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待ってはならない間?

先日、プロのキャリア支援者向けに研修を担当させていただきました。
みなさんキャリア界隈の業務10年以上、部下を持って指導をしているベテラン。知識・経験ともに豊富でありながら、さらにテクニックを磨こうとする意欲にあふれた素晴らしい方々でした。

その際に、いくつか上がったテーマの1つ「間(沈黙)」について今日は書きたいと思います。

・クライアントが考えている最中に、ヒントを与えすぎない。
・言語化に苦しんでいるクライアントに、「考え方」を提供しつつ、待つ
・矢継ぎ早に質問攻めしない
・クライアントごとに異なる思考のペースに合わせて間を取る

などなど。
クライアントが黙ってしまうと、沈黙に耐えられず、つい聞く側が先に話し出してしまいがちです。しかし、適切な「待つ間」を守ることが大切です。どうしていきたいのか、今のモヤモヤの根幹はなんなのか、逃げずに自分と向き合うことで、将来を前向きに楽しめるようになります。
良い問いを投げかけ、セッションを成功させたいですね。

ここまでは一般的な話。

その上で「待ってはならない間」をずっと待ってしまっていないか、間(沈黙)の種類を理解してもらいたい、という話です。

「待つべき間」と「待ってはならない間」

一般的に「待つべき間」は、クライアントが思考を整理し、自己内省を深めるために必要な時間です。

【待つべき間】
・棚卸し:過去を思い出している時間
・整理:現在の状況を熟考し、理解を深めている時間
・設計:未来について考え、方向性を決めようとしている時間
・安堵:モヤモヤが整理され、じわじわと納得感を得ている時間。「じゃぁ次なんですけど」と矢継ぎ早に切り替えない。

冒頭の解説の通り、このような間では、クライアントの思考を邪魔しないようにじっくり待つことが大切です。

一方で、「待ってはならない間」もあります。
どういう時は待ってはならないか考えてください。

【待ってはならない間】
難問の沈黙
 ・質問の意図が伝わっていない。
 ・回答の仕方が分からない。
 ・必要な知識がなく、考えようがない。
→ 難しい問題はどんなに時間があっても回答できません。「やばいやばい、わからない、どうしよう」と焦る中、「どうですか?どう思いますか?」と迫り、ただ待ち続けると、この沈黙は圧迫に感じ、話は進展しません。上手く考えるためのヒントや、解説をしてから再度考えてもらいましょう。

◆不信の沈黙
 ・「また同じことを聞かれている」と感じている。
 ・「この質問は何につながるのか?」と疑問を抱いている。
→ 「上司がイヤなんです」「なんでですか?」「高い目標を求めるので」「高い目標がイヤなんですね?」「まぁ、上司との関係性がよければまだ良いんですけどね」「上司のどこがイヤなんですか?」「さっきも言いましたけど、目標ばかり確認してくるところです」など、質問が悪かったり、同じ質問を何回か続けてしまうことがあると信頼を損なう可能性があります。
転職をしたいのに、希望条件ではなく現職の話ばかりを聞かれる、などもクライアントはイライラしてしまいます。良い転職支援をするために現職の話を聞いているんだと思うので、その質問の意図を明確に伝えたり、正しい質問文を再設計する必要があります。

◆不安の沈黙
 ・「間違えたらどうしよう」と怖がっている。
 ・「これを言って馬鹿にされないかな」と不安がっている。
 ・「自分の悩みは、くだらないことかもしれない」と遠慮している。
→  回答に躊躇しているクライアントに「どう思いますか?」と投げかけ、ただ沈黙が続くと、余計に発言しにくくなります。正解/不正解はないので、何を言っても大丈夫であると心理的安全性を確保しましょう。

◆失望の沈黙
 ・コーチに対する信頼がなく、話す価値を感じていない。
 ・「話すだけ無駄」と思っている。
→クレームはもちろんのこと、クライアントの希望通りに結果が出なかったり、目標達成できない原因を相手においているクライアントは、何を聞いてもどれだけ受容しても、反発を招くことがあります。
「こちらはいかがですか?」と聞いて応答がない場合でも、沈黙は控えましょう。まずお詫びをして、必要に応じて今日の面談目的や進め方から練り直し、クライアントの要望に応えること。信頼関係構築に努めましょう。

◆話し終えた後の沈黙
 ・クライアントは短くても話し終えているのに、聞く側が「それで?」と待ち続けている。
→ 対話のリズムが崩れ、話しにくいと感じさせてしまいます。

これらの場合は、待つことをやめ、コーチのターンです。

でも、改めてお伝えすると、待つべき間(思い出し・熟慮など)だった場合は、このような解説を始めたり、ヒントを与えると、回答を誘導しかねないですし、堂々とできずにお詫びばかりでペコペコすると返って不審に思います。何よりも、クライアントの考える時間を奪ってしまうのでよろしくありません。

では、これがどちらの間なのかをどう判断しましょうか?
ネガティブな状態のときが多いので、「表情で判断する」と回答する人が多いのですが、普段から表情に変化が見えない人もいるので、表情だけでは見誤ることがあるので危険です。

どちらの沈黙か判断する方法

結論、相手に聞いてみる、ということです。
たとえば、以下のような質問を投げかけます。

・質問の意図は伝わっていますでしょうか?
・少し難しい質問でしたか? 今、どこで迷っていますか?
・もし踏み込みすぎていたら申し訳ありません。このテーマは話しにくいですか?
・この質問について、どんな感情が湧いていますか?


こうした問いかけをすることで、クライアントの思考プロセスを見極め、今後の流れを見立てることができ、適切なキャリア支援が可能となります。
意外にシンプルなのですが、これができずに無駄に待ち続けたり、すぐ介入したりしてしまっていませんか?

このテクニックは、キャリア面談やコーチングだけでなく、面接、1on1ミーティング、商談など、さまざまな対話の場面でも活用できます。

基本は「待つ」。これでOKですが、沈黙を恐れず、適切に「待つこと」と「介入すること」を使い分けて、より効果的なコミュニケーションを目指しましょう。

ご参考になれば幸いです。

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HP:インフィニティ キャリアコンサルタント


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みるふぃーゆ
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