がんばった ごほうびみたい
11月14日(木)
昨晩、真夜中にシエンタが気になり懐中電灯を照らして庭に出た。たっぷりの夜露がついていた。二度塗りしたボンネットに灯りをかざしてみた。
あぁっ!
乾ききっていなかった塗料の一部が夜露で溶けて涙のように流れていた。くらっ。
ちょっと触ってみた。指にペンキがついた。Oh…
明日サンドペーパーでゴシゴシしてまた塗ろう。と、しょんぼりして夜空を見上げた。
すると、オリオン座がものすごく美しく輝いていた。星団もはっきりと見えた。キラキラ輝いていた。すべての星がキラキラ輝いていた。きれいできれいで胸がふるえた。
こんなに美しい星空を見て、しょんぼりできるわけがない。あっという間に幸せなきもちになった。
朝、いつもよりアラームを早めにセットしておいた。むくりと起き上がる。
玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。シエンタを見る。
あれ?なんだか色がちがう。黒ごま抹茶ムースじゃない。もっと淡い色になっている。私のお気に入りのペットボトルホルダーと同じような色だ。
親切な小人さんたちが塗り替えてくれたんだろうか?
そうか、乾くと色が淡くなるんだ。
私が愛用している絵の具、アクリルガッシュもそうだ。わーい。ときめく。一気にやる気が出た。
中に入り、ウーちゃんとルーちゃんの水を換える。
食事の支度をする。
つなぎに着替えて庭に出る。
まず、三度目のボンネットを塗る。
Oさんがやってきた。
「がんばりよんね。色がいい。」と、言ってくれた。
もくもくと塗ってゆく。
ごはんさんがやってきた。
「オレ、この色いい色と思う。みるさん、がんばってる。上手に塗れてるよ。」と言ってくれた。うれしかった。
そして、マスキングテープを貼っていなくて、プラスチックやゴムの部分についているペンキをシンナーでゴシゴシ拭いてくれた。きれいになった。
「みるさん、ここマスキングした方がいい。」と、気づかなかったところを教えてくれた。
せっせ せっせと塗ってゆく。ふと気がつくと、いつの間にか台を置いてくれていた。ありがたいなぁ。
ごはんさんに夜露で塗料が流れた話をする。
「オレのカーポートに入れるといいよ。」と言ってくれた。
それで夜露が防げるんだ!
あぁ、本当に助かるなぁ。
そして、ごはんさんが驚くものを見せてくれた。それはなんと、レーザープロジェクターライトというものだった。
ごはんさんが電源コードを入れてクローバー畑に ぷすっとさした。ごはんさんのお庭に置いてあるクリーム色の倉庫に向けて。
ライトのまわりを手で覆って暗くすると、倉庫にきれいな光の模様が現れた。くるくる回っている。プロジェクションマッピングだ!
とてもきれい。妖精たちがくるくる踊っているようだ。
「夜だともっときれいに見えるよ。」と、ごはんさんが言った。
暗くなると自動で点灯するらしい。夜になるのが楽しみだ。
修一郎の食事をお弁当仕立てにしておく。
もくもくと続きを塗る。
Oさんがやってきた。数時間置きに様子を見にきてくれる。
昨日塗り忘れていたバックドアも含めてすべて二度塗りできた。ボンネットを見る。ちょっとムラがある。もう一度塗る。
完了!
ふうっと大きく息をつく。
とは言っても、まだ屋根とミラーが残っている。屋根とミラーは来週クリーム色で塗る予定。
Nさんがやってきた。
「すごいね〜!よう塗っとうやん。いつから乗れると?」Nさんが にこにこしながら言った。
「明日から乗れます。屋根とミラーは塗っていないけど。」と、私。
「明日からもう乗れるん!?そうよね〜屋根塗ってなくても乗れるよね〜。」笑いながらNさんが言った。
「はい、塗ってないだけだから。」と言ってふたりで笑った。
きゅうりさんが通りかかった。
「色がいい。優しい色やね。」と言ってくれた。
マスキングテープを慎重に剥がしてゆく。塗料とくっついて固まっているところはカッターで切って剥がす。数ミリの塗り残しを普段使っている極細の筆で塗ってゆく。
あっという間に夕方の4時半だ。焦るきもちを抑えながら慎重に剥がしてゆく。
今日中にマスキングテープをぜんぶ剥がして、極細筆でトヨタマークのエンブレムの中を塗りたい。
ほとんど作業が終わったとき、Oさんがやってきた。車のまわりをぐるりと歩き、
「後ろもバッチリや!エンブレムの中もよう塗っちょう。」と、大きな声で言った。そして、
「ほんと ようがんばった。ようでけた。ムラもない。」と、言ってくれた。うれしかった。そして、
「今日は夜露や雨に濡らさんようにせなあかん。」と、真剣な顔で言った。
「ビニールシートかなんか…。」と、Oさんが考え込んだので、
「ごはんさんがカーポートに入れていいって言ってくれたんです。」と、言った。
「それがいい、それがいい。さすが ごはんさんや。ごはんさんのカーポートに入れてもらい。」と、Oさんが大きくうなずきながら言った。
そして、迎えにきたクロちゃんと帰って行った。
ドアハンドルのマスキングを剥がすと、きらりと光る流線型のハンドルが顔を見せた。くすんだミント色のボディと銀色のハンドル。その様子を見て思った。わが家の冷蔵庫にそっくりだ。
ごはんさんのカーポートに入れさせてもらう。
戻ると、あのレーザーライトが点灯した。すごいタイミング。ごはんさんの倉庫や家にプロジェクションマッピングされている。すごいすごい!すごくきれい!
なんだか、がんばったご褒美をもらったみたい。「おめでとう〜!」と言ってくれているようだ。まだ屋根とミラーが残っているけれど。
じっと眺めていると、
「わぁ!びっくりした!」と、声がした。振り返るとバナナさんだった。
「それ、なん?」と、バナナさん。
「ごはんさんがつけてくれたの。すごくきれいよね。夜になるともっときれいに見えるって。」と、私。
「うん、きれいやね。夜が楽しみやね。」と、バナナさんが言った。
「車、どうしたん?」と、バナナさん。みんなが車を気にしてくれる。
「昨晩、夜露で塗料が流れたから、ごはんさんのカーポートに入れさせてもらったの。そうだ、乾くとちょっと色が淡くなったよ。」と、私。
「よかったね!もう終わったん?」と、バナナさん。
「あと屋根とミラーだけ。そこは来週クリーム色で塗るの。」と、私。
「ツートン!かっこいいやん。」と、バナナさんが朗らかに笑った。
夜、イルミネーションを見ようと庭に出た。
すごい!とってもきれい!ごはんさんの 2階建てのお家と倉庫、きゅうりさんの大きな木々、クローバー畑で、色とりどりの光が踊っている。とてもファンタジックだ。蛍とか花火を思い出す。うっとりと眺める。
お庭でこんなに素敵な光のダンスを見れるなんて。最高。ありがとう。
もうすぐ まんまるになる きれいなお月さまも「よかったね」と言ってくれているみたい。
夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。
今日もいい一日だった。
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