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ちょっと長めの図書紹介⑨

15年前の2007(平成19)年、
長男が誕生し、わたしは育児休業を取得した。
それから4年後、次男のときも同様に──

当時は、男性の育児休業取得率が
1%にも満たない時代であり、
休業の申請や代員の配置、引継ぎ手続きなど
「前代未聞」扱いを受けた厳しい時代だった。
現在、やっと取得率が二桁に届いた。
さらに、休暇・休業制度も大幅に改善され、
さまざまな環境に対応した取得が
可能となっている。

どちらの本にも収録されている
第6章「教員の産休・育休制度」は、
制度周辺がコンパクトにまとまっているため、
たいへん参考になるだろう。
──熟読し、活用してほしい。
また、本人以外でも管理職は必読である。
職員から妊娠等の報告を受けたとき、
使用可能な制度の周知や、
その活用の意向を確認するためにも使える。
常に、数冊ストックしておき、
妊娠等の報告と同時にプレゼントをしたら、
よろこばれるに違いない。

『先生がママ先生になったら読む本』
(以下、『ママ本』)
『先生がパパ先生になったら読む本』
(以下、『パパ本』)
同時に届き、
どちらから読み始めるか悩んだ。

先に『ママ本』を手にした理由は、
購入者特典「育休復帰前チェックリスト」に
ひかれたからである。
女性の場合、
半年以上の休業を取得するひとが大半であり、
復帰に向けた準備や確認は必須だろう。
経験者がつくったリストは心強い。
男性もぜひ『ママ本』を購入し、
特典を参考に
「パパ先生専用育休復帰前チェックリスト」を
自前で用意するとよいだろう。

さて、内容である。
『ママ本』『パパ本』ともに
座談会から始まる。
夫婦ともに教員というパターンの育児生活や
「イクメン」の活躍が参考になるだろう。
「イクメン」なんてもう死語なんだろう──
そんな家事育児の共同実施が見えてくる。

続いて、第2章は「親になった」変化である。
女性は「出産」という行為により、
ある程度自然にその変化が訪れるといわれる。
しかし、『パパ本』にもあるように男性は
「父親の自覚をもつのが遅い」(パp.35)
とよくいわれている。
『パパ本』(パp.150)でも紹介されていた
ファザーリング・ジャパン代表理事であり、
ファウンダーの安藤哲也氏は
その著書『パパの極意』(2008年)で、
自然と育児に対応したOSへ
入れ替わる可能性が高い女性と違い
男性は自らのOS(Windows95→XPなど)を
アップデートする必要があると書かれていた。

当時は、男性向けの育児本も少なく
感動したわたしは
安藤氏に手紙を書いた(笑)。
現代版「パパの極意」「ママの極意」が
第2章には詰め込まれている。
両性とも「親」へのアップデート
そのきっかけになる重要なエピソードや
ポイントがまとめられている。

そして、第3章は「働き方」の変化である。
ICT機器を駆使したり、
当たり前を見直したりしながらの
時間短縮事例が多く紹介されている。
学事出版といえば、
「スクールプランニングノート」──
その活用による
時間短縮の工夫や業務整理の方法もある
(パp.67、83:マp.86)。

さらには、学校周辺の人的リソース
教職員や保護者とのコミュニケーションによる
働き方改革事例も満載である。
子どもを中心とした
「チーム学校」の視点に加え
「ママ・パパ先生」を支える
その視点ともいえるだろう。
この章は、
「先生がママ・パパ先生に」なる予定はない
育児は卒業した「ママ・パパ先生」にも
役立つ実践が多く載っている。
だれが読んでも損はないだろう。

せっかく『ママ本』『パパ本』ともに
事務職員との関係を
ピックアップしてくれているので
1点だけ、事務職員として
意見を述べておこう。

「お菓子を持って行ってお話」(マp.106)
教員は授業があり、育休中に学校へ来ても
会いたいひとに会えないことは多い。
しかし、事務職員は基本的に
事務室にいることが多く、
会いたくなくても会ってしまう(笑)。
そんな状況が年に数回、
ひとによっては毎月訪れる場合もある。
お互いのために、
プレ「ママ先生」は事務職員との交流を
大切にしてほしい──
お菓子はあってもなくてもOKだけど。

書類の提出や事務職員の依頼には、
「なるべく早く仕上げ」(マp.106)たり、
「優先順位を上げる」(パp.101)などと
気をつかってくれているようだ。
それは、うれしいことだが
事務職員の仕事も学校運営の一面である。
教育という現物を提供する集団の一角に
事務職員の仕事もあると捉え、
特別視することは不要だと考える。
それがチームとしての学校という基本だろう。
もちろん、期限を切っているものは、
その期限がその仕事のデッドであるため、
事務職員の定めには従ってほしい。

「時には事務職員さんの側で記入して
 くださることもありました」(パp.103)
──これはサポートではない、
代筆してあげることは優しさでもない。

……脱線しそうなので、終わり。
1点だけのはずが3点も書いてしまった(笑)。

なにはともあれ、
「なったら読む本」というタイトルだが、
ぜひ「なる前から読む」ことで
「ママ先生・パパ先生」になる準備にも
役立ててほしい本である。

男性は『パパ本』、女性は『ママ本』──
そんな選択をしそうであるが、
ぜひ、この姉妹本は両方そろえてほしい。
男性も『ママ本』から、女性も『パパ本』から
学ぶことは多いし、
お互いの状況を知っておくことも必要である。
残念ながら「セット購入割引」は
ないようだが……(笑)。


井上和雄さま、
ご恵贈ありがとうございました。

#学校
#産休
#育休
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『先生がママ先生になったら読む本』
https://www.gakuji.co.jp/script/bkDtl.php?prodid=978-4-7619-2910-7
『先生がパパ先生になったら読む本』
https://www.gakuji.co.jp/script/bkDtl.php?prodid=978-4-7619-2911-4

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