バイクに乗せてもらって笑顔をみつけた
11月3日(日)
昨晩遅く眠ったのにも関わらず、朝、アラームが鳴る前に目が覚めた。
今日も小鳥の歌声にうっとりしながら毛布の中から手を伸ばし、ファンヒーターをつけて、むくりと起き上がる。
玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。
澄みきった青空。ぽかぽかと暖かい。
今日は、ごはんさんのバイクの後ろに乗せてもらって こもれびの森へ行く。最高の日和だ。
修一郎の食事をお弁当仕立てにして ふたつ作っておく。
絵本のテキストデータを修正する。
ウーちゃんとルーちゃんの水槽の水を換える。
午後、ピンク色のヘルメットを持って、長靴を履いて、ごはんさんのところへ行く。
出発する前に、家の前で ごはんさんがウィリー走行をしてくれた。
以前、F町に行ったときウィリー走行の話になった。私は見たことがないので見てみたいと言っていた。
すごくびっくりした。サーカスみたいだ。こんな走り方ができるなんて大迫力だ。後ろにひっくり返るんじゃないかと思い、コワくてドキドキした。
ぱちぱちぱち!と拍手をする。
観覧したあと、たっぷり着込んで こもれびの森へ しゅっぱーつ!
素敵だ。とても きもちがいい。風景が流れてゆく。トウモロコシ畑、山々、家や車、とても楽しい。
ふと、ミラーに映っている自分の顔を見ると、笑っていた。かなり楽しそうだ。自分の顔でも笑顔をみつけるとうれしくなる。「よかったね」と、ささやく。
途中でお昼ご飯を買って こもれびの森に到着。
昨日の夕方見た銀杏が絨毯のように地面を覆いつくしている。やる気が湧いてきた。ぜんぶ拾うぞ。
ブリキのバケツに ゴロン、ゴトン、カラン、と入れてゆく。もくもくと、せっせと入れてゆく。
ニャーニャー言いながらミケちゃんがやってきてまとわりつく。可愛い。腕に ごつごつ頭突きしてくる。
ごはんさんが、高さ8mくらいある木の枝を落とすと言っていた。
斜面から生えているその木にカーテンみたいに蔦が絡まり建物の屋根にかかっている。もし、屋根に枝が落ちたり木が乗っかると大変なことになる。
銀杏を こつこつ拾っていると、大きな鳥の声がした。聞いたことがない。きっと大きな鳥にちがいない。他の鳥たちの声もたくさん聞こえてくる。大きく美しい声。鮮やかな音楽のようだ。鳥たちの大合唱に耳を奪われる。
「いまの鳥の声聞いた?すごいね。」と、ミケちゃんに話す。
「にゃー。」と、ミケちゃんが言った。
銀杏がバケツいっぱいになると、ごはんさんが運んでくれる。水に浸けておくのだ。明日YOさんが来て撹拌し皮を剥いてくれる予定。
「この前拾った銀杏、ずっと水に浸けてたからお酒になってる。」と、ごはんさんが言った。
見に行くと、濃厚な発酵した香り。果実酒みたい。銀杏酒…。
バケツ3杯目になったとき、ごはんさんがやってきて、
「みるさん、見て。」と言ったので、後について行った。
すると、8mくらいある木の上から伸びている枝がきれいに落とされていた。びっくりした。足場がとにかく不安定な場所だ。高い梯子に上って高枝チェーンソーを使って切ったなんてすごすぎる。
また こつこつ銀杏拾いに戻る。
バケツ5杯目になったとき、ごはんさんがやってきた。
「みるさん、これでどうかな。」と、何気なく言った。後をついて行ってびっくりした。
なんか風景が変わっている。
斜面から斜めに高く伸び、建物の屋根を壊すおそれのあった木が、きれいに低く切り揃えられていた。仰天した。この木をひとりで切ったなんて。
植木屋さんに頼んだら足場を組んで大変な作業になっただろう。なんせ足場が不安定な斜面なのだ。
出入りしている人たちもずっと、これは難しすぎる。どうすることも出来ないだろうと言っていた。
私が銀杏を拾っている間に、こんなに背の高い木を きれいに低く切り揃え、幹をいくつかに分け長い枝もまとめてある。魔法としか思えない。
…いつか わが家の裏庭六畳ジャングルの もみの木と杉の木の枝を…とっさに心に浮かんだ。
それからも こつこつと銀杏を拾い続けバケツ6杯半になった。
なんと、4時間ぶっ続けで銀杏を拾ったことになる。
こういう、地味に こつこつ続けることが得意だ。いつまででもしてしまう。特にこもれびの森は 豊かな自然に包まれて心地がいい。
「みるさん、小川に水が流れてるよ。」と、ごはんさんが言った。
急いで ごはんさんの後をついて行く。
先日の大雨で小川に水が戻ったんだ。
「ほら、音が聞こえる。」ごはんさんが言った。
耳を澄ませる。サーサーという澄んだ音がする。穴ボコに足を突っ込みながら竹や草を踏み分けて進む。
勢いよく水が流れている。きれい。向こう側にある森と小川の景色が おとぎ話の中みたいだ。
夕方になった。帰ることにする。
バイクに乗ると風が冷たく感じる。
走りながら「寒くない!?」と、ごはんさんが気遣ってくれる。たくさん着込んできたのでそんなに寒くなかった。
帰り道、コスモス畑が続いていた。いろいろなピンク色がとてもきれいでうっとりした。風に ゆらゆら揺れている。「またね。」と、あいさつしてくれているようだ。
信号で止まったとき、
♪楽しいね 楽しいね 楽しいね〜♪ と、ごはんさんの替え歌が聞こえてきた。
バイクの後ろに乗せてもらうのはとても楽しい。運転するのはもっと楽しいだろう。いい歌だなぁと思った。
いつものお店に寄る。駐車場にバイクを停めた。
置きっぱなしのカートとカゴがたくさんあった。
「オレ、こういうのキライ。」と言って、ごはんさんがカートを集め押して行き、カート置き場に戻した。
何度か ごはんさんのこういう行動を見てきた。その度、気がついたらすぐ実行出来てすごいなぁ、と思った。
お買い物を終えて店を出たとき、群青色の空の下方に強いオレンジ色が広がっていた。漆黒の木々のシルエットがくっっきりと浮かび上がっている。ものすごく美しくて胸がふるえた。
そして、一番星が堂々と輝いていた。息を呑む夕焼け空。
「一番星出てるね。」ごはんさんが言った。あまりにきれいで
「うん。」と言うのが精一杯だった。
帰り道、一番星の話をしてくれたけれど、恒星とか惑星とか太陽系とかが出てきて、ちょっと難しくて覚えていない。
家に帰り着く。
カマンベールチーズを むっつに切り分けて ひとつ食べた。クリーミーでおいしかった。
先日買ったヨーロッパ産のカマンベールチーズは、ものすごく古いふすまの味がした。ふすまを食べたことはないけれど、ものすごいカビの味がしたのだ。ぶるぶるっとふるえた。私には手に負えない味だった。ヨーロッパの大人はこれがおいしいのか…。と、ちょっとびっくりした。
夜、庭に出る。
星がキラキラ輝いていた。きれい、きれい、きれい!カシオペア座がクローバー畑の真上に見える。ぽおっと佇んでしばらく眺める。
夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。
今日もいい一日だった。
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