こいつ直接脳内に(2024年1月16日)

 8時に比較的早起き。知識として知ってはいるが、起床が早いと一日が、というか午前が本格的に長い。昨日の残りのカレーをあたためて食べ、コーヒーを淹れて飲み、洗濯機を2回まわして干してもまだ9時半なのだ。

 これがもし毎日6時起床になるとどうだろう。やるべきことはだいたい8時頃には終わってしまって、暇だからとなにかまた食べたり必要のない買い物に出たりもする。それで正午にはもうバテはじめ、おそらく18時にはアクティブな一日がおおよそ終了してしまう。なんだ、時間が前にスライドしてるだけじゃん。

 午前も午後もずっとがしがし仕事をした。ひさびさ、いや、人生ではじめて「えっ、こんな人いるんだ!」と言いたくなるレベルの無茶を振ってくるお客さまが現れ、ずっと対応に追われていたのである。どう工夫して打ち返してもそれをこえた無理なオーダーが止まらないので困ってしまった。

 そのお客さまはコンサル業界出身の人で、なにか意見を述べるときに「コンサル出身の僕らって、こうなんで」「僕らってこういう価値観なんで」と業界全体を勝手に背負ってしまうふしがある。もちろんその人はその人の存在を越え出ることなどないのだが、コンサルティング会社の出身であることは彼のアイデンティティを大きく支えているように見える。そこに属していたことが彼自身にとってあまりに重要で、その大事にしている気持ちを自分のなかに密かにとじこめておくことすらできないほどなのだ。そうおもうと、人生でそれほど寄る辺にできる仕事に出会えてほんとうによかったねの感慨があるとともに、やっぱりうるせー!

 疑問を駆使しながら相手を追い詰める、大人ならではのいじわるな言いかたをする。(おれはぜったいに引かないぞ)の強い気持ちが、画面を越え眼球をつらぬき脳まで直接刺さってくるようだった。こいつ直接脳内に……! 脳に刺さったままぐったりとしながら、なんでもいいからはやく終わりにしてくれとだけ願っていた。その切なる願いが彼の心に直接語りかけることは当然なく、ただへろへろと仕事を終えるのだった。

 今日は結婚記念日で、夜は連れあいと近所のすきな中華屋で食べた。あえて祝いの言葉はなかったけれど、これからもふたりで静かにうまいものを食べられたらいい。それは現実的に当たり前のことではないのかもしれないと、ここ最近仕事がつらくてずっと落ち込んでいる彼を見ているとおもう。

 夜にベッドで聴いていたラジオのイントロクイズに即正解した瞬間。今日のなかで自分がもっともペカーと光った。

「リルラリルハ」をギターの最初の1音で当てたのだ。




【よかったらお読みくださいシリーズ】

▼日記以外の読み物

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▼写真家の服部健太郎さんとやっている聞き書きプロジェクト

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サトーカンナ
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