日常の中にある一瞬の煌めき
10月3日(木)
朝、1回目のアラームで目が覚める。
眠いよう。眠いよう。まぶたがあっという間にくっつくよう。なんとか目をぱちりと開ける。
あぁ、このままではまた眠ってしまう。起き上がらなければ。二度寝の誘惑を退けるのだ。がんばれ、みるみる。むくり。ふぅ。誘惑に打ち勝った。
こんなふうに朝から手に汗握るドラマが繰り広げられているのだ。
玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。
ウーちゃんとルーちゃんにエサを控えめにあげる。今日はタブレット。
食事の支度をする。カレー。
いつもよりスパイスを入れ過ぎてしまった。味見ができないので見た目で調整。水を足す。ルウがちょっとゆるくなったような気がする。弱火にして ぐるぐるかき混ぜる。
電話が鳴った。
印刷会社のNさんからだ。絵本の進捗状況について話す。
午後、ごはんさんのところにカレーを持っていく。話をする。
「みるさん、椎茸植えよう。」ごはんさんが突然言った。
椎茸栽培の何かを買ってくれたそうだ。名前を聞いたけれど忘れてしまった。わくわくする。椎茸栽培について調べることにする。
そしてシエンタのステッカーをくれた。可愛らしいまるい書体だった。ときめいた。大事に厚紙に挟んで持って帰る。
車の廃車のことで電話をかけたり書類を作ったりする。
絵本のラフを描く。
母と電話で話す。
庭仕事をする。
土を耕すと、まるまったイモムシたちが出てきた。ふかふかの土のおふとんで、きもちよさそうに眠っている。「ごめんごめん。」と言いながら軽く土をかぶせる。
夕方、暗くなりはじめたころ日産へ行く。
車を走らせる。
大きな いのしし母さんの後ろを小さな うりぼう 3頭が ちょこちょこついて道路を横切った。可愛い。昨日は むくむくした たぬきが横切った。ちらっとこちらを見て薮の中に入っていった。とても可愛かった。
日産に到着。
Tさんとお話をする。日産ですることはすべて終了した。パオのときから20年くらいのお付き合いだ。Tさんの目が しょぼしょぼしていた。
「マーチを手放すのは寂しいです。」と言ったとき胸がいっぱいになった。
Tさんの目がさらに しょぼしょぼになった。お互い笑顔で店を出る。
いつも行っているガソリンスタンドの前を通る。
スタッフさんたちが今日の閉店のために笑顔で何か話しながらポールを立てている。野球部の男の子たちが自転車に乗って過ぎてゆく。大きな水たまりが街灯の明かりで輝いている。スーパーマーケットやコンビニエンスストアへ入ってゆく人たち。
日々の営みが あたたかくて切なくて愛しくて涙が ぽろっとこぼれた。
ハンドルを握ってメソメソしながら、マーチに「長い間ありがとう。」と、何度も言った。
「みるみる、もう泣かなくていいよ。いいよ。」と、マーチが言った。ような気がした。とても優しくてあたたかい車内になった。守られている感じ。
「1ヶ月半くらいシエンタと並んでいてお話ししたのよ。みるみるをよろしくね。って。」と、言った。ような気がした。
家に着き車を停める。しばらく しんみり座っていようと思ったが、このところの雨のため車内はカビの匂いがするのですぐ降りた。ごめん、マーチ。えへ。
郵便を出すのを忘れていた。もう真っ暗だったけれど、ポストに投函しに行くことにする。
しんみりしながら てくてく歩いていると、ご近所のTさんがランニングにステテコ姿で頭にベルト付きの懐中電灯をつけてワンちゃんのお散歩をしていた。そのゆかいな姿を見て大笑いしてしまった。
寂しい中でも ゆかいなものを見れば笑ったり、空の美しさに胸を打たれたり、私たちは日常の中で一瞬の煌めきを見つけながら生きているんだなぁ。と、しみじみ思った。
家に入る。
ウーちゃんとルーちゃんの前で りんごを食べていると、2匹で じわーっと寄ってきた。可愛い。きゅん。
夜、庭に出る。
涼しい。肌寒いくらいだ。空一面の雲模様。木々のシルエットが切り絵みたいにきれい。
暗い中マーチをみつめる。もう寂しくなかった。また寂しくなるかもしれないが、それはそれでいい。そういうこともある。
夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。
今日もいい一日だった。
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