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想い出の本
部屋の模様替えと大掃除を兼ねて、長いこと手付かずだったクローゼットに思い切って手を出した。
喘息が反応しそうなほど埃にまみれた箱。
ふたを開けたら、アメリカに留学していた頃の大学の教科書や、なけなしのお金で買い集めた本、練習に励んでいたピアノの楽譜などがぎっしり詰まっていた。
この箱の存在をもうすっかり忘れていたので、まるで宝箱を発見した気分だった。
その中から見つけたのが、私が日本に帰国する時に友達がくれた想い出の本。
なんだか懐かしくて胸がギュッとした。
懐かしい匂い。
そして、しおりがわりにしていた、行きつけだったカフェの紙ナプキンが挟まっていた。
あの頃のまま、この本は時が止まっていたんだ。
あの頃の自分と時を超えて繋がったような不思議な感覚。
それは、苦しいような嬉しいような複雑なもの。
この本をまた読み出したら、この感覚はどうなるのかな。
明日、勇気を出して本の時を進めてみよう。