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声楽レッスンと器楽レッスンの違い

声楽のレッスンの受け方は、器楽のレッスンの受け方とは大きく違います。意外と知られていないことなのかも!とあらためて気づいたので、違いについて書いていこうと思います。

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声楽レッスンは、先生と一緒に練習をする場です。レッスンでは、先生と一緒にウォームアップから始めます。私のレッスンでは、発声練習はして来ないように、レッスンでその日の第一声が出せるように、と生徒さんたちに言っています。

それに加えて、コーチングというのも存在します。コーチ(コレペティ)によるレッスンのことで、オペラや声楽曲においてのディクションから音楽表現までを学びます。レッスンでは、コーチのピアノに合わせてすぐに曲を歌い始められるよう、事前にウォームアップを済ませておく必要があります。イリヤンが私の歌の生徒さんに指導する場合は、このコーチングにあたります。

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一方、器楽レッスンは、声楽でいうところのコーチングのようなものになります。そのため、しっかりと事前にウォームアップをしてレッスンに臨む必要があります。レッスン後には、先生から教わったことを、十分な時間をとって、一人で練習する必要もあります。それは、レッスンで言われたことを元に、自分なりに研究して、理解を深めていくこと、そして感覚を養っていくためのものです。

もちろん基礎技術を習う際は、レッスンの中で先生と一緒に練習する場合もあります。けれども、器楽レッスンでは、毎回のレッスンが練習ということではありません。先生に言われた方向性で、自分で色々と試してみることや、言われたこと以外にも、自分なりに考えて積極的にチャレンジしてみる姿勢も大事です。

歌のレッスンは、それとは大きく違います。特に、楽器としての身体の使い方の基礎を学んでいる段階では、どれだけ練習しても、レッスンでできないことを、ひとりでできるようにはなりません。声楽は、器楽奏者よりもレッスンを高い頻度で受ける必要があります。なぜなら、声楽家にとっては、「レッスン=練習」だからです。

最初のうちはできるだけ、一人で誤った発声運動を繰り返さないためにも、先生の耳を借りる必要があります。体が楽器であるということは、少しのズレが大きな歪みを生んでしまうことにもなります。一人で誤った練習をしてしまうくらいなら、何もしない方がまだマシ、とすら言えるのです。「レッスン=練習」と割り切って、声を出すのはレッスン中のみ、それくらいが本当は望ましいところです。

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私の場合

私の先生であるフランコは、ニューヨークに住んでいたのですが、ある時期フロリダに引っ越しをしました。
さて、フランコに習っていた生徒さんはどうしたと思いますか?

なんとみんなフランコと一緒にフロリダに引っ越しました。フロリダで家を見つけて、仕事も見つけて。みんなたくましいですよね。
私は外国人だったこともあり、完全にフロリダに生活基盤を移すことは難しく、ひと月のうち1週間はフロリダで暮らす、といったように、ニューヨークとフロリダを行ったり来たりしていました。フロリダでの生活のために、運転免許も取得しました。そして、ほぼ1日おきにレッスンを受けていました。フランコから、『今日、何時にレッスンだよ』と言われたら、いつでも駆けつけられるように、当時はレッスンのために全てを捧げて生きていました。レッスン以外では歌わない、ということも徹底していました。

そこまでは難しいとしても、本来声のトレーニングをしていくためには、それくらいのことが必要なんだ、ということは覚えておくと良いと思います。

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練習についてですが、レベルにもよりますが、最初は10分練習したら一旦休む。そしてインターバルをとってから、またさらに10分練習する、といったように、小刻みに練習するのが良いです。声が機能するようになってきたら、10分を20分に変えても良いです。それを多くて3セットまでが、歌手の練習時間です。思ったより少ないですよね。歌手は、器楽奏者のようにはたくさん練習ができません。

私の場合は、最初の10〜20分で発声練習をして、次のセットで曲を練習する、という場合が多いです。その際、発声から曲の練習まで、全体で45分くらいの練習時間です。曲を練習する際も、通して歌うということはほぼありません。必要な部分だけを取り出して練習しています。

練習の際に大事なことは、うまくいかないからといって、何回も繰り返し同じ練習をしないことです。繰り返しは3回まで!それでうまくいかなかったらスパッとあきらめることです。

声のトレーニング過程において、声は少しずつ変化していきます。一気に大きく変わる、ということは不可能です。うまくいかない場合は、「何かやり方が間違っている。まだ今じゃない。」このどちらかに原因があります。
そこで何度もしつこく練習してしまうと、誤った運動を繰り返すだけで、余計な癖を身につけてしまうことになります。
さっさとあきらめて、レッスンで先生と一緒に練習しましょう。

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まとめ

楽器の練習は数時間必要ですが、歌の場合は長時間練習することができません。ただその分、レッスンの回数が必要になってくる、ということです。

声楽のレッスンと、楽器のレッスンでは、教わり方、その準備に至るまで、こんなにも大きく違いがあるんです。ここを混同してしまうと、レッスンの意義が半減してしまうことにもなります。

そのことを理解した上で、レッスンや練習に臨めると良いと思います。

今日はこのあたりで。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

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