映画RRRを観て、覇権の移行が思った以上に進んでいるのを感じた
ハリウッドが一瞬で色褪せる
もう映画で感動することはないだろうと諦めていたが、
友人に勧められてインド映画「RRR」を映画館で鑑賞した。
彼女はなんと6回も映画館に足を運んだらしい。
普段から冷静で率直な人がそこまで言うならと思い映画館へ行った。
三時間の間全く飽きることがない。
昔映画を見たときの懐かしいわくわくした気持ちが蘇える。
夏休みに金曜ロードショーで観たジブリやスピルバーグ。
面白いものにしたいという創り手の思いが伝わるので、
自然にわくわくしてくる。
ハリウッドも日本のテレビドラマからもそういう思いを感じない。
売上と経費の計算を繰り返し、パターンから利益を生もうというさもしさしか感じない。
観てる方は白けるだけだ。
衰退に向き合う誠実な創り手
「RRR」を観て、ハーモニー・コリンの「スプリング・ブレイカーズ」を思い出した。
消費主義末期の青春を生きる4人の女の子。(映画内ではビッチと呼ばれる)
消費を教義として生きる敬虔なクリスチャンのような彼女たちは消費しつくして消費しつくされる。その姿が切なくて泣けてくる。
ハーモニー・コリンは70年生まれの監督だが、
ホワイト・トラッシュと呼ばれる文化水準の低い白人を描いてきた。
極端に言えば、ハリウッドを観てファーストフードかダイナーに行き地元からは一歩も出ない人々だ。
80年代以降のアメリカの衰退を最も反映しているのが彼らだからだろう。
製造業が衰退し、教育費や医療費が爆上がりし、格差が激しくなり。それでも衰退を受け止められない人々がいる。彼らのためにハリウッド映画は存在している。
そのアンチテーゼとしてハーモニー・コリンが存在している。
彼は祖国の衰退を10代の頃から直視してきた誠実な創り手だ。病床にいるマッチョな父親(アメリカ)を優しく見守る息子のようだと思う。
衰退や成熟を迎えた国は「RRR」を作れないし、若作りして作る必要もない。
覇権の移行がどんどん進んでいる
BRICSという言葉が出てきてから久しい。随分前からインド人が西欧に留学し、中国人が日本の富を爆買いしている。
覇権の移行期が次の段階に入ると、文化に如実に現れることを感じた。
成長期にある国や個人の勢いは誤魔化せない。誰から見てもわかる。
YoutubeではRRRダンスを真似する若い子たちが沢山いるが、その気持ちがよくわかる。
私が30年若かったらやっているからだ。
インドに行きたい、インドの文化を知りたい、大自然に触れたいetc
そうした思いをたぎらせる若い人たちがこれからどんどん増えるんだろう。
若い人たちが魅力的なものに敏感なのはいつも一緒だ。
日本もアメリカと同じ轍を踏んでいる
日本におけるドラマやバラエティ、大手マスコミが提供する「成功者のイメージ」は、ハリウッド映画みたいなものだ。
それらは衰退から目を逸らすものでしかない。それでもまだ利益が見込めそうだから、そしてその利益が無くなると生活出来ないからしがみ付く人々がいる。
しかしそのモチベーションで創られるものが面白いはずがない。視聴者を白けさせる内輪ネタに終始していく。
製造業の衰退、福祉予算の削減、格差とアメリカの20年前と全く同じことが起きる日本で何が起こるか予想するのはそんなに難しいことではない。
ハーモニー・コリンのような態度で祖国に向き合っていこうと思う。
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