ある少女の記憶 ⑴
今から76年前、
当時成人したばかりの21歳の少女は、
挺身隊にて軍需工場での奉仕作業で、
もう少しで、
手榴弾の投げ方を教わるところだった。
「私に投げられるのかしら。自信がない。もし間違えたらどうすれば…。」
そんな不安を女子挺身隊の仲間とともに抱えて日々過ごしていた。
そんな頃、
日本は終戦を迎えた。
長い長い悪夢が、表面的に幕を閉じた。
しかし、戦争経験者には、
その断末魔の経験が、
それから長い長い時間をかけて、
呪縛となってその身にまとわりつくのだ。
今の時代からすると、
21歳とは一番輝く時期なのかもしれない。
しかし、想像を絶する戦時中でも、
彼女はある事を楽しみにしていた。
それは、挺身隊での、
読み聞かせの時間。
文学少女である彼女は、
小説家になる事を夢見た。
電気のつかない部屋で、
月明かりを電気の代わりに、
いろいろな本を読んだ。
彼女は度々挺身隊にて、
読み聞かせを行っていた。
それが彼女を輝かせていた。
しかし、明日の保証のない日々は、
きっと今の平和な時代に生きる私達には、
きっと容易に想像することはできないだろう。
これは、ある少女の戦争体験談だ。
そう、ある少女とは、
私の大切な大切な祖母である。
続く。
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2013年の7月。
おばあちゃんが旅立つ3ヶ月前。
私が子供の頃から長い間、
幾度となく私に話してくれていたおばあちゃんの戦争体験を日記に綴りたいと思い、
おばあちゃんのそばで、
私はもう一度良く耳と心を傾けた。
おばあちゃんが私に話してくれた、
あの頃のおばあちゃんの姿を、
今後もこの時期に再度再度投稿していきたいと思う。
全4話連載