映画感想文「そこのみにて光輝く」 珍しいピュアなラブ・ストーリー(ネタバレあります。)
単館ロードショーからどんどん、ミニシアターで公開がはじまり、前評判のよさからどんどん、満席で席がないくらい人気だったと聞いていて、見に行きたいと思っていたけど、いけないままWowowで見られました。
昔の「泥の河」を思う。
底辺に落ちてはいあがれない人間たちのなかで、壮絶な生活をしている親子。昔、マイケル・ケーンがいっていたけど、「貧乏になるとそこから抜け出せずにさらに悪い方向にいってしまう」と昔の自分の父のことを嘆いていた。
舞台は函館。主人公の池端千尋演じる大阪地夏は、お父さんが寝たきり託児(菅田将暉)はひとを刺して仮釈放中で、彼の保護観察の男のいいなりになるしかない。そんな壮絶な不幸のなかを淡々と生きていて、毅然としている千夏を演じた池脇千鶴が本当に色気があって、しっとりしていてよかったです。これぞ女優ですよね。
そこに無職のパチンコばかりしている男、綾野剛演じる佐藤達夫を弟の託児がつれてくる。ちょっと知り合って、家につれてきてしまう。家はかなり、汚く貧しい感じ。そこで達夫は千夏を一目で好きになってしまう。
綾野剛が、また、色気があって、もう、メロメロです。彼はどんな映画にでてもすごい。でも、こういう役がたまらなくあっていると思います。だらしないのが最高にかっこいい。こういう俳優最近いないから、さらに好きです。
千夏に「店休め」と迫るシーンがとってもセクシーだし、恋する男性のオーラがすごい。
過去に傷をおって、厭世的に生きていた彼がどん底の生活をしている千夏にあって、どうしようもなく惹かれるという演技がとても自然です。
ラブストーリーなんですよね。ピュアな。
ま、昔、アメリカ映画などでもこういう映画たくさんありました。「Leaving Las Vegas」とかもそうだと思うし、リリー&フランキーとかもそう。
最近はラブ・ストーリーがなかなかないです。
最後のシーンでどんよりすると出演者がいっているけど、私は、これはハッピーエンドだと思ったけど。これは小説とはちがったはなしになっているので、小説はハッピーエンドなんですよね。わたしはこの映画は最高のハッピーエンドだと思う。だって、コピーは「すべての終わり。愛のはじまり」。なんで出演者が終わるとどんよりしてしまうかもといっているのか、わかりません。たぶん、厳しい現実、貧しさからはいあがれず、どんどん、悪いスパイラルにはいってしまう千夏の弟のことなどがあるかなと思います。
撮影もすごくうまいし、計算されている。
これだけの映画をつくるのが、また、女性監督というのが、びっくりですね。
日本映画は女性監督がすごい。
今後の呉美保監督に期待です。