おっさんだけど、仕事辞めて北海道でチャリ旅するよ\(^o^)/ Vol. 13 辟易
2024 0711 Thu
ほんの数年前、山梨県某所。
久しぶりに原点に戻り、地図とにらめっこして釣りができそうな渓を探していたところ、良さそうな渓を見つけました。わたしの住む東京の隣にある山梨県ですから、たぶん行ったことがあるはずですが、思い出せません。ネットで調べることもせず、釣り道具を積んでバイクに跨りました。渓流釣りを始めた頃、こうやって地図で適当に調べて、釣りができる渓を開拓していたのです。
その川沿いの道を走り始めてから、すぐに気付きました。
“ああ、これなんかとてつもない規模の公共工事やっとるな…”
たまに走るダンプ以外ほとんどクルマ通りのない道路に、500mおきくらいに立っているガードマン。片側通行とかそういうこともなく、危険などあるはずないにもかかわらず、です。しかも、なんだったら不必要に丁寧なお辞儀までするのです。上流の工事で灰色がかった流れに変貌してしまった川。魚など望むべくもありませんが、好奇心で終点までバイクを走らせました。そして、ガードマンのおっちゃんに尋ねました。はたして答えは、
「リニアの工事です」
苫小牧港から上陸。そこから十勝方面に山道を移動している途中で見つけた、それなりの規模の川。その近くにある、格安でサイコーのキャンプ場にテントを張ることができたわたしは、興がのったついでにその川で竿を振ることにしました。
朝6時前に起床。準備を済ませ、7時前に出発。快調に飛ばし、40分後には林道に突入しました。と、後ろから迫るプロボックスとハイエース。工事関係の車両です。
“そういうことね…”
林道から見下ろすと、広い川べりに大型バックホーが数台。砂防ダムの工事でしょうか。
“まあまあまあまあ…”
舗装こそされていないものの、きちんと整備された林道。川床が沈み、川と山の境界線が禿げ上がっている、荒れぎみの川。ガタゴトとチャリを走らせながら、わたしは嘆息しました。
林道を走ること30分。勾配のないだだ瀬が続く中、ようやくポイントを見つけたわたしは、入渓することにしました。といっても、川は林道のすぐ隣。難しいことはなにもありません。
8時半過ぎ、いよいよ釣り開始です。なんの気なしにルアーを淵の一番奥に放り、そして引っ張ってくると…。なんと! いきなりアタリがあるではありませんか! しかも足許までルアーを追っかけてきます。これで目の色が変わりました。
“この渓、釣れる!”
結局13時過ぎまで釣りを続け、メマトイ(コバエの一種)が顔の周りに200匹くらい付きまといだしたので、帰ることにしました。釣果は、そこそこ爆釣。オショロコマがいくらでも釣れましたし、尺イワナを釣ることもできました。
あまりに釣れるので、次の日もそのさらに上流で釣りをしました。昨日と同じくらいの13時過ぎに、同じように大量のメマトイにつきまとわれ、退散しました。メマトイは時間で活性化するのでしょうか、それとも気温でしょうか。
ともあれ、釣果は昨日と同じくか、それ以上に上々。充分に釣りを楽しみましたが、しかしながら、心の奥底で、わたしは冷静でした。
“この川は、決してそこまで豊かな川ではない。ただ単に、釣り人がいないから釣れているだけだ”
通る人などほとんど居ないにもかかわらず、きちんと整備された林道。渓にいくつも転がっている橋梁の残骸。抉られ低くなった川床。結構な頻度で発生している山崩れ。人の手が入りすぎているのです。
最終の民家から1時間チャリを漕いだ場所にある古びて崩れかけた砂防ダム。渓を横切る、真新しく立派な橋。どこまでも続く、整備された林道。どれもこれも、自腹を切ってまでする必要は絶対にない工事です。じゃあなぜ工事をするのか。カネが出るからですよね、公共のカネが。
別にわたしはナチュラリストではありませんし、理想主義者でもありません。政治家を目の敵にする気はありませんし、かといって政治に期待することもありません。でも、一つ言いたい。
「もっと別のことにカネ使えや」
本当にカネを必要としているモノ、コト、ヒトが、有るはずですし居るはずです。道路を作るのも結構、トンネルを掘るのも結構、川を整備するのも結構。諸々、なにをしてもらっても結構ですが、じゃあそれって、ホントに優先順位の上位に来るものなの? ってハナシなんですねよ。
わたしが釣りをした川の名は、“豊漁の川” を意味するアイヌ語らしいです。つい30年前までは、川面が黒くなるほどサカナが泳いでいたというこの川。30年前になにがあったのでしょうか。もしかしたら、渓に散らばっていた橋梁の残骸が、そしてなにより朽ちかけた堰堤が、その鍵を握っているのかもしれません。