天象儀

ダンボールに穴開けて
ライトで照らしたワンルーム
暗くした部屋の中で四角い部屋が夜空になる

ちょっと大きく開けた真ん中の星
君の名前を付けた星
今夜だけ君をここに閉じ込めて
ほんとの空の代わりにする

呆気ないくらいすぐそばに
指が触れそうなくらいにすぐ近く
怖くて伸ばせなかった手が
今なら簡単に届いてしまう

届かない手を伸ばし続けて
そんな手が偽りの星に届いてしまった
諦観していたのに
求めてしまったこの手が
何度も虚空を彷徨ったこの手が
幻の君には届いてしまう

喜びも
嬉しさも
欠片もなくて

寝転んでそらを見上げた
ほんの少し涙が浮かんできた

瞳に涙の波が立ち
星が揺らめき、ホンモノの夜空に見える

ニセモノの君が揺れるように
瞳の波が大きく揺らぐ

零れぬように
零れぬように

伸ばした指先が
届かないこの指が
ほんの少し安心した

ぼくしか知らない
ぼくしか見えない

偽物天体観測

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