深夜2時

生まれつき耳が悪い。音を拾いすぎる身体障害。
重度の聴覚過敏症である私は、先日やっと買ったイヤーマフを耳につけこの文章を打つ。

耳が塞がってないと、話せない。
耳が塞がってないと、聞こえない。
耳が塞がってないと、書けない。

普通は反対なんだと思う。周りの音を聞かないと何を話したらいいかわからないだろうし、周りの音がないと聴こえないって意味がわからないし、書くことを聞かないと文字が書けないのは当たり前だ。

私の耳は周りの音を拡声器のように大きくして脳に伝える。拡大された音は私の脳を包み、一切のアウトプット機能を制限する。

救急車のサイレンは私の脳をつんざき、子供の喚く声は私の脳を過剰に震わせる。

人混みではたくさんの音を聴く。
「%☆$¥€☆#/!!!!!」みたいな音がたくさん私の耳に届く。とにかくみんななんか喋ってる。でも全員「%☆$¥€☆#/!!!!!」って言ってるから何を言ってるのかはわからない。だから、ただ喧騒に包まれた私は極度の疲労感に襲われる。

スマホのキーボードが打てなくなる。音を聴きながら文字が書けないし、スマホのキーボードが見えなくなる。ポソポソと打つ言葉を口ずさみながら、確実にフリックしていけるように気をつけている。

文字が読めなくなる。喧騒の中でおかしな記号の羅列と化した文章は、喧騒が止むと文字として再び浮かび上がる。ああ、これってこういう文字だったんだ。

一見ヘッドフォンのイヤーマフ。オーディオ機器のメーカーが開発したのだからそりゃそうだ。
ヘッドフォンをつけたまま人と会話している。コンビニで店員さんにヘッドフォンをつけたまま受け答えをしている。「え?」と聞き返している。それなのにヘッドフォンを外さない。頑なにヘッドフォンを外さない彼女は、いったい何を考えているのだろう。馬鹿なのだろうか。おそらく馬鹿なのだろう。そうかそうか。



違う。


違うのにな。


そんなことを考えていたら朝になっていた。

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