なぜモノマネができないのか?
『モノマネしてごらん』
私が生徒さんによく言うことです。
これがいやはや、とても難しいことなんですよね。
「なにがそこまでモノマネを難しくさせているんだろう?」
いつもぼんやりと考えていました。
そんなとき、最近読んでいた本の中の、この文章にそのヒントとなることが書かれていました。良い本ですよ!
「真似る」は「観察」すること。
現実を直視すること。
自分の「できない」に向き合うこと。
本当にそうなんですよね。
だからこそ、真似るよりも手っ取り早く、自分でなんとかしたくなるのだと思います。
わかりやすい「正解」が欲しい。
このモヤモヤから逃れたい。
はやく「正解」を見つけてスッキリしたい。
そんな焦りや衝動から、「真似る」を軽視してしまうのだと思います。
そしてそれ以前に、自分達の学び方が『自己流』に陥っているということにすら、気づいていないのではないでしょうか。
🔹🔹🔹🔹🔹
私たちは教わり方を知らない
日本の音楽大学では、週に1回のレッスンが通常です。週に1回1時間程度のレッスンで、基礎が学べるわけがありません。しかも多くのレッスンでは、先生に問題点を指摘されて、「もっとこういう風に歌いなさい」と正解を求められます。
そこで、レッスンで先生に言われたことを自分なりになんとかしようとします。これだと、教わっているつもりかもしれませんが、実際には『自己流』を任されているに過ぎません。
どうやったらそれができるのか?「HOW」は教えられることなく、結果だけを提示されて、「自分でそれができるようになりなさい」と言われているのです。
そういうレッスンを当たり前のように受けていると、「自分でなんとかするもの」というのも当たり前になっていきます。
私も大学時代の先生に、『発声はしてきた?発声練習は自分でやりなさい。』と言われていました。今となっては、なんて無責任な言葉なんだろう、と思います。
先生は教えているつもりでも、実は何も教えていない。
生徒も教わっているつもりが、実は何も教わってきていない。
これが、多くの人が『教わり方』を知らない理由です。
🔹🔹🔹🔹🔹
教わるということは、真似るところから始まるものです。
『モノマネしてみて。』
『考えずに思い切りやりなさい』
私のレッスンでは、ありとあらゆるデモンストレーションを交えて、とにかく真似してみて!と言います。
『真似る』ということは『型』を学ぶということです。やっていることの理解や意味付けは後からでいいのです。考えずにとにかくやってみる!そこからしか始まりません。
ここで『自己流』に慣れ過ぎている私たちは、いろんなバイアスが影響して、ただ「真似る」ということが難しくなっています。
自分をコントロールしようとする癖。
思い込みや観念。
間違った認知。
恐れや不安などの感情。
いろんな影響が相まって、「真っ新な状態でただ真似る」ということをできなくさせています。
今まで培ってきた認識をベースにして、新しいものを取り入れようとしても、その認識にズレがあれば、新しい何かを正しく受け取ることはできないのです。
🔹🔹🔹🔹🔹
モノマネに必要なことは?
『常識とは、あなたが18歳までに身につけた偏見の塊である』ーアインシュタイン
自分が常識だと思っていることは、ただの偏見に過ぎない、というアインシュタインの言葉にもあるように、私たちはさまざまなバイアスによって、いとも簡単に騙されてしまう生き物です。
「真似る」ために必要なことは、観察力です。
そして、真似ることで『観察力』もさらにアップします。
観察力が高まれば、バイアスも剥がれていきます。
Observe yourself!! 自分をよく観察しなさい。
イリヤンもいつも言っていることです。
どれだけ自分の当たり前を疑えるか。
自分の常識(偏見)を抱えたままでは、ものごとをあるがままに見ることも、そしてその真意や本質を捉えることもできません。
『毎日真っ新な気持ちで、今日生み出すサウンドが人生で初めて生み出すサウンドのような気持ちで歌いなさい。』ーイリヤン
昨日の常識に捉われず、今日を新鮮な気持ちで過ごしましょうね!