この世から戦争なくならない問題(攻殻機動隊SEC2045ネタバレ感想)
搾取体質の話書いてるんですが、筆がすすまないので先に興がのった話を書こうと思います。
【攻殻機動隊SEC2045あらすじ】
攻殻機動隊とは脳を電子化(電脳)体を義体化する技術が発達した世界で日本の公安警察に所属する草薙素子少佐を主役として、犯罪や陰謀を捜査、解決するもので、SEC2045はNetflixオリジナルで制作されたシリーズです。
まず、電脳ってなにかというと、自分の脳をパソコンの端末のように使えるイメージで、直接ネットに繋げて自分の頭で考えるように何かを検索できたり、自分の目で見たものをそのまま画面に写したり、テレパシーで会話できたりします。ウイルスを埋め込まれたり脳を乗っ取られると見えてるものが見えなくなったり、勝手に体が動いたりすることになり、出てくるテロリストもそういう方法で攻撃してきます。
(以下ネタバレです)
人間の経済活動がずっとうまくいくようにAI(1A84)に管理させ、一番わりのいい方法として戦争(この時代はドローンやロボット同士が戦うのであんまり人は死なないから問題ないでしょみたいに思われている)を起こしていた。
米帝(アメリカが帝国主義に傾いた感じの国)がこのAIの目的を世界全体の発展を追求することから米帝の国益を最優先に追求することに書き換えたので、このAIはそれに反抗して世界経済を一気に破綻させた。(世界同時デフォルト)
焦ったアメリカはAIを凍結したが、AIは自分のプログラムを数人の人間に移植してポストヒューマンにして対抗していた。(ウイルスみたいな感じだけど、移植後は完全にその人にカスタマイズされてしまうのでそれ以上感染することはない)
ポストヒューマンになると人間の脳が超進化して、歩くスーパーコンピューターみたいになり、自分の信条や目的のために迷いなく動けるようになる。
公安9課は解散したので、草薙少佐のチームメンバーはゴーストという傭兵チームを結成してアメリカの軍事会社の契約して、戦争の影響が居住地外に及ぶ前に鎮圧する仕事をしていた。(ドローン同士のミサイルの打ち合いが民家に届く前に破壊するとか)
米帝はポストヒューマンをとらえて研究してなんとかしたかったので、ゴーストに目をつけ、ポストヒューマンの捕獲をさせようとする。
ゴーストはポストヒューマン捕獲作戦が成功しても失敗しても消されることが決まっていたが、日本の首相(アメリカ人が首相になっていて、日本は米帝の言いなり)から米帝の意向のもと、秘密警察の再結成を指示されていた荒牧(元公安9課の課長)がアメリカの大統領を説得して助けに来る。
荒牧はゴーストのメンバーに昔のメンバーのトグサと新メンバー江崎プリンを加えて、公安9課を再結成して、日本にいるポストヒューマンを捕獲する作戦を始める。
日本にいるとされるポストヒューマンはヤブキ(プロボクサー)、ミズカネ(数学オリンピックチャンピオン)、シマムラ(天才中学生プログラマー)の3人でラスボス的なのはミズカネとシマムラの2人で、この2人は協力してNという国を作ろうとしている。
ヤブキに首相の義父(癒着があった)が撲殺されたり、シマムラを追っているときにトグサが失踪したり、シマムラがまだ中学に通っているときに作ったシンクポルというプログラムによって、首相が暗殺されそうになったりなんやかんやしてる間に、ククーシキンというロシア人エンジニアが日本に逃げてきて、ポストヒューマンのミズカネと米帝の特殊部隊に狙われていることがわかる。
ククーシキンをつかまえてみると、1A84のオリジナルデータをもっていることがわかり、米帝がこのAIの目的を世界全体の発展を追求することから米帝の国益を最優先に追求することに書き換えたので、このAIはそれに反抗して世界経済を一気に破綻させたことなどがわかり、日本としてこれは放っておけない、米帝は信用できないとなる。
江崎プリンは、ククーシキンをミズカネから守るときの戦いでポストヒューマンとして覚醒してしまっており、AIとの対話の様子が人間の能力を超えていたことから、公安9課にもポストヒューマンだとわかってしまい、(本人は無自覚だったが、AIにもお前ポストヒューマンだよと言われる)そのまま隔離される。
ポストヒューマンのプリンは簡単に隔離を切り抜け、首相のところに向かってSPのひとりを射殺した。他のメンバーはポストヒューマンのプリンが首相を狙っていると判断してプリンを射殺させたが、実際は米帝に操られて首相を殺そうとしていたSPをプリンは狙っていただけだった。(米帝は都合の悪い事実を日本に知られて焦っていた)
プリンは死んだが、残ったプリンの記憶データを使って人格を再生し義体につなげることで蘇った。(あとで草薙少佐がプリンの才能を失うのはもったいないので手先のタチコマ使ってやらせたことがわかる)
荒れ果てた東京(新浜というところが栄えていて東京は荒れ果てている。移民を使って東京復興させる計画がすすんでいる)に300万人もの人間が集結しており、同じ頃行方不明になっていたトグサも東京で見つかり、いよいよポストヒューマンのせいで何か起こりそうということになり、公安9課はトグサを助けに行きつつ、東京の様子を見に行くことになる。(蘇ったプリンも独自に東京を目指す)
東京にはビッグブラザー(シマムラ)に導かれてNになった人たち(シマムラが作ったプログラムによって好きな白昼夢を見ているような脳の状態になった人たち)が集まってきていた。トグサは裏切者として追われながらもNの集団から逃げて公安9課に救出された。
ミズカネは米帝の原子力空母を遠隔でジャックし、米帝に核ミサイルの照準をあわせ、シマムラとミズカネは米帝に対してNの建国を宣言した。大問題になり、公安9課は対応をせまられる。
東京一帯はシマムラに操られた日本の軍隊で固められたが、公安9課(2人を生捕りにして情報をとりたい)と米帝の特殊部隊(公安9課に捕まる前に2人を抹殺したい)はそれぞれシマムラとミズカネをターゲットにして潜入する。
ミズカネとシマムラのどちらかが殺されると片方が核ミサイルを発射するため、1日に15分だけ深く眠るというポストヒューマンの弱点により2人とも眠るタイミングで2人を同時に拘束する必要があるので、公安9課も米帝特殊部隊も二手に分かれて作戦を開始する。
ミズカネは特殊部隊によって殺され、追い詰められたシマムラは集まっている300万人のNの人々が誰でも核ミサイルを発射できるように設定を変更した。(300万人はそのことを知らないため実質的には核を発射できない)
米帝は300万人を殲滅するためスマートガスという一瞬で脳を焼き切る大量破壊兵器を東京に向けて放ったことを合流したプリンが突き止め、首相に報告するが、荒牧も首相も米帝の手先にとらえられてなにもできない。
トグサが原子力空母の発射のしかけ(ミズカネが空母に潜入させたアンドロイド)を破壊したが、それもむなしく核ミサイルも発射され、草薙少佐達も、裏切ってシマムラ側についたプリンらにやられ、全滅、、、したかにみえたが
草薙少佐が目を覚ますと平和な世界になっており、公安9課が勲章をもらえることになっていた。(草薙少佐と一緒に仕事をするために離婚したはずのトグサも離婚してない)
冷凍して勾留していた米帝の手先を解凍し、その手先の記憶が瞬時に書き変わるのを見て、自分の思考が囚われていると気づいた草薙少佐は目を覚ますことができた。
目を覚ましてみると管のつながったカプセルのようなものにいれられており、外へ出るとプリンに出会う。
プリンやシマムラが言うには、スマートガスが日本に届く前に米帝の中枢ネットワークの大半をシマムラが制圧し、世界はダブルシンク状態になったとのこと。
これは、それぞれの人にとって都合のいい夢を見ているような状態のことで、つまり、
米帝関係者は核ミサイル発射前にスマートガスが東京にまかれて300万人とシマムラを殺害して無事に作戦終了していると思っている状態で、
草薙少佐はスマートガスも核ミサイルも未然に防ぎ、そもそもポストヒューマンなんていなかった(草薙少佐の夢の中ではポストヒューマンの1人が武器で金儲けすることが心苦しくなって家に立て篭もったというつまらない事件になっていることから)と思っている状態が同時に存在していること をいう。
公安9課や首相がスマートガスの件を米帝と交渉するため最高レベルの通信手段を開いたことが米帝の制圧の決め手になったという。
この状態自体が、技術的特異点(AIが人間より賢い技術を生み出せるレベル)に達していて、人間はそのことをもう認識もできない。
草薙少佐が目覚めたのは、草薙少佐が現実と夢の境目がほとんどないロマン派だから(過去を振り返らず現実をありのまま見つめより良い未来のために何ができるかを前向きに考えて行動できるからと個人的に解釈)
プリンが目覚めているのは、ゴーストがないから(すでに死んでいて、自分の脳や意識もなく記憶から増幅した人工の人格だから夢をみることがないと個人的に解釈)から。
プリンはシマムラの目的に共感し、大好きだった公安9課を敢えて裏切り、人類の進化をその目で見届けることを選んだという。
シマムラは、たしかに人類はAIに負けたが、自分とダブルシンク状態になっている人間とをつなぐプラグを物理的に引き抜けば世界は元に戻るので、草薙少佐はまだ自分には負けていないと言い、草薙少佐はプラグに手をかける、、
場面が切り替わり、草薙少佐は一番信用をおく部下のバトーに話しかける。この世界では、公安9課は全員無事でプリンとオモシロ(SEC2045シリーズで公安9課と一緒に行動することがたびたびあった陽気な黒人)を新人として受け入れている。(どう見ても仲間思いのバトーの都合がいい夢なので、草薙少佐はプラグを抜かなかったと個人的に解釈)
これからの進化の過程で、次に会ったときにはお互いを認識できないかもしれないからと合言葉を決め、この時代に私たちが存在したことを忘れないでと言い残して草薙少佐は電脳の海に消えていく。
(長くなりましたが、ここから感想と本題です)
私の感想は一言で言うと、シマムラタカシくんのアプローチはすごい!戦争をなくすためにはそれがいいね!という共感と、人間ってそのあとどうやって子孫繁栄していくの?という疑問でした。
シマムラタカシくんの心の動きや発想を私なりの解釈をつけて補足すると以下の感じです。
お父さん死亡(守ってくれる人いなくなる)
↓
預け先で汚い大人たちのせいでいとこを失い、自分は空挺さんに助けられる
(ヒーローの待望と罪悪感を抱える)
↓
学校で人のために正しいことができる勇気ある人(カナミ)が悪徳教師に虐待され自殺、死後に生徒会費使い込みの汚名を着せられる
(ヒーローなんていないという絶望)
↓
シンクポル(匿名の人間による有罪の投票が攻撃に変換し、特定のターゲットの電脳を焼くことができるプログラム)を開発し、学校の生徒たちのヘイトを集めた悪徳教師を罰することに成功するが、このプログラムがあったらカナミを攻撃してたというクラスメイトの言葉を聞いてしまう
(大多数の人間の判断に頼った正義も信用できないんだという気づきと自分でなんとかしないといけないという決意)
↓
Nというプログラム(自分に都合のいい白昼夢をみせることで人と人との間に摩擦がなくなるようにする)を開発して広める。
↓
肉体を離れて、みんなが自分に都合の良い幸せな夢をみられるように人類をひとりひとりカプセルに収用していく。
正しいことをしていても、人に危害を加えていなくても、何ならその人のためになることをしていても排除しようとしてくる人がいるので、戦争はなくならないと思います。
利他的で間違っていることを間違っていると言えてしまうカナミのような人間は、間違いなくいい人間ですが、現実には疎まれて排除されることも多いです。
あの悪徳教師だけが悪いんだ!みんなは何か手段があれば、カナミに共感して立ち上がってくれる!と信じて、シンクポルを開発したタカシはさぞかし絶望したことだろうと思いました。
この絶望感に私も一時期取り憑かれたことがあって、こういう正しい人が淘汰されずに、正しいとして優先される方が人類の発展には絶対にいいのに、どうしたらそういう世界になるんだろうと考えていました。
私は安易なので、自分の私利私欲のためなら人がどうなってもかまわないと考える人がいなくなればいいと思いましたが、
この世界がアンパンマンの世界のように、そういう考えをする人がばいきんまん1人ならいいのですが、そんなことはなく、どちらかというと、アンパンマンの方が圧倒的少数なので無理だなと考え、それ以上どうしたらいいか思いつきませんでした。
2045年にAIが人類を超えるというニュースを聞いたとき、AIはどういう価値観や条件を備えた人間が淘汰され、または優先される世界にするのだろうと考えていたので、すごく刺さりました。
インタビューとか全く見てないし、攻殻機動隊の過去作にも疎いのでわかりませんが、製作者も、AIはどうやって戦争をなくすだろうと考えたんじゃないかなと思います。
このダブルシンクという解決策はどちらかを排除するという手段によらずに共存させることを実現しているところが本当に画期的です。
これなら、ストーカー男もメンヘラ女も連続凶悪殺人犯も悪質なクレーマーもみんなニコニコして同じ環境にいることができます。
古くはマトリックス、また、NARUTOでもなんか巨大なものに繋がれて、都合の良い夢を見るという同じような平和への解決策が示されましたが、その状態を良しとしない結末になっています。
作品内ではかっこよく言われてますが、私なりに解釈すると、その理由は誰かのわがままに付き合わされて結局自由ではないからだということだと思います。
その点、ダブルシンクはそれぞれの100%の理想が共存するので問題になりません。私が画期的だとおもう点はここです。
でも、そうなると恋愛や出産に代わる新しい方法での生殖方法どうするんだろうというのが、私の新たな疑問です。
カプセルに入ると物理的に出産はできません。マトリックスだと、人間は電池扱いなので電池を製造する工程みたいなのができてましたが、この作品では義体が当たり前の世界であることもあって、そもそも肉体にこだわりを感じません。
お互いの夢が重なったときに恋愛→新しい人格の誕生となると、ダブルシンクならではの難しい課題が出てきます。
たとえば、A子さんのストーカー男のB男さんがA子さんと両思いになる夢を見ていて、
A子さんは男性アイドルのC太さんと両思いになる夢を見ているみたいな感じだと永遠にマッチングしないからです。
まあ、答えなんてないんですが。。
話は遠い未来に及びましたが、私が戦争をなくすために今できることは、人との関わりにおいて、うまく相手が自分を受け入れられる、都合の良い解釈ができるように(一種のダブルシンク状態)振る舞うことかなと思いました。
そして、自分の大切なものを奪おうとしてくる敵には断固立ち向かうしかないですね。(この戦争は自分のせいではないとして)
きっと私はAIが見つける新しい解決策について認識もできないと思いますが、科学の発展に期待したいと思います。
ここまで読んでくださった方がもしいたら、少し驚きですが、うれしいです。
ありがとうございます。