徒然草:依存症者に厳しい大衆
よく芸能人が薬物に手を出すような事件があったときに、その復帰の是非をめぐる論争がメディアやSNSで巻き起こることがありますが、私はこれにはかなり違和感を持って見ています。
「芸能界は甘い」とかいう言葉が芸能界を批判する意味で使われたりしますが、私は甘くて良いんじゃないかって思うのです。社会復帰しやすい懐の深さを社会が見せることは良いことだと思うのです。
依存症者は往々にして孤独です。孤独だから依存するのか、依存して孤独になっていくのか、おそらくその相乗効果でどんどん孤独になっていき、依存から抜け出しにくくなります。そのような人に対して、「あなたは大きな失敗をしたのでもうこの業界で仕事をしないでください」ということに何の意味があるのか、よく分かりません。
今でも覚えているのですが、何年か前に沢尻エリカさんの薬物に関するニュースが話題になった時期があると思うのですが、そのときにサンデージャポンで杉村太蔵さんが「芸能界に復帰させるのでなく、ハローワークに行って」といった内容を発言していました。この発言はあきれるほど的外れです。
仮に沢尻エリカさんがハローワークに行って、採用されるのか?不馴れな業種を一からはじめるよりも、今まで手に職付けてやってきたことで社会復帰を目指すほうがやりやすいのではないかと思うのです。
まぁ、確かに違法薬物は犯罪になってしまうので、法治国家の日本においては当然ながら罪を償わなければなりません。ただし、依存症だった場合、刑罰を与えることで依存症が改善する訳ではありません。そういう側面とセットで治療や社会復帰の方法についても考えていかなければなりません。彼らが社会復帰できないように追い詰めてしまっては結局薬物に戻っていくことになります。それは追い詰めた側の責任放棄ではないでしょうか。
違法薬物の場合、犯罪と障害がごっちゃになってしまうのでわかりにくくなっているっていうのもあると思います。他にもクレプトマニアとかもそうですね。逆にアルコール依存症やギャンブル依存症だとそれ自体は犯罪にはあたらないから少しだけマイルドに聞こえますもんね。でも根っこのところは同じなのではと思っています。何かきっかけがあって、依存先が違法薬物だったかアルコールだったかの違いで、違法薬物の場合捕まっちゃうねというだけの話かなと。だから個人的には依存症のなかで優劣はあまり付けてないです。たまたま刑法に触れるかどうかの違いでしかないというか。
日本人と一括りにするのもどうかと思うのですが、たぶん連面と続く仏教とか儒教的な思想が根強いのだと思っていて、「因果応報」とか「自業自得」とかいう四字熟語が大体みんな好きじゃないですか。その点自分にも厳しい民族だと思うのですが、他人にも厳しく、その他人への厳しさが殊犯罪となると鬼の首を取ったかのようにボコボコにするような発展の仕方をするところがあると思うんですよね。
よく調べた訳じゃないですけど、その点、キリスト教圏だと少し失敗に対して寛容なところがある気がするんですよね。元々原罪背負ってる不完全な生き物という設定でしょうし、寄付文化もあるくらいですしね。
しかし、果たして私たちは生きていて絶対に失敗しないと自信を持って言えますか。公明正大であり続けられると言えるでしょうか。きっと鬼の首を取っているような人たちは自信があるのだと思いますが、私は自信がないです。自信がないと言うか、たまたまだなと思う感覚があります。私はたまたま恵まれて育って、孤独ではなく、依存症になるまでの依存をしなくても生きてこられたけど、何かのボタンの掛け違いで依存症のドアを開けてしまう人生に突入する可能性はいつもあったように思うのです。これからもどうなるかわかりません。
例えば急に事故等で妻や子を失ったりしたらどうでしょう。何かに依存でもしてないとやってけないフェーズに突入するかもしれません。それでも自己を律することが社会的には求められるわけだけど、そんなに人間強くいられるでしょうか、私はやはり自信がありません。
犯罪は確かに許してはいけないですが、罪を償った者たちや治療が必要な人たちへの門戸は広く開かれているべきではないでしょうか。それが再犯を防ぐ道だと思います。
なので、よく再犯で逮捕される芸能人のニュースを見かけますが、それについて批判的な意見が出ると言うより、治療や社会復帰がうまく進められてないのだなと残念な気持ちになったりします。誰か近くに助けてくれる人がちゃんといるのかなとか気になったりします。
依存症だけでなく、不祥事とかもそうなんだけど、もう少し失敗した人に対して寛容な社会になったら住みやすくなるのになぁと思います。だってみんな大小失敗して生きてきたし、これからも大いに失敗して生きていくのではないかと思っています。
今回みたいに普段思いついたこととか思っていたことを単発でまとめてアウトプットすることもあります。福祉業界が長いので福祉職からの視点での発言になると思います。それでは。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?