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#映画感想文「名もなき者 A Completely Unknown」 生きる伝説ボブ・ディランの若き日

まだ、生きているのに、そのひとを主人公に映画が作られるなんてすごいことだと思います。そして、破格の才能、すべての既成概念を覆してきた伝説のミュージシャンであり、ロックを誕生させた詩人のボブ ディランがニューヨークにヒッチハイクしてやってきた1961年から1965年を描いた映画。

まず、このディランを演じたティモシー シャラメがすごい。若いのに、彼もすごい才能です。役作りに5年もかけてギター、歌を自分のものにしている。ディランも彼を認め、僕に見えるといっているのでそれもすごいことだなと思います。

ボブ ディランは偉大すぎて、私がなにか、コメントをするのもおこがましいので彼がどれだけすごいかということを書くのは控えたいと思う。
ティモシー シャラメがボブに似ているか、否かということはどうでもよいことでボブ ディランをつくりあげていることは確か。

そして、なぜ、今、ボブ ディランなのかというと、この1961年から1965年はアメリカが大きく揺れていた時代で新しい概念が生まれていた時期。キューバ危機、ケネディ暗殺、公民権運動、反戦活動など、アメリカ人は明日はまた、戦争かという大きなうねりにあってアメリカ自体も分断されていた。
それは今おこっている大きな分断に対する危機があって、それをちょっと思い起こしてほしいという思いがあったのかなと思います。

ボブ ディランは自分は反戦活動をしているつもりはないといっているらしいけど、個人を尊重して他を尊重して生きることの尊さに対して言及している。
そういう自分が持っている正しいと思うことを貫こうとする姿勢が今の時代の絶望感に対してなにかのテーゼとして映るのかなと思います。

また、音楽シーン、フェスのシーンがかっこよすぎて感動します。全部、フェスとして、観客もいれて撮影したということで音響がすごいです。涙が突然、溢れてしまいました。

あと、人間としてのボブ ディランですが、よく嘘つきといわれているだけあって、嘘ばかりついているのでみんな本人がどういう人間かわからないといっているらしく、ローリング・ストーンズの記者なども嘘ばかりついている彼の真実をはぎとろうと努力したけど、難しかったと言及している。そういう彼が偉大さの影の本当に人間像という意味でcompletely unknownという意味なのかなと思った。

こんな本当な彼の真実はボブ ディランの伝記とか、読まないとわからないと思うけど、本人はジョーン バエスに対しては、つきあっていた時代ひどいことをして悪かったと伝記で謝っているらしい。そういうふたりのロマンティックが関係が映画ではうまく描かれているなと思った。

本人は良い家庭人になりたいといって、2回結婚して子どもが6人。このくらい不思議にモテるんだけど、すごい才能があって、みんなから妬まれて彼女だったスージー ロトロは寂しくなって彼を去る。

そういう二人の女性で揺れ動く姿とか、急に別れたのに、朝の4時にアパートを訪ねたりと随分勝手な男だったのかなと思います。

ボブ ディランが魅力な人間であったことはまごうことない事実でジョン レノン、ジミヘンなどにも大きな影響を与えたということを考えると、こういうひとが近くにいたらすごいだろうなと心底思う。リベラルだと思った自分がすでに時代遅れになっているボブを音楽業界につれてきたピート シーガーが哀れな感じでエドワード ノートンが演じてます。

そう時代はどんどん変わるのですよね。

それを教えてくれた映画かなと思います。