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ライターとしての「相場観」を鍛えるヒント_『本は10冊同時に読め!』(成毛眞 著、三笠書房 知的生きかた文庫)

ニューズピックスで連載中の成毛眞さんの「イノベーターズ・ライフ」を楽しみにしている。そこで知って取り寄せたのが『本は10冊同時に読め!』(三笠書房 知的生きかた文庫)だ。

ブックライティングの仕事をするようになり、これまでビジネス書をほとんど読んだことのなかった私は、今貪るようにそれらを読んでいる。先生が書かれた本、知り合いの編集者の方が手がけた本、卒塾生の本。読まなければならない本はいくらでもある。自分の課題やいただくお仕事に合わせて、読まなきゃならない本は、湧くようにして増えていく。

ただ、一冊まるまるきちんと読み通そうと思うと、軽い読み口の本でも1〜2時間はかかる。しかし、速読術を身につけたいとは思わなかった。だからこそ、読む速度を上げるのではなく、「本を同時に複数冊読む」ことを推奨する成毛さんの本はしっくりきた。

著者は「合間読み」「ながら読み」を軸にした「『超並列』読書術」をすすめる。特殊な技術ではなく、すぐに実践できるのがいい。
リビング、風呂、トイレ、通勤中の車中などにそれぞれ本を置いておく。その場所に来たときに、置いてある本を読むスタイルだ。頻繁に挟み込まれるテレビCMの時間を利用して読むのは結構集中できると言う。

驚いたのは、著者が本を読むために通勤に電車を使わず、タクシーを利用していることだった。毎日5000円、年間200日通勤するとして1年間のタクシー代は約100万円。会社への行き帰りに2時間使うとしたら、年間100万円で400時間を読書のために確保できる、という考え。あやしげな教材やスクールに100万円使うよりは断然このほうがいい。

本屋でタイトル、帯、目次、前書きを立ち読みするだけで、「すっかり読んだ気」になれる域に達するのが大事らしい。「最後まで読み通すのが読書とは限らない。内容を理解するのが読書」。「1冊を全部読まないといい本かどうかがわからないのは、読解力がまったくない証拠」。成毛さんの言葉はストレートで、気持ちがいい。

週に一度本屋に行き、上の方法で4、5冊立ち読みをすれば、買わなくても月に20冊、年間で240冊読める計算になる。これによって面白い本を見抜く、「嗅覚」が養われるという。確かにそれだけの本のタイトルや目次、前書きに目を通せば、自分の中で本を選ぶときの基準、面白がるときの傾向が見えてきそうである。

原稿の相場観をつかむために、幅広い分野に関心を持たねばとは思っていたが、興味のないテレビ番組や雑誌に目を通すのは気が乗らなかった。この「本屋での立ち読み読書」を習慣にできれば、読者層や分野ごとの相場観を鍛えるのにも役立ちそうだ。いいヒントをもらった。