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どんな想いでこの景色を眺めたんだろう

9月8日(日)
朝、ものすごく早く目が覚める。虫の声が聞こえる。きれい。しばらくベッドでごろごろする。小鳥の歌声が聞こえてきた。うっとり。

たまに、こんな日がある。作画が大詰めに入ったときとか。
せっかく早起きしたので むくりと起きあがる。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。
涼しい。顔も洗わず庭仕事をする。

ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげる。

絵を描く。細かいところを描いてゆく。細かいところを描くのは朝がいい。どんどん描く。筆洗いの水を何度も交換する。

今日は こもれびの森に行く日。
修一郎の食事をお弁当仕立てにして ふたつ作っておく。

午後、氷を入れた水筒をカランコロン鳴らしながら ごはんさんと しゅっぱーつ!

途中で お昼ご飯を食べることにする。
何を食べてもおいしいお店でそれぞれのお膳を注文する。ボリュームたっぷり。

食べれないものをどんどん ごはんさんのお膳に乗せる。ごはんさんの食べっぷりは見ていてきもちがいい。どんどんお料理が減ってゆく。

ごはんさんは食べ終わり、私はあと小さなパイナップルが2切れ。パイナップルはアレルギーになってから初挑戦だ。そのパイナップルを食べる前に あるお願い事を切り出した。

「10月のイベントで飯塚市に行くでしょ。その帰りに旧伊藤伝右衛門邸に連れて行ってもらいたいな。」

旧伊藤伝右衛門邸とは歌人の柳原白蓮さんが筑豊の炭鉱王と呼ばれた伊藤伝右衛門さんの妻として10年間暮らした大邸宅だ。国指定重要文化財、国指定名勝になっている。

アールヌーヴォー調のマントルピース、イギリス製のひし形のステンドグラスのある応接間、一畳たたみを敷き詰めた長い廊下等様々な芸術的技法を取り入れ改築が続けられた歴史的建造物だ。大正時代の和洋折衷のお部屋やインテリアが満載なのだ。

そして、私が大好きな赤毛のアンの翻訳者、村岡花子さんとも親交が深かった白蓮さん。数年前には邸で赤毛のアン展が開催されていた。

ぜひ見に行きたいと思っていた。でも、私にしては遠いし土地勘がなかったので自分で行くのは難しかった。

さらにさらに、ごはんさんは旧伊藤伝右衛門邸の女ボスとお知り合いなのだ。

ドキドキしながら返事を待つ。すると、

「予定変更して、今から行こう。」と、言ってくれたのだ。

天使がラッパを吹きながら私のまわりを回っている。花吹雪も撒いてくれている。
すごくうれしかった。まさか今日行けるなんて!うれしくて ぼーっとしていると、

「パイナップル。」と、ごはんさんが言った。

うれしくて胸がいっぱいになりパイナップルを食べるのを忘れていた。慌てて食べる。

旧伊藤伝右衛門邸へ しゅっぱーつ!

到着。
とても素晴らしかった。すごく楽しかった。建物もお庭も全てに技とロマンがたっぷり詰め込まれていた。2階に上がり、意匠を凝らした白蓮さんのお部屋に入る。美しい庭園が一望できる。

決して幸せだったとは言えない大邸宅での暮らしの中で、この窓から白蓮さんはどんな想いを抱いてこの美しい景色を眺めていたんだろう。と、ちょっと思う。

敷地内にある小さな資料館のようなところも見る。そして最後にミュージアムグッズを販売している小さな建物に入る。

白蓮さんと竹久夢二さんは交流があったそうで、両方のグッズが置いてあった。それと、飯塚市のお菓子。

「これ、今日作りたてのお菓子なんですよ。なかなか買うことができない お饅頭と最中なんですよ。」と、スタッフの方がおっしゃった。

上品な箱に入ったおいしそうな和菓子だ。じっと見ていた ごはんさんが

「これ、境さんに買おう。」と言って、修一郎のためにお饅頭と最中のセットを買ってくれた。びっくりした。いつも親切だなぁと思った。

大満足で駐車場に向かう。

「予定変更したし、これから山つきの新米買いに行こう!」と、ごはんさんが言った。

「えー、今日8日だし、まだなんじゃないの?」と、私。

「まだだったら、また今度来よう。」と、ごはんさん。

「うん、そうだね、あの道きもちいいしね。」と、私。

去年から山つきの新米を楽しみにしていた私たちなのだ。

きれいな空気。山の中腹なので気圧のちがいで耳がキーンとなる。ゴクリと唾を飲み込む。

誰もいらっしゃらなかったので帰ろうとしていると、いつもの優しい女性が走ってきた。そして、満面の笑みで

「新米できましたよ。」と言ってくれた。

「やったー!」と、ふたりで喜ぶ。

こういうとき、ごはんさんの勘はいつも当たる。

「お米まだだったとしても、あの人たちに会えるだけでうれしいよね。」と、ごはんさん。

「うん、優しさがあふれてるよね。」と、私。

豊かなきもちを乗せて車は走る。

道中、むくむくした穴熊がいた。まだ小さい。しっぽがふくらんでとても可愛い。

バンビの細道へ入る。艶やかで大きなシダがたっぷり茂っている。ため息が出るほど美しい。木漏れ日がゆらゆら揺れている。おとぎ話の中みたい。

こもれびの森に寄る。今日予定していた用事をする時間はなかったので、荷物を下ろしたり積んだりして帰路に着く。

途中で何台もバイクとすれちがった。

「昨日も楽しかったね。バイクいっぱい乗ったね。」と、話す。

昨日、天ぷら屋さんへ行くときは小さなバイクで行った。そして、こもれびの森へ行くときには大きなバイクに乗り換えて行ったのだ。どちらも楽しかった。

いつものお店に寄る。
今日も夕焼けが真っ赤に輝いていた。空は大好きなピンク色。ごはんさんが恒星と惑星の話をしてくれておもしろかったが、ちょっと難しかったので覚えていない。

家に帰り着く。
いろいろな荷物をたくさん下ろさなければいけなかった。ごはんさんが重い荷物を運んでくれた。ありがたいなぁ。

修一郎が起きていた。
ごはんさんからのお土産を渡す。とても喜んだ。そして、「いろいろ連れて行ってもらえてよかったね。」と言ってくれた。

電話が入っていた。
Eさんからだ。あれこれお話をする。大事な話も切り出す。1時間経っていた。

夜、庭に出る。
星が ぴかぴか輝いていた。可愛くて手を振る。夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。

今日もいい一日だった。

2階の白蓮さんのお部屋
お部屋の窓から庭園を眺める
遊歩道を歩けるようになっている
応接室
食堂かな
随所に金箔が使われていた。
蔵のような中にお雛様
茶道具かな。
芝生がいきいきと輝いていた。

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