ファンカラティーナって何ぞいや??
皆さまは「ファンカラティーナ」という言葉をご存知でしょうか?なんかカクテルの名前みたいですが、80年代初期に一瞬きらめいた音楽ブームのことです。まあ、正確にはブームというほど盛り上がってないのと日本以外では通用しないらしく、日本の音楽業界やマスコミが、同じような音のバンドを一括りにして売り込みをかけたということでしょう(同じような時期に「ツートーンブーム」や「ニューロマンティックブーム」なんてのもありましたが、こちらも機会があれば触れてみます)。
「ファンカラティーナ」とは、「ファンク」+「ラテン」という意味で、ファンキーでダンサブルな音に、ラテンっぽいフレーバーが入っている感じぐらいのイメージで捉えて頂ければと思います。後からUSのディスコやサルソウルの歴史、当時のJAZZフュージョンの動向を見れば、さして新しいものでもないんですが、ポップスに大胆にエキゾチックな味付けがされたヒット曲の数々に、すっごい楽しい音楽がいっぱい出てきた!と子供ながらに思ったものです。では、当時のバンドを振り返ってみましょう!
Haircut 100
まず一番にご紹介したいのがヘアカット100(Haircut100)です。ニック・ヘイワードが率いるこのバンド、1981年、デビュー・シングル「フェイバリット・シャツ (好き好きシャーツ)」が大ヒット。ギターのカッティングとラテンパーカッションがかなりファンキーな一曲でブームを象徴するナンバーですね。このバンドの魅力は、ソングライティングが非常に優れているところ。後のネオアコにつながる、誰もが持つ思春期の甘酸っぱい思いを刺激するメロディです。「渚のラブ・プラス・ワン」「ノーボディーズ・フール」などのポップなナンバーもヒットし、日本でもCMソングに使われていました。デビュー・アルバム『ペリカン・ウェスト』は今も時々聴きたくなる名盤です。落ち葉の中、ケーブルニットで寝転ぶジャケットもオシャレ!残念ながらアルバム発表後ニックが脱退し、2枚目は低迷し解散しました。
Modern Romance
80年代前半のイギリスで、キャッチーなヒット連発してたのがこのバンド。明るいポップナンバーにラテンサルサな味付けがハマり大人気でした。「Best Years of Our Lives」「High Life」なんかが今もよく夏の季節のCMに使われていたりします。メインのキャラが弱かったせいか、日本での人気もパッとしなかった記憶しています。私の一押しは、ラテンナンバーではなく、ブルーアイドソウルなバラード曲の「Walking in the Rain」です。
Blue Rondo à la Turk
ブルーロンド・ア・ラ・タークは、一番ジャズフュージョンっぽさが残ったバンドで玄人好みなんですが、ポップさがなかったので当時の日本ではあまり話題になってなかった気がします。「Me and Mr. Sanchez」なんかがヒットしました。アルバム2枚で解散するんですが、このグループの数名がマットビアンコを結成して、キャッチーな楽曲でヒットします。
Kid Creole and the Coconuts
キッド・クレオール&ザ・ココナッツ(Kid Creole and the Coconuts)は、イギリスではなくアメリカのグループ。1980年にニッカのウィスキーのTV CMにも「DON'T TAKE MY COCONUTS」の曲で日本のお茶の間にも登場したと記憶してます。バンドの中心はニューヨークきっての伊達男キッド・クレオールことオーガスト・ダーネル。1930年代のビックバンドをヒントにしたゴージャスな編成で、カラフルなズートスーツに身を包みキャブ・キャロウェイなんかのキャラクターを意識したスタイルで大きな話題となりました。コミカルな印象もありますが、前身の「Dr. Buzzard's Original Savannah Band」の流れをくむ「Stool Pigeon」「I'm A Wonderful Thing, Baby」なんかのダンスナンバーが今でもかっこいい。ライブ映像がほんと楽しくてエンターテナーだったんですね。このあたりは米米クラブのカールスモーキー石井がかなり影響を受けてましたね。
Funkapolitan
そんなオーガスト・ダーネルのプロデュースでデビューしたのがファンカポリタン。ラテン味は控えめながら、シックのようなタイトなダンスナンバーでブリットファンクの一角を担いました。
Dr. Buzzard's Original Savannah Band
前出のオーガスト・ダーネルがキッドクレオール&ココナッツ前に兄貴と一緒にやっていたバンド「オリジナル・サヴァンナ・バンド」。DJ界隈ではいまだに根強い人気で、日本の音楽業界にもラテンフレーバーの取り入れ方として参考にされていたと思います。ディスコブームの真っ最中の76年にデビュー。サルサなんかが根付いていた移民の街ニューヨークという場所柄もあり、ダンスサウンドにラテンミュージックを取り入れビックバンドで演奏するアイデアは自然なことだったかもしれません(同時代にサルソウルオーケストラなんかもありましたしね)。音もイメージも豪華で洗練されており、当時流行の最先端だったStudio54なんかでも大人気だったとか。まさにファンカラティーナの源流ですね。
個人的にお気に入り、和製サヴァンナバンドチューン 中原めいこ「魔法のカーペット」
その他のバンド
その他、以下のバンドをファンカラティーナ文脈で紹介していることもありますが、個人的には少し違うかな、、って印象です。
同時代のウィークエンド(Weekend)はもっとマイナーで、ラテンというよりボッサやアフリカンなナンバーがアルバムに入ってる感じ、ピッグバッグ(Pigbag)も、フェラクティなんかのアフロビート、ファンキーなインストバンドという印象。Animal Nightlife は85年デビューで時代的に後で、ブロウモンキーズやスタンカンよりのもう少しオーソドックスな感じです。
ファンカラティーナ的なバンドの盛り上がりは、数年で短命でした。アーチスト自身が成長を求めた結果、すぐ解散して次のサウンドに移行したり、打ち込みやスタジオ技術が進化する中で、ホーンセクションやパーカッションなどの大編成バンドを維持するのが難しかったり、サウンド自体が飽きられた感もありました。しかしパンクブームのおかげで、ロックやポップスに様々なアイデアが持ち込まれ、アーチストが自由に創意工夫を行っていた80年代初期の煌めきとして、ぜひ聴いてみて頂ければと思います!きっと楽しい気分にさせてくれること間違いなしですよ!