【こども・いのち】プロローグ
私は、小学生のとき、一冊の本に出会いました。
「電池が切れるまで」という詩集です。
病院には、病気のために入院して治療をしながら、学校に通う子どもたちがいます。
その「院内学級」というところで過ごす子どもたちが書いた詩を集めた一冊です。
小学4年生の女の子が書いた「命」という詩。
その詩を読んだ、同じ小学4年生の私は、心が震え、稲妻に打たれたような気分でした。限りあるいのちを精いっぱい生きている女の子が、自ら命を絶つひとのニュースをみて悲しい気持ちを表現して、「私は命が疲れたというまでせいいっぱい生きよう」という言葉を綴っていることに、自分自身の生き方、考え方を子どもながらに考えさせられました。
それから8年後、高校3年生の夏。
自分の進路、これからの生き方に迷っているときに一つの学問と出会いました。
「死生学」(=Thanatology)という学問です。
死をみつめて、生きることを学ぶ。
その学問を勉強したい。
そして、「いのちに向き合う子どもたちのために働く人になりたい」
小学4年生のときに出会った詩を思い出し、その夢をもって、私は大学に進学しました。
大学での恩師との出会い・素晴らしい学びがきっかけで、アメリカの大学院に進学し、
今は、小児医療の現場で、子どもたちのいのちに向き合う仕事をしています。
実は、この仕事についてからご縁があって、「電池が切れるまで」の舞台になった場所、「命」という詩が書かれた場所を訪れる機会がありました。
小学4年生のときの自分に会うことができたなら、
「あなたは『命』という詩に出会って、大人になってせいいっぱい生きているよ。」と伝えてあげたいです。
「命」以外にも、子どもたちの「生きたい」というたましいの叫び、
苦しい治療をしながらも「希望」をもってたくましく成長する心と身体を感じられる詩がたくさんあります。
子どもたちのいじめ、自殺の問題がこの本が発売された当時より取り上げられるようになった今。
また、コロナ禍で、生活が一変し、生きることの意味や目的を問われることが増えたかもしれません。
苦しみの中にいる子どもたち、そんな子どもたちに寄り添う大人たちに、生きることが苦しいとかんじている人たちに、
いのちある限り精いっぱい生きようよ、という力強いメッセージを届けてくれる一冊になると思います。
読んでくださった皆様の心にパワーが溢れますように。