見出し画像

人の数だけ解決策がある

管理職向けの研修では、部下の本音が読み取れず苦労しているという声をよく耳にします。その多くの原因は、管理職や育成担当者が、自分の信じる価値観や経験をそのまま部下に押し付けてしまうことにあります。
部下の考えや気持ちを軽視して、半ば一方的に「こうするべきでしょ」と教え込むケースが少なくありません。
その結果、部下はうまく動けず、管理職は「何度も教えているのに、どうしてできないの?」と苛立ち、双方がストレスを抱える悪循環に陥ってしまいます。

まだ業務経験のない新入社員や、あるケースに特化した問題解決、特定のスキルを磨くためのトレーニングなら、1つの正解ともとれるマニュアルに沿って、何度も練習することが有効な場合もあります。
しかし、部下の中長期の成長という観点での業務指導や、今回のケースのみならず自立した活躍を見込んだキャリア開発の場合、それではうまくいきません。
VUCAの時代に変革が求められる昨今、組織が発展していくためにも、メンバーそれぞれの事情や特性を理解して、自主性とエンゲージメントを高めるアプローチがとても大切です。
重要なのは、「やる気がない」のではなく、「その人なりのやる気の形がある」ということを理解することです。
これはわがままを聞いて甘やかすことではありません。組織の目標に向けて、部下とどうシナジーを生み出し、成果を最大化するかという“計画的なアプローチ”なのです。

ダイバーシティ(多様な価値観)&インクルージョン(平等に参加できる環境整備)、コーチング(自発的な行動を促し、結果だけでないプロセスも評価)、サステナビリティ(持続可能な成長と価値発揮)、ウェルビーイング(心身の健康を保ち、質の高い働き方)、受容と傾聴、など最近の人材開発研修でよくあがるテーマですが、いずれも共通しているのは、問題となっているモノや数字ではなく、「人」をもっと見ようということ。
部下がなんらかのトラブルを抱えている場合、「また似たような問題か」と片付けず、人の数だけ悩みがあり、解決策があると思ってください。

同じ会社に入社しても、同年代だとしても、考え方も、強み弱みも、見てきた/やってきた経験も、人それぞれなのに、なぜか自分の部下は、自分と同じ価値観だと勘違いしてしまいます。
もし、相手が自分と明らかに違うバックグラウンドを持っていれば、自然と「理解しよう」と歩み寄れるはずですので、「異文化コミュニケーション」の感覚で部下を見てみましょう。

ここで役立つのが、「飛び込む説得」のジョークです。
このジョークをヒントに、営業社員の動機づけを考えてみます。


船の沈没と説得

船が沈没しかけており、乗客は海に飛び込む必要があります。しかし、誰も動こうとしない。そこで、船員が国ごとに異なる説得を試みます。

  • アメリカ人:「飛び込んだらヒーローになれます!」

  • イタリア人:「飛び込めばモテます!」

  • 日本人:「みんな飛び込んでいます!」

  • ドイツ人:「規則で決まっています!」

  • フランス人:「絶対に飛び込む必要はありません。」

  • イギリス人:「飛び込むのが紳士的です。」

このジョークが教えてくれるのは、「動機づけは人によって異なる」ということです。


これを参考に、営業社員のタイプ別に、適切な動機づけの言葉を考えてみましょう。

1. 挑戦に魅力を感じるタイプ(アメリカ的アプローチ)

特徴:新しい市場や高い目標に挑むことに意欲を燃やすタイプ。
声掛け例
「この新しい市場で結果を出せれば、社内で注目される存在になれますよ。」
「この案件に挑戦することで、あなたの営業スキルがさらに伸びます。」


2. 他者評価を重視するタイプ(イタリア的アプローチ)

特徴:周囲の信頼や評価をエネルギー源とするタイプ。
声掛け例
「この案件を成功させれば、お客様から“信頼できる営業”として名前が広がります。」
「社内外から“頼れる存在”として評価されますよ。」


3. 集団の一体感を重視するタイプ(日本的アプローチ)

特徴:チームとしての連帯感や調和を大切にするタイプ。
声掛け例
「他のメンバーも頑張っています。一緒に成功させましょう!」
「この案件はチーム全体の成果を引き上げる重要な役割です。」


4. 規則や手順を好むタイプ(ドイツ的アプローチ)

特徴:計画性や成功の裏付けがあることで安心して動けるタイプ。
声掛け例
「この案件は、過去の成功事例を基にした方法で進めます。計画通りにいけば成果が出ます。」
「この手順に沿って進めれば、次のキャリアステージが開けますよ。」


5. 独自性を求めるタイプ(フランス的アプローチ)

特徴:人と違うことや、自分らしさを発揮できることに価値を感じるタイプ。
声掛け例
「この案件は他の誰も取り組んでいない分野です。あなたの個性を活かせます。」
「クライアントに合わせたオリジナルの提案を作り上げてみませんか?」


6. 倫理や道徳を重視するタイプ(イギリス的アプローチ)

特徴:社会的意義や正しさを重視し、意欲を高めるタイプ。
声掛け例
「この案件を成功させることで、クライアントや会社に大きな貢献ができます。」
「あなたの誠実な姿勢がこのプロジェクトで活かされるはずです。」


いかがでしょうか。
各メンバーがどのタイプかさえ分かっていれば、やる気の引き出し方もちょっとだけ工夫ができそうですよね。指導方法にも幅が広がることでしょう。そのためにも、日頃から下記を意識されることをお勧めします。

  1. 観察する力を磨く
    → 普段の会話や行動から、何に価値を置いているのかを見極める。

  2. 適切な言葉を選ぶ
    → 部下にとっての「飛び込む(仕事に向き合う)理由」を考え、響く言葉を選ぶ。

  3. 柔軟なアプローチを心がける
    → 一律の方法に頼らず、個別のアプローチを試す。


人それぞれの「やる気スイッチ」を押せるようになれば、部下との関係はより良いものになるでしょう。

ご参考になれば幸いです。

※ご自身のキャリア相談はもちろん、キャリア支援者側のご相談、人事ご担当者様、教育担当者様のご相談もたくさん承っております。
大手企業や教育機関等に導入していただいている高額プログラムも、オリジナルにご予算に合わせて企画・ご紹介いたします。
まずは、お気軽にご相談くださいませ。
HP:インフィニティ キャリアコンサルタント

いいなと思ったら応援しよう!

みるふぃーゆ
チップでの応援、ありがとうございます!キャリアに悩む全ての人のお役に立てるようにもっともっと励みます!