2021年9月19日 5週2日

何か少し、いつもと体の感じが違うとは思っていた。下腹が張る、下腹部に一瞬ぴりっと痛みが走る、お腹が空く、体がやや熱いような感じがする。
生理予定日を1週間過ぎても何も起こらない。1週間程度の誤差はわりとある方だったので、いつもならさほど気にしないけれど、3日後に2度目のコロナワクチン接種を控えていたことが気になっていた。念のためと郵便局への用事のついでにドラッグストアで検査薬を買い、人の家の軒先の園芸をぼんやり眺めながら、結果はどちらかなんだよなと自転車をこいで帰ってきた。

20代はずっと生理不順で、女性らしさに乏しい体型でもあり、妊娠しにくい体質だと思い込んでいた。子供に関しては長らく「どっちでもいいや」というスタンスでいた。夫も同じで、さらにどちらからと言えば積極的には作ろうと言わないだろうという感じだった。

しかし私は今年38歳になり、いよいよリミットを実感するほどに「ほんとに産まなくていいのか」と思うようになった。
意を決して夫に相談することにした。
親になることの恐怖、気ままな2人暮らしの終焉、仕事にかかる制限、金銭面、という正直なところも話した。
一通り話したところで、出来るかどうかも作ってみなければわからない。年齢的に早いに越したことはない段階なのだから、ほしいと思うなら試そうという方向に決まった。最終的に夫からそれを言ってくれたことはありがたいことだった。

簡単に書いたがこの話しに私が本気で舵を切れるまで時間がかかった。
妊娠という目的を持つことで、セックスの位置付けがそこに収斂し、義務化するのではないかという懸念、何より大事にしたい2人のバランスが変わるのではないか、などの懸念事項がつきまとう問題だったからである。今の生活をとても好きでもあるから、壊したくはなかった。

38歳での初産自然妊娠の確率は10%程度ということで、時間がかかる覚悟はしていた。しかしその予想は外れた。いきなり検査薬にははっきり赤い線があらわれ、ちょっと手が震えた。

トイレから出るとコーヒーに凝っている夫はドリップをしていた。マグカップを受け取ってひと口飲んで味の感想を言ってからテスターの検査結果を見せるとコーヒーを回収されたが、1日2杯までは大丈夫なはずである。

一気に来年以降のことを考えそうになったが、まずは産婦人科に行くことと3日後のワクチン接種をどうすればいいのか、考えなければならない。とりあえず最寄りの産婦人科に予約をした。今夜予約しているアメリカンユートピアの爆音上映は予定どおり見に行く。

腹部で何か起こっている。でもまだしっかりと育つものなのかもわからない段階で、早期の流産はめずらしくないと聞く。まだ「子供」がいると強く思い込まないことにしておこうと思う。

生き物のはじまりを引き受けている、何かが育とうと試みて、私はそれを引き受けている。という距離感で、このゼロ距離をできるだけ観察してみようと思う。

妊娠の夢は見たことがあるが、これは夢ではないらしい。これから何が起こるのか、ここに書き留めていく。あらゆる意味での私の変形を。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?