I 'm a stranger here.
知らない人からよく道を尋ねられる。
そこが慣れ親しんだ場所であればまだしも、初めて行く場所でもだ。なぜなのか。私が道に詳しそうに見えるのか、或いは、知らない場所でもあたかも地元の人のような顔をして闊歩しているのだろうか。
私は内向的で人見知りでもあるため、突然知らない人から声をかけられると、驚きと同時に緊張が走る。
そうは言っても、リアクションが薄く感情が表に出にくいため、見た目にはわかりにくいらしいのだが、内心ではかなりドキドキしている。
ただ、良くも悪くも真面目な性分であるため、内心ドキドキしながらも、なんとか行き先をわかりやすく案内せねば!という思いが勝り、反射的に最適解を求め頭をフル回転させている。
しかしここで問題なのが、私が全くもって道に詳しくないという悲しい事実だ。
目の前で道に迷い困っている方に何とかお答えしたいという思いだけは人一倍なのだが、とにかく道を知らない。
地図を手に持てばグルグル回し、なんなら自分もその場でグルグル回り現在地を確認するし、◯◯を北に〜と方角で説明されても何一つピンとこない。
自宅周辺でも、試しに路地に入ろうものならあっという間に迷い、結局もと来た道を戻り、いつもの知っている道を通り帰宅する始末だ。
こんな私に、なぜ道を…。
もし私が知ったような雰囲気を醸し出して歩いていたのなら、紛らわしいことをして本当にごめんなさいと謝りたいくらいだ。
そんなだから、いつも道を尋ねられる度に、とにかく悩み、時には検索し、何とか答えを絞り出している。
遠出をし初めて降り立った駅のホームで、外国の方に乗り換え方法を聞かれた。私はもちろん電車にも詳しくないので、見当もつかなかった。
しかし、ここは日本。いくら初めての駅、路線とは言っても、日本人である私の方が彼女達より少しは理解できているはずだと咄嗟に思い、「私もわからないです」の言葉が出るより先に体が動いていた。近くの乗り換え案内板まで走り、更にスマホで検索し、どの電車に乗れば良いか、たどたどしい英語で何とかお伝えした。
さらに小心者でもあるやっかいな私は、もしここで別れたあと、彼女たちが間違った電車に乗って余計に迷ってしまったらどうしよう…異国の地で…と一気に不安になり、正しい電車がホームに来るまで待機し彼女たちを見送り、ようやく不器用な案内を終えた。
一緒にいた友人から、駅員さんを探して委ねたらよかったのに…と後からぼそっと言われた。
確かに…。
どうやら、スマートな案内ができる大人には一生なれそうにない。
そして先日、ついに自分のマンション内で道を尋ねられた。
少し言い訳をすると、私の住むマンションは世帯数が500と割と規模が大きく、複数の棟がつながっており、少々複雑といえば複雑な作りをしている。
そして私はというと、自分の部屋番号以外のことはほぼ何も把握せぬまま、どれが何棟なのかさえも知らず十年以上暮らしている。
そんな私がごみ捨てからの帰り道、呑気に廊下を歩いていると、出前中のお姉さんからカタコトの日本語で「205はどこですか?」と尋ねられたのだ。
205…2階であることは想像がつくが、どのあたりに位置するかが全く見当もつかなかった。住人なのに…。
そして、周りには誰もいない。お姉さんの手には美味しそうな香りのする熱々の出前の品がぶらさがっている。
…急がなくては!!
私は少し離れたフロントまでお姉さんとダッシュし、警備員さんに地図を書いてもらい、どこを曲がり何番目のエレベーターに乗れば良いという詳細まで教えてもらった。
それでもお姉さんが不安そうだったので、「途中まで一緒に行こう!」と、小走りで出前に同行した。
…1ミリもスマートな案内ではない。もはや案内でもなく、単に代理で道を聞いたにすぎない。しかも自分の住むマンション内で…。
何とか力にならねばという思いだけはいっちょ前だが、何せ知識が伴っていない。
これから私に道を尋ねる方、ハズレですよ、スマートな回答は得られません!共に迷う仲間が増えるだけですよ!と、事前にお伝えしたいほどだ。
さらりとスマートに、最短ルートをわかりやすく教えられる大人への憧れが増すばかりだ。
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