おっさんだけど、仕事辞めてアジアでブラブラするよ\(^o^)/ Vol, 41 辛拉麺
インド Leh 12日目
2023.0807 Mon
いまから10余年前、31歳になった年の夏、陽光きらめく北海道でわたしはひたすらにペダルを踏んでいました。
その3年目くらいに購入したクロスバイクにすっかりハマったわたし。
購入初日にはママチャリを駆る女子高生にオーバーテイクを許すほどの体たらくでしたが、その悔しさをばねにそれから脚力の強化に努めます。そして北海道行きの前年には、東京から新潟の日本海を一週間かけて往復するくらいまでにはチャリツーリングを楽しめるようになりました。
そして迎えた北海道ツーリング。
あれは旭川あたりだったでしょうか。この旅で初めて、ライダーハウスに泊まることにしました。
人見知りなわたしはテント泊ばかりで、ライダーやチャリダーが集まるライダーハウスは敬遠していました。しかし村営のライダーハウスが無料かつ無人だったこともあり、思い切って利用することにしたのです。
午後5時過ぎ、わたしはライダーハウスの扉を開きました。
と、中には先客が一人。笑顔が思いの他あどけない、20歳になったばかりの青年が地図を広げていました。
ひとまず挨拶を交わし、そして併設の銭湯に行ったわたし。しこたまかいた汗を最高の湯船で流し、そしてビールを2缶買ってハウスに戻ると、青年は食事をしていました。
肉野菜炒めチャーハンのような料理をコッヘルに盛り、それをバーナーで温め直して喰っていました。肉野菜炒めはたぶんお昼の残り物でしょう。お世辞にも上品といえない料理で、有り体に言うと、残飯のような見た目でした。
わたしがビールを手渡すと、青年は本当に嬉しそうに礼を言い、本当に美味しそうにビールを飲み干しました。
そしてわたしたちは、これまでとこれからの旅のこと、お互いの自転車や装備などなどについて語り合いました。
青年は旨そうにチャーハンを平らげ、
「自転車漕いでたら、めちゃくちゃ飯が旨くなりますよね!」
と言いました。一も二もなくわたしは完全に同意しました。
一回り年下の彼の若ささが眩しく、最高に素敵だと思いました。
昨日、日本人3人と韓国人3人の6人パーティーで、パンゴンツォに向かいました。
パンゴンツォとはインドと中国の国境にある塩湖で、その抜群の透明度と周囲の環境の素晴らしさ、それにインド映画『きっと、うまくいく』のロケ地にも選ばれたことから人気が爆発した、ラダック地方屈指の観光地です。
相変わらず無知で無計画なわたしは直前までパンゴンツォに行く気がなかったのですが、しかしパンゴンツォの写真を見た途端に行きたくて行きたくて仕方がなくなり、同じホステルの人たちを誘って出掛けるに至ったわけです。
そして午後2時過ぎに到着。
日本人3人は適当な湖畔のホステルにチェックインしたのですが、韓国人の若者3人組は違いました。やたらと荷物がでっかいなと思っていたら、彼らはテントと寝袋を持参していたのです。
たまたま通りがかったインド人グループも交えた湖畔でのグループ撮影、そしておあつらえ向きの岩に乗っかった個人撮影も終え、わたしは独り、散歩&メディテーションに向かいました。1時間弱ほど歩き、そして温かい砂浜に横たわり“昼寝”という名のメディテーションを終えたわたしは、大自然を堪能しつつホステルへと戻ります。
と、撮影会場、つまり一番景色の良い場所にテントが二つ見えます。例の若者3人組です。
近づいていくと、彼らの一人、日本語も堪能なウィーちゃんが声を掛けてきました。
「ラーメンできてますよ!」
そう、彼らはわざわざバーナーをレンタルして、湖畔で辛ラーメンを作っていたのです。
最初その計画を聞いたとき、わたしはネタかと思っていました。
“韓国人=辛ラーメン”という日本人の固定概念を逆手に取ったジョーク。
でも彼らはマジでした。
少し温くなった辛ラーメンを飛びっきりの笑顔で手渡してくれるウィーちゃん。
動画が回る中、一口食べたわたしは芝居がかった調子でこう言いました。
「This is a tasty ra-men!」 ※1
そして、もう一口。…最後はかき込んでいました。
待て待て待て…! おいおい、ちょっといくらなんでも旨すぎないか?
辛ラーメンを初めて食べたのですが、めちゃくちゃに、そして異常に旨いのです。確かに最高のロケーションです。腹も減っています。
しかし、…。それにしても…。
「これ、なんか入れた?」
ウィーちゃんは言下に否定しました。
「なんも入れてないですよ」
そして、少し誇らしげにこう付け加えました。
「韓国人が本気で作ったら、辛ラーメンはホントに旨くなるんですよ」
嘘つけ! 今度はわたしが言下に否定しました。
韓国人と辛ラーメンの関係性。ソウルフードの名に相応しい存在。そういうことはわたしにはわかりません。
わたしにわかるのは、ウィーちゃん、セージ、イッちゃんの3人組がスゲー良い奴なこと、全力で彼らが旅を楽しんでいること、そしてパンゴンツォで喰った辛ラーメンがめちゃくちゃに旨かったこと、その3つです。
夕方近くになったとき、狭いテントの中で話している彼らを見つけ、わたしはやっぱり嬉しくなりました。わたしを見つけた彼らは、その狭いテントにわたしを招いてくれました。
そして、この旅をスタートさせてから初めてわたしは泥酔し、夕食込みのホステルで夕食を食べずに寝続けるという失態を犯したのでした。
追伸
パンゴンツォから戻った翌日、イッちゃんとわたしはLehの街を離れました。
朝7時半にホステルを出たのですが、見送りをしてくれたナナさんが泣いてくれました。いよいよ出発のとき、ふとナナさんを見ると、静かに涙を流していました。予想外の出来事に、わたしの胸も熱くなり、言葉が出なくなりました。
あれですね、泣いてくれるって、すごい嬉しいもんですね、マジで。
※1. ちなみにこれは、映画『Pulp Fiction』のパロディです。
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