見出し画像

任務

9月1日(日)
朝、目が覚める。むくりと起き上がる。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。

ウーちゃんとルーちゃんの水槽の前に立つ。ルーちゃんが両手を かきかきしながら急いで泳いできた。可愛い。可愛い。可愛い。と、10回くらい言ったと思う。

水面で口を ぱくっとした。「ご飯ちょうだ〜い。」の合図。のんびり屋さんのウーちゃんは ゆっくり頭を上げる。

交代でタブレットのエサを菜箸でつまんでポトリと落とす。

植物たちに水をあげる。

修一郎の食事をお弁当仕立てにして ふたつ作っておく。

今日もあちこち行く予定。
ごはんさんと しゅっぱーつ!

まず、お昼ご飯を食べよう。ということになる。
米麺がおいしい ”糀(こめのはな)” というお店に行く。トマト米麺を注文する。

インゲンとか食べれないものを ごはんさんの器にどんどん入れてゆく。とてもおいしかった。

おなかいっぱいになって駐車場に出て車に乗り込んだとき、赤い車が入ってきた。

ごはんさんがエンジンをかけようとしたとき、その車から年配の男性が降りてきて手を上げながらこちらへ向かってくる。

ちょっと強面、スキンヘッド、首から大きな玉の数珠をぶら下げている。

「この辺に火葬場はありますか?」と、その男性。

「天生園のことかな。」と、ふたりで顔を見合わせる。

「ちょっと難しいんですよね、1本向こうの道なんですけど…。」と言いながら、ごはんさんが車から降りた。

道まで出ていって説明をしている。私は車の中で待っていた。

男性がお辞儀をしながら車に乗って出発した。

「あの人、ごはんさんと出会えてラッキーだったね。この辺あんまり人通らないし、方向音痴の私だったらまちがえて教えてしまいそう。」と、言いながら私たちも出発する。

「ちゃんとあの道を右折されるかな。誘導してあげればよかったかな。」と、ごはんさんが言った。

しばらく行ったとき、ごはんさんが

「あ、あの人まっすぐ行った。」と、声をあげた。

赤い車と私たちの車の間には何台か車が走っていた。私は赤い車の行方に全く気づかなかった。ごはんさんは赤い車を気にかけてずっと見ていたのだ。

「あのままじゃ離れていく。あの人を無事送り届けるのが今日のオレの任務かもしれない。」と、ごはんさんが言った。

地球防衛隊みたいだ。親切だなぁ。と思った。

ごはんさんが赤い車を追う。途中で赤い車を見失った。ごはんさんはハンドルを切って天生園へ向かった。

「天生園行っていい?」と、ごはんさん。

「もちろんいいよ。」と、私。

「誰か身近な人が亡くなったんだね。」と、話す。

道中、赤い車は見当たらない。
天生園に着いた。駐車場にもあの赤い車は停まっていなかった。ゆっくりゆっくり周って出ようとしたそのとき、赤い車が入ってきた。

「あ!あの車だ!まちがいない!」と、ふたりで言った。

窓を開ける。赤い車の人も気がついて窓を開けた。その笑顔が布袋さんみたいに朗らかで優しく明るい笑顔だった。

「よかった!」と、ごはんさんが車から叫んだ。

「*%&$#!」と、その男性も手をあげて叫んだ。多分「ありがとう!」と叫んだんだろう。

ほっとして天生園を出る。

「あの人の笑顔、すごくよかった。」と、ごはんさんが言った。

ごはんさんって本当に親切だなぁと思った。

「うん。あの人を火葬場へ送れてよかったね。」と、私。

「みるさん、その言い方ヤバイ。」と、ごはんさん。

「あ。」と言って、ふたりで大笑いした。

次の目的地へ しゅっぱーつ!
次の目的地は東峰村。遠い。2時間くらいかかる。

道中の緑や山が本当にきれいだった。東峰村は標高が高め。どんどん上ってゆくと途中で耳がキーンとなった。

標高が高いところの景色。山が針葉樹でいっぱいだ。巨大カリブロがいっぱい集まっているみたい。

小石原焼きの窯元、辰巳窯に到着。
こちらのNご夫妻はとても感じがいい。15歳になる、まるまる太った大きな金魚をはじめたくさんの金魚がいる。ひらひらのドレスを着ているよう。可愛い。

ごはんさんの金魚を連れてきていた。
お掃除された水槽に放す。すごくきれい。優雅に泳いでいる。朱文金とコメットが混ざっているらしい。目が真っ黒で大きくて、パンダ目と呼ばれているそうだ。みんなで「可愛いね〜。」と、眺める。

しばらく滞在していろいろなお話をする。
表まで見送ってくださって帰路に着く。楽しかった。

いつものお店によってお買い物をする。

家に帰り着く。
修一郎は寝ていた。

数ヶ月ぶりにInstagramに投稿をした。
InstagramもFacebookも数ヶ月に1度くらいしか投稿していない。投稿するのも見るのも ついつい忘れるのだ。

起きてきた修一郎に「東峰村に行ってきたよ。」と言うと、「そんなところまで行けてよかったね。」と言ってくれた。

夜、庭に出る。涼しい。秋の虫の声が涼やかでうっとりする。丁寧に作られた鈴のように美しい音色。昼間は暑くても、ちゃくちゃくと秋がやってきているんだなぁ。夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。

今日もいい一日だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?