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家探し編② ドイツの恐るべき又貸し問題
こんにちは。前回の記事では、日本でドイツの部屋探しをしていたら不動産詐欺に遭った話を紹介しました。今回は、その続きのお話です。
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傷心の中、ドイツの物件を探し続けていると、「私のお部屋 1ヶ月貸します」という広告を妻が見つけてくれました。
警戒心をMAXにしながら、早速連絡を取ってみます。なんでも、1ヶ月休暇を取って旅行に行くのだそう。完全に個人契約で、1ヶ月分の家賃・光熱費に加えて保証金も必要とありました。
しかし、ここで気になることが2つほど・・・
――1ヶ月休暇を取るって、どんだけホワイト企業なんだ!
私が日本で正社員をしていた頃、同僚はもちろん違う会社の友人でも、特別な事情を除いて1ヶ月休暇を取る人など聞いたことがありませんでした。日本なら、もはや退職前の有休消化レベルです。
(ちなみに、私が日本のサラリーマン時代に取った最長休暇は1週間。特に新入社員の頃は、有休を申請しようとすると先輩から「その日は休むな」としょっちゅう言われ、結局友人の結婚式にも出られず、有休は計10日中4日しか使えませんでした・・・)
さて(笑)、1ヶ月の休暇は、実はドイツでは当たり前のことだそうです。正規雇用だと、有給休暇は平均年30日ほどあり、年に2回、約3週間~1ヶ月の長期休暇を取って、各々好きな土地へ旅行するのです。
実際、私が通っていたドイツの語学学校にも、「来週から1ヶ月フィリピンへ行って来るから、しばらくお別れでーす」という先生がいました。日本だと休暇を取るのは少し後ろめたい気がして、「すいません、明日はお休みいただきます、すいません、よろしくお願いします、スイマセン・・・」という感じが多いと思うのですが、ドイツでは本人も周りの人たちも特に気にする様子はありません。なんなら休暇明けには、「フィリピンめちゃくちゃ良かったわ~」と積極的に報告してくれます。
逆に休暇を取らない人は「お金も時間も余裕のない残念な人」に見られるんだとか。怖いですね・・・
そしてもう1つの気になること。
——この契約って、いわゆる「又貸し」じゃないの?
日本でも、アパートで独り暮らしをしている大学生が、帰省や留学のために1ヶ月単位で家を空けることはままあると思います。しかし、留守の間、赤の他人に部屋を貸して、しかもきっちり家賃まで戴くなどという話は聞いたことがありません・・・ というより、そんな発想すらありませんでした。
ただ、これも後で聞いた話ですが、ドイツ(あるいはヨーロッパ全域)で長期間家を空けておくのは、空き巣に遭う可能性が高くなり、よろしくないのだとか。また、部屋の機密性が抜群のため、換気せずに長期間放置するとカビが発生して、ヘタすると大家から損害賠償を請求されることもあるのだとか・・・
そういった背景もあってか、ドイツではそれが横行しているようです。Airbnbのようにオープンに貸しているものから、今回のように個人間でやるものまで様々です。しかし、いずれにせよ家賃や光熱費を戴いて住まわせるのは、違法なのでは??
たぶん日本なら、大家さんにばれたらアウトなやつです。ドイツはそのあたりがゆるいのでしょうか?
とはいえ、短期間でも住む場所があるのはありがたいことです。とりあえずお部屋を見せてもらうため、住人とビデオ電話をしました。30歳くらいのものすごく明るい女性が、部屋の隅ずみまで案内してくれ、本当にアパート自体が存在することは確認できました。
万が一に備えて契約書を作ってもらい、さらに不足事項を加筆してもらい、こっちで確認し、また修正してもらい・・・ スルスルと話が進んで、最終的に契約することになりました。
こうして、ドイツに着いた日から1ヶ月間、幸運なことに独り暮らしの方のアパートに住まわせてもらうことになりました。
しかし、これで安心するわけにはいきません。これから1ヶ月の間にハンブルクで賃貸物件を見つけなければならないのです。
このアパートはあくまで短期滞在かつグレーな又貸しのため、住民登録ができません。住民登録ができなければ、妻は学生ビザを発行してもらえません。観光ビザでドイツに滞在できるのは3ヶ月まで。つまり、遅くとも3ヶ月以内にアパートを見つけて住民登録を済ませなければ、妻は不法滞在者として日本に強制送還されてしまいます。
ここからが本当の正念場です。
夫婦のルーティーンである夜の散歩中、蒸し暑い日本の風を受けながら、憧れのドイツの地に思いを馳せ、2人で無事を祈りました。