「誰が勇者を殺したか」から感じたこと
「このライトノベルがすごい!2025」をぺらぺらめくっていて、見覚えがあるタイトルがありました。
「誰が勇者を殺したか」という「なろう」系らしくない(?)シンプルなタイトルです。
実は、過去に「なろう」のどこかでこのタイトルを見たような記憶があり、もしかしたら読んでいたかもしれず、タイトルは印象に残っていたのだけれど、内容は思い出せない、という状態でした。
「このラノ」では文庫部門2位、総合新作部門1位、作者インタビュー付き、ということでとても好成績。
そんなに面白いなら、ということで読み直してみましたが、私にとってもとても面白く、満足できる一冊でした。
この記事では、この作品を通じて考えたことを書いてみます。
勇者というのは何なのか
「主人公補正」という言葉があります。ライトノベルをはじめとする色々な話において、主人公だけが特にラッキーだったり、異性に人気だったり、強力な力を身につけられたりする、という現象を指しています。
主人公だけにいいことが起きるということで、ご都合主義として批判的に見ることもできるし、主人公に共感できなかったりする原因になったりもします。
主人公が主人公たりえる理由付けがうまくできていなくて、「主人公補正」がされてしまう作品というのは、(その世界線においても)現実的ではなさすぎ、私としても興ざめになってしまうものです。
ただ、別の見方をすると、たまたま「主人公補正が発生した人」を「主人公」に据えたから「主人公補正が発生する」という見方もできます。
勇者を目指した人は1万人いて、9999人は死んだけれど、生き残ったひとりを主人公に据えて話をしているんだ、という世界観です。
話の構造に対する、このメタな見方は結構好きなのですが、本作はこの概念をうまく別の切り口で提示してくれたなぁと感じています。
どうしてこんな人物が勇者たりえたのか、別の作品とは違う理由付けがされていて、そこが感情を揺さぶられるポイントでした。
お気に入りのキャラクター
これは断トツでマリアです。
猫をかぶっている腹黒キャラって好きなのですよね。
書き下ろし短編もいい感じに歪んでいてゾクゾクきます。
そんなわけで、おいしいパンをよこせと言い放つマリアのイラストもとてもお気に入りです。この、性格が歪んでいる黒髪ロングの美人さんに見下ろされるかんじがとても良いです。
良いキャラなのですが、前述のような話の構造から浮いていない、というのも好感が持てるポイントです。