子供みたいに楽しそうだった
12月30日(月)
朝、目が覚める。
久しぶりに鳩の声が聞こえる。
ぽろっぽー、ぽろっぽー。
はぁ〜、いい声。うっとり。
森の中で眠っているみたい。
ファンヒーターのスイッチを入れて
むくりと起き上がる。
玄関の戸を開けて朝のぜんぶに
「おはよう!」と、あいさつをする。
ウーちゃんとルーちゃんの水槽の水を換える。
修一郎の食事をお弁当仕立てにして
ふたつ作っておく。
絵本の作画をする。
午後、ごはんさんと話す。
今日の こもれびの森での仕事を確認する。
着替えるのが面倒くさくて
家着のまま行こうとする。
よく見ると、ピンク色の上着が うす汚れている。
乙女として うす汚れた上着で
行くわけにはいかない。
着替える。
全身白の服。に長靴。
ごはんさんのところへ行くと、
「みるさん、またその汚れが目立つ服を…。」
と、ごはんさんが おもしろそうに言った。
以前、こもれびの森での行事のときに
白いニットワンピースを着ていた。
みんなが心配してくれるくらい
背中と肩がすごく汚れた。
でも、あまり気にする方ではないので
汚れは落ちていなけれど着ている。
また着替えて
こもれびの森へ しゅっぱーつ!
途中でスイートポテトとゆで卵を買ってくれる。
車の中で もぐもぐ食べる。ピクニックきぶん。
こもれびの森に到着。
サザンカがたっぷり花をつけていた。
うっとり眺める。
屋内で こつこつ年明けの準備をする。
ごはんさんは外仕事をしている。
中の仕事が終わり外に出る。
ごはんさんが ふかふかの絨毯みたいな
枯れ葉を集めている。すごい量だ。
軽トラの荷台に乗せて何度も往復している。
そして、枯れ葉を燃やしてゆく。
ゆらゆらと炎が踊っている。きれい。暖かい。
いつ見ても火は生きているように見える。
ごはんさんが往復している間、
私は火の番をする。
「火が弱くなったら、
こうすると火が強くなるよ。」
と言って あれこれやって見せてくれた。
やってみる。すごく楽しい。夢中になる。
ご近所の Fさんがやってきた。
「アルミホイルに包んで
芋入れとったら焼き芋になるよ。」
と言って笑った。
「ここで焼いたら おいしそう〜。」
と言って、ほくほくの焼き芋を想像する。
ごはんさんと Fさんといっしょに
こもれびの森の奥の方へ行ってみる。
冒険気分で ときどき ごはんさんと散歩する道。
そこはとても美しい。
湿り気のある地面には びっしりと
色鮮やかな苔が生えている。
大きく つやつやしたシダが生き生きしている。
まっすぐ伸びる高い木々。
こもれび、せせらぎ、鹿の気配。
おとぎ話の世界そのもの。
この場所に足を踏み入れると
どこか遠くに来た きぶんになる。
苔とシダを褒めちぎりながら進む。
Fさんが帰ったあと、
ごはんさんが軽トラを乗り回して遊んでいる。
軽トラに乗って敷地の奥の方まで
ビューっと走る。
私の前を通り過ぎるとき、
すごく楽しそうな笑顔でこっちを見る。
奥の方まで行ったらUターンして戻ってくる。
それを繰り返している。
子供みたいに楽しそうで、
私も ゆかいになって ずっとゲラゲラ笑っていた。
何往復かして車を降りた。
「ワイパー動かして
手振ってるつもりだったんだけど。」
と、ごはんさんが言った。
そうだったんだ。
それを聞いて、またゲラゲラ笑った。
全然気がつかなかった。
夕方になったので帰ることにする。
いつものお店に寄ってお買い物。
果物をたくさん買う。
駐車場から見た空がとてもきれいだった。
濃いグレーに鮮やかなオレンジ色が
どきりとするような組み合わせだった。
「星がひとつだけ出てる。」
と、ごはんさんが言った。
大きな星が ひとつ ぴかりと輝いていた。
家に帰り着く。
ごはんさんが ずーっと空を見上げている。
ものすごく静かだ。
「いま、何か不思議なものがあった。
光って、動いて、いま消えた。」
と言った。
「UFO?」
と、聞いてみた。
「分からない。」
と、空を見上げたまま言った。
空は暗いけれど雲がはっきり見える。
「飛行機が飛んでる。」
ごはんさんが言った。
2機飛んでいた。ぴかぴかしてきれいだった。
年末だから帰省する人たちが
たくさん乗っているのかな。と思っていると、
「あの星すごい。」
と、ごはんさん。
低い位置にカナリア色に大きく輝く星が見えた。
星じゃないみたいに見える。と思っていると、
「星なのかな。動いているように見える。」
と、ごはんさんが言った。
本当に動いているように見えた。
イルミネーションの輝きを見て
「ピカピカ!」
と、ふたりでピカチュウの真似をする。
玄関の戸を開ける前に
夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。
これから眠くなるまで絵本の作画をしよう。
今日もいい一日だった。