ライターとしての強み
「ライター」を名乗り、仕事をしている人はおおぜいいる。
専門性を持っている人、構成力のすぐれた人、書くスピードが速い人、取材力のある人……。ひと口にライターといっても、その強みは人それぞれだ。
「得意分野を持て」とか「あなたの強みはなに?」という人がいるが、自分の強みって何だろう、とときどき思う。
私には特段の専門性があるわけじゃないし、書くのが異様に速いわけでもない。とくに推敲前の文章は身体の固い人の関節のようだ。カチコチと凝り固まっている。なめらかな文章をいっぺんでひねり出せるタイプではない。
ただ一つだけ、むりやり自分の強みを挙げるとすれば、それは「書くこと」で生きていく、その思いだけは強いことだと思う。
周りには、取材は楽しくてしかたがないが、文章を書くのが好きじゃないという人もいる。私にはそれがない。取材と書くことは一体だ。人の話を聞くのと同じくらい、書くのも楽しい。どちらも愉快なことばかりではないが、それも含めて。
書くことで生きていきたい。その気持ちが高じて、独立後は原則、編集の仕事は断ってきた。実際、ライティングで手いっぱいで編集までする余裕がなかったというのもあるが、これからはライターとしての能力を伸ばすところに時間と労力を使いたいと考えている。
前職で編集もやっていたから、「編集のできるライター」は強みになるだろう。そうしたほうがいいとアドバイスをいただいたこともある。
しかし、私は自分の編集能力には懐疑的だ。企画力があるほうではないし、さまざまな立場の人を巻き込みながら全体をディレクションするのが苦手だ。自分の努力だけではどうにもならない部分がでてくるのも我慢ならない。もちろん、ライターもほかの職種の人たちとの協業あってこその本づくりをする。それでも、取材で素材を集め、企画のねらいや読者層に合わせて取捨選択し、構成や文章を練り上げるところはライターの力量によるところが大きい。ここでがんばりたいのだ。
これからは、書くために必要な筋肉を鍛えることに集中したい。これが今の気持ちである。なんだか、青くさい話だけれども。
そういえば今日は、開業8カ月めだ。