おとぎ話の中みたい
12月22日(金)
朝、目が覚める。「雪、降ってるかな。」と、思う。むくりと起きあがる。
玄関の引き戸を開ける。雪が降っていた。白くてまるい粒のような雪だった。わくわくする。
カカオにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげて水を換える。
ウーちゃんとルーちゃんを眺めながら「可愛い〜可愛い〜。」と連発していると、いつの間にかカカオが足元で毛繕いをしている。はっとして、
「カカオも可愛いよ〜。」と言って抱きあげる。
郵便を出しに行く。
小さくてしっかりした雪が舞っている。雪の子供たちみたい。きれい。
ポストの近くにある池の水面がびっくりするほど輝いている。雲の間から天使の梯子が降りてきている。青空が見えていて雪も降っている。不思議な天気。
石屋さんが寒そうに事務所から出てきた。
「寒いっすね〜。」と、石屋さん。
「さむ〜い。」と、私。
風が ぴゅうぴゅう吹いてきて顔が冷たいので後ろ向きになって歩く。ときどき、振り返る。人も車もいない。後ろ向きで家まで帰る。帰る途中、レモンさんのお家の大きなスモークツリーの葉がほとんど落ちていた。冬なんだな。
クローバー畑とりんごの木に雪がうすく積もっている。すごくきれい。おとぎの国みたい。7人の小人さんたちが「ハイホーハイホー♪」と、歌いながら出てきそうだ。りんごの木のまわりを ぐるぐるまわっているのが見えるぞ。心の中で。
家に入ると暖かくてとける。
さつまいもを ふたつオーブンに入れる。じっくり焼いているうちに、ますます部屋は暖かくなる。
午後、コープさんがやってくる。
「寒いですね〜。この辺、もっと雪が積もってるかと思っていました。」と、Nさんが荷物を手渡してくれながら言った。
「うん、朝、ちょっと積もっただけだった。きれいだったよ。」と、荷物を受け取りながら、私が言う。
「あ、マーガレット。」
そうだ、ピンク色のマーガレットの苗を頼んでいたんだ。まだ花は咲いていないけれど、ときめく。
新しい冷蔵庫に食材を入れてゆく。
次はグリーンコープさんの元気カーがやってきた。買い物かごを持って、てくてく歩いてゆく。今日が今年最後の元気カー。卵を多めに買っておこうと思っている。
はなおさんが手を振っている。
私も手を振る。
「雪で来れんかったらどうしようかと思ってましたよ〜。」と、はなおさん。
「うん、来てもらえてよかった〜。」と、私。
Uさんが来ていない。
「Uさん、来てないですね。」と、はなおさんに言う。
「そうなんですよ。今日が最後って先週言ったんですけど。お刺身と、まる天と、ごぼ天、持って来てるんですけどね。」と、はなおさん。
「おこたで眠っているかもしれないから、私、持って行きます。」と言う。
「お願いします。その間に、僕、さかいさんちの玄関にこの荷物置いておきます。」と言って、私の買い物かごをふたつ下げて はなおさんが言った。
Uさんのお家に てくてく歩いてゆく。
ピンポーン。
誰も出てこない。もう一度鳴らす。
ピンポーン。
「は〜い。」Uさんの声だ。
「グリーンコープで〜す。」と言ってお刺身を渡す。
「あっ!」と、びっくりした顔のUさん。
どうやら先週で終わりだと勘違いしていたみたい。お刺身と、まる天と、ごぼ天を渡すととても喜んでくれた。そして、みかんをひとつくれた。
てくてく歩いて戻ると、はなおさんも車に戻っていた。
「りんごの木のイルミネーション、きれいですね〜。」と、はなおさん。
「ねぇ〜、ごはんさんのアイデアなんですよ〜、ライトもくれたんです。」と、私。
「ごはんさんのとこからなんでも出て来ますね〜。」と、はなおさん。
「うん。ドラちゃんのポッケと呼んでいるのだ。」と、私。
そして、「良いお年を!」と言って帰る。
ごはんさんのお庭で、ごはんさんと多肉植物の おぼろ月を見る。「なんで、おぼろ月って言うんだろうね。」と話す。ふっくらした葉がバラの花びらのように重なり広がっている。可愛い。
ごはんさんのお庭にある桶にメダカがたくさんいる。表面にうすく氷が張っていた。メダカたちは元気だった。
家に戻り、3月のイベント用の素材を準備する。
電話が鳴った。
まちがい電話だった。それが、最近 ごはんさんと話題にしていたところからだったので、ちょっとびっくりした。
電話が鳴った。
印刷会社のNさんからだった。今からカレンダーを持ってあいさつに来たいということ。
Nさんには絵本の印刷で毎年お世話になっている。年末になると萩焼の写真が美しい大きなカレンダーを届けてくれる。
しばらくしてNさんがやって来た。1年ぶり。
「イルミネーション、きれいですね。」と、Nさんが言った。
みんな、りんごイルミネーションに気がついて喜んでくれる。ごはんさんのアイデアで、ごはんさんがくれたリンゴの木とライトだ。本当に、遊び心があって人を喜ばせることを思いつく人だ。
いろいろおしゃべり。
Nさんがお仕事も持って来てくれていた。でも、来年の6月までスケジュールが埋まっているので引き受けるのは難しいかなと言う。
帰りにいっしょにクローバー畑を見る。
「あれ、りんごの木なんですよ。」と言うと、Nさんがびっくりしていた。ツリーの飾りを置いているのかと思ったそうだ。
「1年ぶりに来たら、すごく、スッキリしてるな〜って思ったんですけど。ん?あれ?もしかして柵がない…?」と、Nさん。
「お隣のごはんさんがブロックの塀をハンマーひとつで壊してくれて、柵も外してくれたんですよ。」と言うと、とてもびっくりしていた。
そして、その同じ人がりんごの木とイルミネーションもくれたと話すと、そのギャップに ますますびっくりしていた。役場のNさんたちもびっくりしていた。
ご近所の方にもイルミネーションを褒めてもらったとき、「ごはんさんがくれたんです。」と言うと、みんな驚く。ごはんさんとリンゴの木とイルミネーションが結びつかない。ということだろうか。
「良いお年を!」と言って、Nさんが帰って行った。
両親と電話で話す。久しぶりに長電話をした。楽しかった。
夕食の支度をする。
夕食後、カカオを膝に乗せてホットミルクを飲んでいると、修一郎が起きてきた。修一郎の分の夕食の仕上げをする。「おいしい。」と言って食べている。よかった。
夜、庭に出る。
空には一面の雲の波。隙間から瞬く星たちの可愛らしさ。クローバー畑には青い星たち。毎日ちゃんと夜が来て朝が来る。それだけで幸せだ。夜のぜんぶに「おやすみ。」を言う。
カカオはいつもの椅子の上。から、私の隣にあるプリンターの上に移動した。
今日もいい一日だった。
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