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The Melody at night with you

朝起きていつものようにタブレットを開くと衝撃的なニュースが飛び込んできた。
                                  

長い沈黙を破ったキースジャレットのニューヨークタイムズのインタビュー記事である、世界的なジャズピアニストであるキースジャレットは2度の脳卒中の後遺症に伴う左半身の麻痺のせいで演奏活動を再開できる可能性が限りなくゼロに近いという、どうしても信じられない信じる事ができない内容だった。

僕は旧い友人である女性ピアニストにすぐにメールを入れた、彼女もとても驚いているようだった。

ニューヨークタイムズの原文を読んだところ、キースはビバップの曲の多くを脳卒中の影響で忘れてしまったという。

そしてそこにはキースの深い悔しさが綴られていた。

僕はキースのピアノを愛している一人だ、歴史的な名盤と言われるケルンコンサートにおける、音楽の神に選ばれた人間としか言いようのないキースの圧倒的な想像力には何度聞いても驚愕させられるし。

またゲーリーピーコック、ジャックディジョネットとのトリオで聴き慣れたスタンダードに新たな命の息吹を吹き込む瞬間が、いつだって僕の気持ちを高揚させてくれた。

でも僕がキースの多くのアルバムの中で特に愛してやまないアルバムがある。

それがThe Melody at night with youだ。

慢性疲労症候群という難病に侵されたキースを2年に渡り献身的に看病した愛妻ローズ・アン・ジャレットに捧げられたキースのピアノの独奏だけで録音された世にも美しく深い愛に満ち溢れたアルバムだ。

僕はかれこれ20年以上もこのアルバムを愛聴している、深夜に一人で部屋で酒を飲んでいる時、部屋で読書をする時、心が疲れて何も考えたくない時、どんな時も僕の生活にそっと寄り添ってくれている。
               

それはまるでローズがキースに寄り添うように。

僕の中で、キースにもう一度復活してもらいたい気持ちと、キースの残りの人生がただただ穏やかなものであって欲しい気持ちが揺れている。

ただ言えるのは、この僕にとって家族のような一枚が僕の人生にとって必要不可欠なものだと言うこと。

さあ今夜も酒を飲みながらThe Melody at night with youを聴こう、その音は今夜も僕を癒して、僕の肩にそっと寄り添ってくれるはず。

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ディスク岩本のジャズの穴。
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