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考えずにただやれば良い。

『SHUT UP AND DO IT!!』

レッスンのときのフランコの決まり文句です。
「つべこべ言わずやりなさい!」そんなところでしょうか。

『考えずにただやれば良いのよ!』
私もレッスンでよく言うことです。余計なことを考えず、ただやる。このシンプルに思えることが、意外とできなかったりするんですよね。

私たちの体は自然であるときに良く機能します。人が自然に機能しているときというのは、『本能で動いている』状態です。考えて動いている、というわけではありません。人の体というのは、考えなくても勝手に動くように作られています。それをあえて操作しようとするところから、誤作動が生まれます。

日常のシンプルなモーションについて思い浮かべてみてください。
コップを手に取って水を飲むとき、歯を磨くとき、シャワーを浴びるとき。それらひとつひとつの動きについて考えたりはしませんよね。何も考えなくても自然と勝手に体が動いてしまう、くらいのことだと思います。

考えてしまうと、自然に機能することはできなくなります。意図して体を自然に動かそうとすることは不可能なんです。

何かをやろうと考えることは、直接的にコントロールしようとすることでもあります。考えているとき、私たちの機能は一旦ストップします。「止まる、考える、そしてやる。」こんな風に、動きの中に休止符(ゼロモーメント)が生まれるんですよね。

UFOキャッチャーをイメージするとわかりやすいと思います。クレーンを上下左右に動かすたびに、「止まる、考える」というゼロモーメントが生まれます。全ての動きを意識するということは、こんなふうに機械的で不自然な動きを生み出すことになるんです。

自然であるということの特徴は、常に流れの中にある、ということです。全ては繋がっていて、流動的であるということ。そしてそれこそが本能でもあるんです。

本能のひとつに、「バランスをとる」ということがあります。バランスは自然に生み出されるものです。筋肉のバランスにおいても同じことが言えます。本能によって、バランスが保たれている、ということなんです。

では、意図的にバランスを取ろうとした場合、どうなるでしょうか?
そこにコントロールが加わることで、バランスは取れなくなります。バランスを取ろうと考えた瞬間にバランスは取れなくなる、ということなんです。

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ここからは、それがどんどん酷くなっていった場合の話です。

やろうとすればするほど、考えれば考えるほど、意識すればするほどに、人の体というのは機能しなくなっていきます。そこで、考えないようにしよう、意識しないようにしよう、と思ったとしても、多くの場合、それは癖になっていて、本能のままに身を委ねることができなくなっています。

その結果、体が機能しない、動きがスローダウンする、ということが起こっていきます。本能に任せていれば上手くいくことを、意識的にやろうとすることで、多くの問題は生まれます。真面目で頑張り屋な生徒さんほど、やろうとし過ぎてそれが仇になることが多いです。

そこからさらに進んでいくと、「自分で決める、選ぶ、行動する」といった、意識が働かなくてはいけない状況で、それが働かない人になることがあります。また、本能に任せていればいいところで変に意識的になったりもします。シャキッとしないといけないところで、ボーッとした人になったり、自然にしていればいいところでおかしな動きをしてしまったり、といった具合に、意識と本能の反転現象が起きることもあります。

楽器を演奏する、歌をうたう、という行為から派生して、普段の生活にも支障をきたすほどに、不自然が癖になってしまっている人が多くいます。

イリヤンと私は、音楽がきっかけで、音楽以外の人間としての機能が歪んでしまった人たちをたくさんみてきました。その人の生まれ持った、デフォルトなセッティングを崩したり、本能を摘み取るような指導者によって、ハンディキャップを背負ってしまう音楽家は本当にたくさんいます。

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では、私たちが本能を使って、自然な機能を取り戻していくためにはどうすれば良いのでしょうか?

それは、体が機能するための『正しい方向づけ。正しい働きかけ。』をしていくことです。方向づけをして働きかけたら、あとは体が勝手に動いてくれるのを見守るだけです。

働きかける、ただやる、ただ感じてみる。
そして、体が機能してきたらその感覚に慣れていくことです。

意識的に結果を出すことはできません。結果が出ないからといって思い悩んでも、それは意味のないことなんですよね。

それができるかできないかは、全て本能にかかっています。私たちにできることは、本能を呼び覚ますために、正しい方向性で働きかけていくことだけです。

『SHUT UP AND DO IT!!』
まさにこれなんですよね。つべこべ言わずやりなさい!ということです。

考え過ぎずに練習しましょうね!

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