あなたがアイドルでいてくれるから
世界で1番好きな人のライブに行ってきた。場所は有明アリーナ。席は2階スタンド後方。決していい席とは言えなかったが、メンバー1人1人、もちろん私の大好きな彼の表情もしっかりわかるくらいには近い場所にいた。ライブを見終えて、少し感情が安定したので、文字に残す。先に言っておくが、これはセトリや演出を記録しておくものではない。私にとんでもなく渦巻いた感情をまとめておく場だ。
彼を好きになって7年、ライブに行き始めて4年が経とうとしている。コロナ禍で2〜3年はライブに行ってないから、最後にライブに行った記憶はとても薄れている。その時は東京ドーム2階席であまり顔が見えなかった、というのもあるが。
今回は高倍率を勝ち抜いてようやくはじめてのアリーナツアーに行けた。トロッコやリフターでかなり近くに彼がいた。今回の彼のファンサは「ギャルピ」だったので、いろんな人にギャルピをしていた。その光景はかなり面白かった、かなり。
彼は今回モニターにもよく抜かれていた。ファンにも、カメラにも笑いかけていて、めちゃくちゃ可愛いしかっこよかった。
アンコールで、彼がアリーナのトロッコでめちゃくちゃ近くにきた。彼の視界に私が入る。死ぬ気でペンライトを振ったが、確定ファンサはもらえなかった。私の隣には他のメンバーを推している人がいたのだが、「なんで目の前に来てくれないの」「気づけよ」などと不満を漏らしていた。
以前だったら私だってそう思っただろう。私をなんで見てくれないの、と。ただ、今回久しぶりにライブに行って、今まで見たことのない距離で彼を見た時、どうしてだろうか、アイドルとしての「キラキラ」が眩しすぎて、でもどこか儚くて、彼が目の前にいるという現実を受け入れられなかった自分がいた。
踊る彼は、歌う彼は、かっこよくて可愛くて、多くの人を沸かせて虜にしていたと思う。ステージを大きく使って、楽しそうにライブをする彼は、先日公式のInstagramのアンケート機能で決めた髪色だという毛先だけ金髪の髪を汗だくにして、ステージを駆け回っていた。バラードの時も、ノリのいい曲の時も、MCの時も、ずっとずっと、彼はキラキラしていた。
目の前に来た時も、確かにそのままだったはずだ。可愛くて、かっこよくて、キラキラしていたはずだ。というか、実際そうだった。でも私は、そのキラキラの中に、彼が今にも消えてしまうんじゃないか、いつかなくなってしまうんじゃないかという「儚さ」を見た。だからなぜか、この儚いものを肉眼で確認できるだけで充分だと思えた。彼は私の中の「日常の現実」に、当たり前に存在していない人なんだと、改めて感じた。この時間は全部、「非日常」なんだと。
最近はもっぱら地下アイドルを見ていたので、規模感や衣装、映像の細かさに圧倒されたところもあるが、私が1番感じたのはアイドルとしての「キラキラ」と「儚さ」だった。何も、今好きな地下アイドル達がキラキラしていない、などとは思わない。私がそれ以上に主張したいのは、地下と地上の製作費や規模感の差なんてものではなく、彼のアイドルとしての「儚さ」だ。この儚さがあることで、私の中で彼は「日常」になることはない。絶対にだ。そして、彼が「日常」になる時、それは私が彼のファンを辞めるときだろう。彼がいることが当たり前で、彼がいる現実が、彼を見ることのできる現実が「日常」になった時、私は彼を「自担」と呼ばなくなるだろう。
事務所や、規模や、制作や、演出なんて関係ない。彼が何十年と培ってきたアイドルとしての技術は、私にビシバシ伝わってきたし、その技術の先には届きそうなのに今にも消えてしまいそうな儚さがある。その消え入りそうな光が、あまりにも、あまりにも美しくて、私はそれを求めて今も彼のオタクをしている。光が手に入ったら、光が消えてしまったら、私は彼のオタクではなくなるだろう。
アイドルは、キラキラだけじゃない。儚くて美しい、1つの偶像である。
いつか、あなたと目を合わせて笑い合える日が来ても、同じように私はあなたを現実として受け入れられないのでしょう。「夢?」なんて考えながら、飲み込みきれないのでしょう。でも、目を合わせた過去なんてあなたの中ですぐに上書きされてしまうのだから。だから、何度でも見つけて、何度でも非日常に連れて行って。私はあなたのことを掴むことができないの。掴んだら消えてしまいそうで、怖くてできないの。
ある曲の冒頭、彼は「僕の瞳に恋しちゃう?」みたいなことを言った。
ねえ教えてあげる。私はとっくに恋してるよ。あなたの虜で仕方ないの。これからも恋させて。狂おしいほどにあなたが大好きです。あなたがスタンド席に大きく振った手の中に、私がいますように。
気が向いたら見つけてね。私はずっとあなたに生かされてるから。
あなたが、大好きです。