未来は選べる
発声技術の習得には長い時間かかる、と一般的には言われています。
そして実際に多くの場合がそうなのだろうと思います。
私自身の経験を振り返ってみても、発声がある程度落ち着くまでには5〜6年ほどかかりました。しっかりと歌えるようになったのは、そこからさらに数年後のことです。
だからといって、これから歌を真剣に学びたいと思っている人たちへ「心して挑みなさい!」と言いたいわけではありません。
むしろその逆で、「私はなんでこんなにも時間がかかってしまったのだろう?」と思っているくらいなのです。笑
今回はその理由と、必要以上に長い時間をかけないためのヒントについて書いていきます。
私自身のことを振り返って今思うことは、技術習得のためだけならば、そこまで長い時間は必要なかっただろうな、ということです。
むしろそれよりも、わたし自身が変わっていくための時間が必要だったように思います。
それは自分が指導する立場になってみて、あらためてわかることでもあります。
年齢、レッスンの頻度、楽器(喉)のセッティングなどによっても違ってきますが、正しい時間だけを積み上げていくことができれば、早くて1〜2年、長くとも5年あればある程度までは歌えるようになるのでは、というのが今の私の見立てです。
もちろん、才能があって本気の覚悟があることと、良い指導者に習うことが前提です。
けれども、現実にはどれだけ努力しても、時間をかけても、なかなか歌えるようにならない人たちが多くいます。私もその一人でした。
そしてそういう人たちは、ただ進歩がゆっくりであるということではなく、良くなったと思ったら後退し、そこからまた良くなったと思ったらまた後退する。といったように、一進一退を繰り返していることが多いのが特徴です。
そういう場合は、紛れもなく「思考」が影響を及ぼしています。
思考は私たちが思っている以上に、現実に大きな影響を与えています。
「上手くいかなかったらどうしよう」
「もっと早く上達したい」
という不安や焦り。
「自分を良く見せたい」
「失敗したくない」
という虚栄心。
「人の目が気になる」
「人と比べてしまう」
という自意識や競争心。
「自分にはまだまだ何かが足りない」
「自分なんて大したことない」
という不足感や無価値感。
過去に教わってきたことの影響を受けたままの自分でいると、こんなふうに様々な感情が湧き起こってくることがあります。
これらのネガティブな思考や感情を抱いているときというのは、決して心地のよい状態ではありません。
この状態では、どれだけ努力しても報われません。自らの手で成長を止めているようなものです。
なぜなら、私たちはネガティブに取り巻かれている状態では、本来の自分と繋がることができないからです。
自分と繋がることができなければ、私たちの体は自然に機能しません。音楽を感じることも、心地よく演奏することもできません。
それだけでなく、ネガティブな思考によって、上手くいかない現実が増幅してしまうことにもなるのです。
レッスンでどれだけ良くなったとしても、それ以外の時間の過ごし方が変わっていかなければ、元の自分に引き戻されてしまいます。
それが、レッスンで良くなった!と思っても、またすぐに元に戻ってしまう理由です。
音楽に限らずなにかを学んでいく上で、建設的であることはとても大事なことです。それはつまり、良くなっていこうという前向きでポジティブなあり方のことです。
「思考」が変わらなければ、歌は上達しません。
そのためには、今までの古い観念を、少しずつ自分が望むものに入れ替えていく必要があります。
日々の暮らしの中で気づきを体験しながらジワーッと変わっていく、そんなイメージです。
これこそが時間のかかるプロセスであり、ここを越えていけるかどうかが、大きな分岐点になります。
そのために、私が大事だと思うポイントを3つ挙げておきます。
1、ネガティブに留まらないこと。
ネガティブな感情が湧いてきたとしても、そこにジト〜っと居続けないことです。
2、自分の望みをクリアにすること。
こうなっていきたいという信念を強く持つことです。自分の望む方向を見ていくことで、ネガティブな思考から抜けることができます。
3、やるべきことをやること。
雑念に捉われず、今やるべきことに正面から向き合うことです。
声が変わっていくことと、自分の思考が変わっていくことは、同時に起こっていくことです。声だけが良くなるということはあり得ません。
「思考」を変えることは、自分を変えることです。
「問題点」ばかりを思考するのではなく、「望み」や「解決策」を思考していきましょう。
それがポジティブを選択していくということです。
前向きに自分と向き合っていくことができるようになると、それは自信にも繋がっていきます。
思考を選ぶのは自分です。
明るい未来を引き寄せていきましょうね!