人に対して無関心、無気力な日本人
『日本人はAPATHYな人たちが多いね。』
日本で暮らし始めたイリヤンがよく言っていることです。
APATHYとは、無関心とか、無気力、冷淡、などの意味ですが、イリヤンは人間関係の希薄さをAPATHYという言葉で表現しています。
自分がどう見られるか、ということには最大の注意を払っていても、身近な人がどんなことを考えて、何を思っているのか、そのことには深く立ち入ろうとしない。言ってみれば、自分さえ良ければ良い、という人が多いように思います。
他人の意思を尊重する、と言えば聞こえは良いのですが、それも過ぎると、相手との距離を保ちながら、相手の領域には踏み込まない、というドライ(冷淡)さにもなります。
生徒さんたちを見ていても思うことです。多くの人たちは、本当に自分のためを思って、自分としっかり向き合って、本当のことを言ってくれる人たちや先生たちに出会ってきていません。
先生たちも生徒の人生にそこまで深く踏み込まないし、そこまでの責任も持てない。生徒の人生に深く関わっていけるだけの、確固たる指導力を持っていない。そしてその情熱もない。それ以前に、先生としての威厳を損なわないことだけに徹している人々も多いように思います。
「先生は私の意思を尊重してくれて、割と自由にしてくれる先生でした。」
こういうセリフをよく聞くのですが、私からしたら、その先生が教えられない人で、何をどうして良いか分からず、そういうスタンスになっているのではと思います。
何をどうしていいか分からなければ、生徒との距離が縮まることもないでしょう。そういう先生からは教わることはできません。
音楽を学ぶということは、人生全体が変わっていくということです。
先生の素晴らしい知識や経験を聞いて、良い話を聞いてためになった、勉強になった、と思うかもしれませんが、そのことが自分が変わっていくことに繋がっていかなければ意味がありません。
自分が変わるとは、自分の考え方や感じ方が変わり、行動が変わる。そして自分の視点が変わり、意識の拡大が起こっていくまでのことを言います。
それは全て、自分の内側で起こっていくことです。
ということは、自分の心の奥深くに浸透していくような、自分の内側が刺激されるような体験がなければ、変わってはいけないということです。
『僕は生徒の体の中へ入って行って、その感覚、感情までを診断している。だからこそ、生徒の内側へアクセスできるんだ。内側へアクセスできなければ、生徒自らの力で変わっていくためのサポートはできない。』
イリヤンが言っていたことです。
ああしろ、こうしろ、とただ外側から直接的に指示するだけの指導は、混乱を招きます。たまたま上手くいくこともあるかもしれませんが、先生の方は推測を元に言っているに過ぎません。
何度も言うことですが、音楽は人から学ぶものです。
そして、一方的に教えるものでも、教わるものでもありません。
先生の情熱と、生徒の情熱が掛け合わされなければ成立しません。それはまさに共同創造です。
APATHYな人間関係から音楽は学べません。上下関係からも音楽は学べません。どこかで人と深く関わる、という経験が必要になってくるのです。
先生も人間です。完璧な人ではありません。その人のことを深く見ていくと、未熟な面も見えてくるでしょう。
そういう人間らしい素の部分を見せてくれる先生はとても貴重な存在です。
生徒の前ではカッコつけて、威厳を保って、隙を見せたくない。そう思っている先生たちはたくさんいます。
誰しも苦手なことがあったり、未熟なところがある、それを受け入れていくということも大事なことです。
お互いに良いところだけを見せ合っていては、関係性は深まっていきません。
その上で、やはり尊敬できる、この人から学びたい、と思えたら、そこから本当の意味で先生と深い人間関係を築いていけるようになるのです。
イリヤンに習ったことのある生徒さんたちが、みんな一様に驚くことは、『ここまでしてくれるの?』ということです。
熱心な指導だけでなく、自分のことを見てくれている、ちゃんと考えてくれている、ということが感じられて、涙を流す生徒さんたちがたくさんいます。
私が、『〇〇さん(生徒さん)、あなたのレッスンをすごく喜んでたよ。』というと、イリヤンもものすごく嬉しそうにします。『僕たちは良いことをしたね。』と満足そうに言います。
人は人によってしか変われません。本当に親身に教えてくれる先生に教わる、という経験はとても大事なことです。
逆に言うと、そういう経験をしたことのない人が、人を育てる立場になっていくことはないでしょう。
私やイリヤンが、生徒さんと深く関わったり、良くしてあげよう、と思えるのは、私たちもかつて、そのように育ててもらった経験があるからです。
良い人間関係が、さらなる良い人間関係へと繋がっていくように。私とイリヤンはそんな思いでいつも指導をしています。
マスタークラスやります!
私とイリヤンも新たな生徒さんたちとの出会いを楽しみにしています。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
今日も良い1日を😊