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やりがいと報酬のバランス
【相談内容】「仕事は楽しいのですが、弊社は営業会社なので、バックオフィスの私は評価されない。年収が上がらないのは仕方ないのでしょうか。
今後、どうしたら良いでしょうか。」
「好きで始めた仕事なんですけど、あまりにも給与が低いのでもう辞めたいです。結局、やりがいなんて意味ないですよね。どう思いますか?」
キャリア支援をしていると、「やりがいのある仕事をしているのに、報酬が上がらないのはなぜ?」「やりがいを追求するから上がらないのか?」という声をよく聞きます。特にバックオフィスの方々からは、目に見える成果が評価に結びつきにくい業務構造が原因で、モヤモヤを抱えている方が少なくありません。
今回は、「やりがい」と「報酬」とは何なのか。
定義やその構成要素から、どう考えたら良いかを探求してみましょう。
1、やりがいとは何か?
やりがいとは、自分が取り組む仕事や活動に対して感じる充実感や満足感を指します。行動した後の感情です。
モチベーションとも似ていますが、モチベーションは動機づけのことで、行動する前の「やる気」や「行動を起こすための理由」を指します。
やりがい(やった後の充実感)を感じると、さらにモチベーション(もっとやってやろうというやる前の「やる気」)が上がる、という感じですかね。
やりがいは人によって異なりますが、1万人以上のキャリアに触れてきた私の所感では下記を挙げる人はとても多いですね。
(1) 自己成長、達成感
・自分のスキルや知識が高まっていると実感できること。
・難しい課題に挑戦し、それを乗り越える過程での成長実感。
・できることが増えたとき。
・目標を達成したり、競争に勝ったときに感じる満足感。
・完成する、完了するなど「やり切った」「結果を出した」という充足感。
(2) 他者への貢献、自己有用感(役立つ・必要とされている実感)
・自分の仕事や行動が誰かの役に立っていると実感できること。
・ありがとうと言われる経験。
・顧客や同僚、社会から頼られている感覚。
(3) 意義や意味の実感
・社会的に意義があると感じられる仕事。
・「自分らしさ」を感じられる仕事。
・何につながっているか全体を把握しながら進めているとき。
(4) 仲間意識、チームプレイ
・同士で一体感が高まったとき。つながりを感じるとき。
・チームで同じ目標に向かって試行錯誤している仕事。
・仲間の成功を感じるとき、仲間を支え合っているとき。
これらが自分にとって大事な価値観だと思える人は、現職において少しでもそういう瞬間はないか?これらのポイントを見つけようとしてみてください。
「悲観は気分、楽観は意思」と言われますが、気分のままに物事をみるとイヤな時にはイヤと、悪いところだけが印象に残りがちですが、良い部分にも焦点を当てられるトレーニングを意識的にもやってみると、自分の心が少しは落ち着くので、お勧めです。
2、報酬とは何か?
報酬は、主に 金銭的報酬 と 非金銭的報酬 に分けられます。
1) 金銭的報酬
・基本給
個人の職務内容や責任範囲に応じて決定される毎月固定で支払われる報酬。例: 年齢、経験、職務等級に基づく給与。
・業績給(インセンティブ)
個人やチーム、会社全体の業績に応じて支払われる成果報酬。
例: 営業部門の売上に応じた歩合給、達成ボーナス。
・賞与(ボーナス)
個人や企業全体の年間業績に基づいて支払われる追加報酬。
例: 夏季・冬季ボーナス、利益分配型ボーナス。
・手当
出張手当、残業手当、役職手当、住宅手当、家族手当など
(2) 非金銭的報酬
・福利厚生
社会保険、健康診断、退職金制度など。
・ワークライフバランス支援
休暇制度やフレックスタイム、リモートワーク制度など。
・キャリア開発支援
教育研修、資格取得支援などの自己成長の機会。
・職場環境や文化
快適なオフィス、働きやすいチーム文化など。
金銭的報酬は、生きるために必要ですのでまず重視する人は多いでしょう。
ただし、高年収を目指すには、当然ですが相応の努力が必要です。
●●円という金額に見合った行動や、そのための生活(何かを犠牲にすることもあるかも)、などのバランスは人によります。なんのためのお金か。自分にとっての幸せとは何か。
そこまで年収高くなくても幸せな人はたくさんいます。逆に高年収で「不幸」だと言っている人も多くいます。
体も心もボロボロになったら、ロボットではないので簡単には治せません。人生、持ち直すのはかなり難しいです。
単なる金額だけではなく、そうした中身も総合的に考えてみてください。
3. やりがいと報酬は必ずしも比例するものではない
ここまでの話の通りで、やりがいと報酬は必ずしも比例するものではなく、それぞれ要素が異なるので、どちらが大事なのかと二者択一の選択肢ではないと思います。
有名なハーズバーグの二要因理論でみると、「金銭的報酬は満たされないと不満が募る動機付け」、「やりがいは満たされることで満足度を向上させる動機付け」と説明しています。
つまり金銭的報酬が希望通りに手に入っても、不満が解消される(マイナスから0へ)だけで、プラスには転じにくいということ。
やりがいは、無いからマイナスになるわけではなく、あると0からプラスへ転じるという考えです。
やりがいは、仕事を通じて感じる個人的な満足感や意義から生まれますが、報酬は会社の収益や人事評価制度、職種ごとの市場価値に大きく依存し、すぐに自分一人の想いや行動だけで変動できるものでもありません。
会社によっては、売上に直結する営業職が高く評価され、営業職の方が年収が高くなることもあるでしょう。
この違いを理解した上で、それぞれに考えて総合的に自分のキャリア戦略を立てていくと良いですね。
4.外発的報酬、内発的報酬
「金銭的報酬は、外からあげてもらう喜び=外発的報酬」
「やりがいは、内から(自ら)上がっていく喜び=内発的報酬」
という表現もされます。たとえば、好きなアイドルをサポートする仕事など、やりたくてやりたくて仕方ない仕事があったとしたら、その仕事内容や仕事の機会そのものが報酬です。極端ですが、お金はいくらでも良いからやらせてほしい!という行動そのものが動機になっているのが内発的報酬。
一方で、会社から新しいキャリア(部署異動、プロジェクト担当など)を打診されたり、管理職になるよう求められて、それが「報酬が上がるから」という目的だけで選ぶ場合は、やりたい仕事ではない可能性が高く、外発的です。
仕事内容・行動そのものに興味をもてると良いと思います。
5.下位欲求を満たすことが先
アメリカの心理学者アブラハム・マズローによって考案された有名な理論で「マズローの5段階欲求説」があります。人間の欲求は、5つの階層に分かれていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の欲求を満たそうとする
人間の心理が紐解かれています。
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第1段階の生理的欲求は、食欲、睡眠欲、性欲など生命を維持するために必要な誰しもがもつ欲求です。
第2段階の安全欲求は、戦争・災害・病気など不安を抱えることがない生活を求め、身の危険がない生活を送りたいという欲求です。
食べるものに困って飢餓状態、明日がどうなるか分からない戦地において、自己実現がどうのこうのは、言ってられません。
それが、食べるものには困らなくなり、健康な生活が送れる住まいがあると、さらに高次な欲求が芽生えてくるのです。
第3段階の社会的欲求は、家族や知人、何らかの組織に属していたいという欲求です。人は、どこにも所属していない独りの生活はとても耐えられません。物質的な欲求だけではなく、仲間が欲しいという社会とのつながりを求めます。
第4段階の承認欲求は、所属するコミュニティの中で自分を必要とされたい、評価されたい、自分の価値発揮できる場所を求める欲求です。
これらが全て満たされると、自分らしさ、自分のありたい姿、成し遂げたいことなどを求めるようになります。これが第5段階の自己実現の欲求です。
※マズローは晩年、第6段階の超越された自己実現の欲求を発表しています。見返りを求めず、社会全体の幸福を願うというもの。自分のことが満たされるとこの領域に入るんですね。
多くの人を助ける前に、まずせめて自己を確立しないといけないんだなと理解できます。
こうしてみると、生活するための金銭的報酬(食べるため、健康的な生活を送るため、とりあえず明日の安心がほしい)は下位の欲求であり、やりがいや自分らしさという高次元の欲求の手前の欲求に当たるんですよね。
なので、まずここが一定満たされていないと、やりがいなんて考えられない、という心理になるわけです。
「金銭的報酬を求めることはダメなんですか?」「こんな給与じゃ、やりがいなんてありません」というキャリア相談をされて、それでも「何がやりたいか見つけていこう」とするキャリア支援者は、こうしたクライアントの心理的構造も理解した上で、この状況も全て受容し、この方にとって必要なキャリアサポートができると良いですね。
6.好きな仕事での儲け方を考えて、両方取り!
いよいよまとめですが、これらを踏まえて、好きな仕事で稼げるかという観点で考えていくことが大切です。
好きで始めた仕事も、収入が少なすぎると、いつの間にか稼ぐことだけを考えて、「稼ぐためだけの仕事」になり、「好きじゃなくなってしまう」ことがあります。そのため、好きな仕事で、稼げる方法を考えたら良いでしょう。
顧客は誰で、その方は何を欲していて、自分にしか提供できない価値は何か。ここがあれば、あなたにお客さんがつき、高値でも買ってくれると思います。問い合わせも増えるのではないでしょうか。
バックオフィス職種も、より専門性を身に着け、必要とされる人材になれると良いでしょう。部分的で作業的な仕事以上(マニュアルがあれば誰でもできる)に、全体の企画・多くの社員や社会に関わる根幹の改革・マニュアルやフレームを作れる・損やリスクをなくす・全社の利益につながる仕事、などができると、市場価値は上がります。
自己満足で独りよがりになっていては商売になりません。
選ばれ続けるために、「顧客や社会は何を欲しているのか=ニーズ・シーズを掴む」×「自分にしか提供できない価値=差別化」を考えてみましょう。
これまで評価されたことや、喜ばれたこと、得意なことを洗い出して、自分の強みにさらに尖りをつけて広めていくと、今よりも「やりがいある仕事で金銭的報酬も追求できる」ようになると思います!
※ご自身のキャリア相談はもちろん、キャリア支援者側のご相談、人事ご担当者様、教育担当者様のご相談もたくさん承っております。
大手企業や教育機関等に導入していただいている高額プログラムも、オリジナルにご予算に合わせて企画・ご紹介いたします。
まずは、お気軽にご相談くださいませ。
HP:インフィニティ キャリアコンサルタント
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