
数年前まで奨学金が返せなくて自己破産するなんて、アメリカの話だと思っていた。色んなものがぼろぼろ剥げていくのを近年感じる。
参考文献:『奨学金が日本を滅ぼす(朝日新書)』 大内裕和