#映画感想文「2度目のはなればなれ」英国を代表するマイケル ケイン、グレンダ ジャクソンが素晴らしいとしか、いいようがない。
物語
イギリス 海岸街、ブライトンの老人ホームで妻レネ(グレンダ ジャクソン)と一緒に入居している夫バーニー(マイケル ケイン)がノルマンディ上陸70周年の記念イベントに参加するためにホームを脱出して、ひとりでフランス ノルマンディに向かうという話。いなくなった90歳のバーニーはどこにいったのかで大騒ぎになって、警察が捜索のためにSNSなので拡散したことでバーニーは一躍有名人に。妻のレネの証言でひとりでノルマンディに向かったということがわかり、英国で大きなニュースになります。
わたしはいつも思うのですが、英国人って本当に旅行しないひとはどこにもいかないです。大学の頃、イギリス人の友達の家に遊びにいって2週間くらい泊まっていたのですがケンブリッジ大学の近くのHerts という街に住んでいた、友達のご両親がロンドンに50年くらいいってないといっていた。もう、びっくりです。それこそ、横浜に住んでいるのに東京にはいかないという感じです。なので、ブライトンから90歳の男性がひとりでフランスにいこうとすると大冒険となって大きなニュースになってしまうということが、驚きですが、わかる。
朝、散歩から戻らないバーニー。バーニーはある使命をもって、ひとりでノルマンディに向かったことがレネの発言でわかってきます。
映画はノルマンディ上陸の戦闘シーン、レネとバーニーが出会って恋に落ちる若い頃のエピソードがそれぞれ挿入されて、なぜ、バーニーがノルマンディにいかないといけなかったのか、を明らかにしています。
この夫婦はバーニーが戦争が帰ってから、一度も離れたことないのに、妻は夫を「どうしてもいかないといけないなら、いくしかないじゃない」"If you have to go, you have to"といって後押しします。
バーニーはひとりでノルマンディに向かいます。お金の持ち合わせがないので船であったもうひとりの退役軍人の世話になりながら、旅を続けますが戦争のトラウマからアル中になっている彼の面倒をみます。そして、アフガニスタン戦争で足を失った若い退役軍人と出会い毅然とした態度で彼が戦争の後遺症から立ち直っていないから、治療するべきとアドバイスします。
先輩だから、ぴしっと言える。人としてかっこいい。そして、思いやりがあります。
行き先々で退役軍人に会う。ドイツ兵とも話をして交流をする。このシーンは胸にせまるものがありました。
戦争は無益な死と残酷な末路しかもたらさないけど、戦争を生き抜いた。バーニーとレネはふたりで1秒たりとも無駄にせず、瞬間、瞬間を生きていたよという言葉が感動的です。
ともかく、90歳を演じるマイケル ケインが素晴らしいですね。メイキングを観ましたが矍鑠としていて、全然、老いてないのに、老いたひとを演じるは勇気がいることだなと思います。
それはグレンダ ジャクソンにも言えるのだけれど、マイケル ケインのほうが年老いて見えました。
青春を世界大戦で過ごし、そこで出会った二人は恋に落ち、ロマンティックに結ばれる。戦争で引き裂かれて、彼が心配でたまらないルネ。
でも、かえってきたバーニーは戦争の後遺症で心が壊れていたように見えた。だから、レネはふたりで離れないでいこうと決めます。
戦争は、終わってからのトラウマのほうが大きいし、後悔だったり罪悪感に苛まやる日々が人生に大きな影を落とす。このバーニーも例外ではない。
自分がこんな有名人になっているとは知らず、バーニーが帰ってきます。
バーニーは自分が死なせてしまったと悔やんでいる戦友から大切な遺留品を預かっていて、その箱をお墓まで届けにいったのでした。
悔やんで慟哭するバーニーを優しく慰めるレネ。戦争の深い傷を老いながら、生き残ったことへの後ろめたさをずっと感じているバーニーにルネはそんなことはない、あなたは悪くないのよ、彼が死んじゃったのは、彼の運命であり、あなたが責任を感じる必要はないと抱きしめます。
Redemption、贖いを終えたバーニーは安らかな心を手に入れ、レネが「じゃ、寝ましょう」というと、バーニーは、”Your bed or Mine?”といいます。めちゃくちゃ、かっこいい。粋ですね。
ふたりの穏やかなルーティンが始まるというところで映画は終わります。
ふたりはいつも朝4時15分におきて、海岸線からのぼる太陽を観ます。
ふたりで変わらず海岸を散歩する。そのとき、「犬飼いたいな」とふたりで話すシーンに胸が熱くなりました。ふたりは出会ったときから、バーニーはプードルが好きとレネはバーニーのことをわかってしまいます。「プードルほしいほしい」といって散歩するシーンは自分の老後を思うようです。
レネは「今度、あなたがどこにいくことがあれば、必ずついていくわ」とい言います。これが「2度目のはなればなれ」ということですが、この言葉を実行するんです。とても、よかった。最高のハッピーエンディングです。
この映画、英国で大ヒットしたらしい。それが嬉しいですね。