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人生のどこかでバグパイプを吹いていたら、人生のどこかで役に立つかもしれない

ええええ待って。ディレクションをしていたら1日が終わってしまったのだけど、一体全体どういうことやねん。

というわけで、今、わたしはなぜかディレクションをしている。

本業はライターなので、それなりに取材もしており、それなりに書かなくてはならない原稿も溜まっているのだが、バリバリにディレクションをしている。

「ディレクション」というのはかなり曖昧な言葉だと思う。

その名の通り「道を示す」というか、要はプロジェクトの全体を見て、必要なことを必要な人に振っていく、やり取りをしていく、進行管理をするような仕事なのだが、やることはなかなか多い。

たとえば、わたしが前職で広告のクリエイティブディレクターをしていたときは、必要なバナーや動画を営業さんからヒアリングをして、素材を集めて構成案を作り、デザイナーさんや動画編集者さんにオリエンをして制作をしてもらい、クオリティチェックをして、ブラッシュアップをして営業さんに渡す…というようなお仕事だった。

難しいのは、デザイナーさんが無理せずにクオリティの高いものを作れるように丁寧にオリエンをすること、そしてスケジュールを組むこと…だけじゃない。

ちゃんと出来上がったものを見て適切なフィードバックができるような「審美眼」を養うことがめちゃくちゃ重要なのである。

そして、「審美眼」というのは一朝一夕で養えるものでもない。「なんか変だな」という違和感をうまく言葉にできるようになるまでには時間がかかる。

適当に「背景を白にしてください」といってもデザイナーは納得しない。デザイン変更には然るべき意図が必要なのだ。たとえば、「文字の可読性が低いので背景を白にしてください」といった具合に。

で、わたしの場合は未経験で業界に飛び込んだものだから、「わからんわー、そんなん」と思っていて、多少マージンがズレようが、文字間がおかしかろうが全然気付かなかった。

審美眼がないとね、違和感が見えないんですよ。

ところがどっこい、わたしのメンターになってくれた先輩がゴリゴリのデザイン畑の人だったものだから、わたしのディレクションしたバナーにはおびただしい量の朱入れが入ったし、1px単位のズレまで修正してくれた。

そんな先輩の背中を見ながら、次第にわたしのなかでも、「最低限ここを見ておけば何とかなるポイント」みたいなのが醸成されていって、気付いたら何とかひとりで案件をまわせるようになっていた。

そんなクリエイティブディレクターの仕事を1年半ほどやって、わたしはライター・編集の世界に飛び込み、すっかりディレクターとは無縁の人間となった。

で、最近はとあるプロジェクトに入って原稿を書いたり添削したりしていたわけだが、気付いたらデザインのクオリティチェックまでやることになり、自然と目がロゴまわりのマージンを見ていることに気付いて、ちょっと感動を覚えていたのが冒頭の話だ。

もう二度とクリエイティブのディレクションなんてやらないと思っていたし、どこかで役に立つなんて思ってもみなかったけど、やっぱりどこかで活きることがあるんだなと。

最近、とある人のインタビューをしたときに、「人生のどこかでバグパイプを吹いていたら、人生のどこかで役に立つかもしれないじゃん?」と言っていた。

たとえが独特すぎて「さすがにバグパイプは吹くタイミングがないわ」とも思ったけど、たしかにそうなんだと思う。

今やってること無駄なんじゃないのって思うかもしれないけど、実は無駄じゃないんだと思う。

それに気づくのは数年先の話かもしれないけど。大丈夫。きっとどこかで役に立つ。何事も、覚えておいて損はないのだ。

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