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竪穴建物の土葺屋根は快適なの?


先日、岩手県の御所野縄文公園に行ってきて、縄文時代の竪穴建物の中に入り、当時の空間を体験してきました。ここは、初めて竪穴建物を「土屋根」で復原したところです。

それまでは普通ススキなどをつかった「茅葺」で復原されてきたんですね。しかし、御所野遺跡では、ススキの遺物が発見されず、樹皮や焼けた土などしかでなかったことから、屋根は「土葺」だろうと推測し、復原がなされています。

しかし、、、、
私が実際に行くまでは、土葺は煙がこもって、夏は暑くて、不快な居住空間ではないか!??と正直疑っていました。しかし、この土葺建物の居住体験や日々の管理というある種の「実証実験」通じて、様々な知見を担当者の方がお持ちでした。
結論から言うと、土葺屋根は茅葺よりも意外と快適だった、ということがわかりました。

竪穴建物の快適性

①湿度

土屋根だと湿気がこもりやすいように思いますよね?しかし、火を焚くと、半日ほど湿度が低くなることが実証実験によりわかっています。だから、一日2回焚くのがベストです。しかし、予算の関係から、毎日1回、午前中に火を焚いているそうです。近くの有名な三内丸山遺跡では、数か月に一回のようですから、非常に頻繁に火を焚いています。それにより、御所野遺跡の竪穴住居は、中がしっかりいぶされて真っ黒です。これで、建物の耐久年数もかなり伸びていると思います。

煙でいぶされて真っ黒です。

②保温効果

夏は夜の冷たい熱を蓄えるため、土蔵効果で、樹皮屋根より土屋根の方が涼しいです。冬はずっと火を焚いておけば土が蓄熱するし、熱が逃げにくいので温かいです。御所野遺跡では、土屋根と樹皮屋根の両方が復元されています。それらを6月末の暑い時期に交互に入りくらべてみました。すると、、、なんと土屋根の方がすずしいんです!樹皮屋根の方が空気が通り抜けて涼しいんではないか、と思ったら、逆でした。樹皮屋根の場合、太陽の熱がそのまま中に入ってくるようです。

③煙がこもらないか?

茅葺だったら、隙間から煙が抜けていきますが、土葺なら、煙が逃げるすきまがないので、煙たくて仕方ないのでは?と思っていました。
たしかに、全く通気口を設けなければ、煙が逃げる隙間がないので、煙たいです。しかし、土屋根を入母屋型として通気口を設ければ煙が外にでていきます。煙は上部にたまるので、立っていると煙たいですが、座っていると煙たくないです。
→竪穴建物では、座るか寝るかして過ごしただろう、と推測できます

土屋根の中で火を焚いている様子(岩手県御所野遺跡では、毎日午前中に、火を焚いて、燻蒸しています。)

④竪穴建物が床を掘り込む理由

地面から数十センチ程度は、植物や虫の遺骸が残る黒い腐葉土があり、虫がでやすいです。それらをとって掘り込むと虫が出にくい赤土がでてきます。また、掘り込んだ方が土がひんやりして涼しいです。

⑤虫にさされないか?

竪穴建物で小学生と宿泊体験をすることがあったそうです。ずっと煙にいぶされているので、2日目には、煙の匂いが衣服だけでなく体にも付着し、天然の防虫効果で虫が寄ってこなくなるとのこと。


最後に

いかがでしょうか。御所野遺跡の土葺屋根の実証実験によって、竪穴建物の居住性について様々な知見が得られています。皆さんも縄文人の日々の生活に思いをはせてみてください

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